東2局0本場:逢瀬
『そのため、今日使用されている麻雀牌は短辺が20ミリメートル、長編が27ミリメートル、牌の厚みが16ミリメートル。そして、重さが約15グラムと規定されています。また、誤差は~』
俺は後味の悪さを感じたまま、中原みなみとのデートをしている。
宣言が無かった以上、あの流し満貫は無効。それに、卓も片付けられているのでもはや証拠はない。後は、対局したときにいたメンバーが指摘しない限りは……。
俺は、あまりにもズルい自分に嫌気がさす。
そして、同時にそんな自分に驚愕する。
まだ、そんな「人間らしい感情」が残っていたことに。
「軍星さん? それとも、白夜さんって呼んだほうがいいですか? なんでこうやって規格を決めたんですか? メーカーさんとか大変じゃないですか。それまでの機械が使えなくなっちゃうじゃないですか」
「……白夜にしてくれ」
中原みなみの質問に俺は答えてやる。……同時に、それは白崎舞を失ったあの日のことを思い出すことになる苦痛を感じながら。
「……一色の奴らが、変なサイズと言ってもいいのか? とりあえず、麻雀牌のサイズをはじめとして、『そんなことまで?』っていうレベルで条件を提示してきた。こっちとしては、それを一個づつ潰していく作業をさせられた」
「え、そこで一色……さん? が出てくるんですか?」
「……あんな奴、呼び捨てで良い。要するに、あいつのバックについている組織を儲けさせるためってわけだ。で、俺と舞。そして、シゲさんがその野望を潰した。あいつらからしたら舞を殺したことである程度の留飲は下がっただろうが、俺とシゲさんのことは殺したいだろうな」
展示物を見終わり、会場に設営されている屋台で焼きそばと大福を買い昼食にする。
「え、っと、確か、白崎さんでしたっけ? その試合自体には勝ったんですよね? でも、なんで?」
「……お前には話したくない」
今日一日でこの関係は終わる。
だから、わざわざ込み入った事情を話す気はないし、その必要はない。これで話は終わりだ。
シアワセナニチジョウってやつに戻ればいい。
俺は、二度と手に入れられないし、手に入れる気もないその生活に。
だから、俺は明確に拒絶する。
「……わかりました。でも、今日一日は、私は白夜さんの彼女ですっ!」
「……はぁ、まぁ、でも、その件は話さないぞ」
「……白夜さんは優しいから、自分が、自分だけが苦しめばいいと思ってるんですよね?」
雰囲気がガラッと変わり、俺の顔を真剣に見つめてくる中原みなみ。
その瞳は俺の心の奥底までのぞき込むかのような……。
キモチワルイ。
「……悪い、トイレ行ってくる」
だから、俺は逃げてしまった……。
俺の何がわかる。何が分かる。何が理解かる。
俺の人生の半分くらいしか生きていない女に……。
俺の苦しみ、俺の後悔、俺の何がっ!
「……はぁ、はぁ、はぁ」
キモチワルイ。
冷汗が、脂汗が、大便器の床に垂れる。
全身に嫌な汗をかき、その汗がとめどなく流れ落ちていき水溜りをつくる。
キモチワルイ。
少し、気持ちが落ち着いてきた。
揺れていた視界が収まってくる。
よし、大丈夫そうだ。
俺の名前は白夜。
麻雀で得た金だけで、自堕落な生活をしている。
世間一般で言うところのニート。
という、自分自身をきちんと定義しなおす。
「悪い、中原みなみ。またせた……な……っ!?」
俺がトイレから戻ったところ、中原みなみは一人の女性と楽しそうに談笑していた。
それ自体は問題はない。
だが、その相手が致命的に悪すぎた。
一色清美。
俺から、かつてすべてを奪った女。
俺の恐怖が形をもってそこにいた。
キモチワルイ……。
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