表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半亜人(ハーフ)と共に行く精霊世界ーエスティールに吹きあがる炎  作者: 水素(仮名)
第17章 愛は流れない
120/186

17-3 解放軍司令奮闘す


 戦場から次々と潰走していく兵士達。最早ウッディーン、クニーヒ両将にもそれを差し止めることが出来ない。

 

 しかしいまこの場に来た、一人の青髪の青年には、それが出来るのだ。

 

 

権威者スルターナアナンタより命じられた我『解放軍指揮官』ルジェーロ=ドミットル・デ=マィオーニが汝らに命じる。敗走をやめろ!!」


 ルジェは、アナーリと共に再び真正面から『ガル=ディ』と相対した。その姿を見て、兵士達の一部が覚悟を決める。

 

「おい、魔神殺しのルジェだぞ」


「というかあの隣にいるのって……まさか、権威者スルターナ本人!?」


「ど、どうする」


「どうするったって、言う通りにしなきゃダメだろ。俺たちがここで退いてどうする」


 彼と権威者スルターナの参戦によって、両軍はどうにか全軍潰走を食い止めた。

 

「あれが、精霊宮の攻防で活躍した突撃のルジェか……」


 ウッディーンも若き英雄の到来を歓迎し、

 

権威者スルターナ、全軍の指揮権をあなたと彼に返却します。そして……」


 その傍らに、クニーヒも到着した。

 

「私も残存戦力を彼らに預けよう。権威者スルターナ、どうかご指示を」


 合流を果たした両軍に、再び『ガル=ディ』の首が襲い掛かる。

 

「撃て!」


 ルジェの号令が飛ぶ。両軍の最前列の兵士が、銃を発射して首を叩き落していく。

 

 思わぬ痛手を被った『ガル=ディ』の攻撃が一旦止むも、しかし、上空にいる本体には手出しが出来ない。

 

「アナーリさん。大砲の弾に呪文をかけることは可能か?」


「……呪文を?」


 ルジェは以前、チェザレアから見せてもらった彼女の父ヴァシリーの形見の腕輪、クーデター派からの逃亡の決め手になったそれを思い出した。

 

 ……いや、万骨達が正解を思い出させたというのが正しい。

 

「……チェザレアの腕輪には風魔法A・フェザーの魔法と風魔法B・クイックの魔法を組み合わせた高速飛翔の魔法が込められていた。同じように大砲の弾を、宙に打ち上げられないか?」


「……やってみましょう。最前線の指揮は任せます」


「分かった」



 そのままアナーリは一旦司令部(と言っても『ガル=ディ』と戦っている最前線から200メーも離れていないが)へ後退し、

 

「神官団に権威者スルターナとして命ず。風精魔法に長ける者を集めよ」


 従軍してきた神官たちは5日間戦争の際にアスウァンを陥落させられた事で、今だアナーリに敵意を持つ者が多い。


 あえて権威者スルターナは直卒することで、彼らからの忠誠を試そうとしていた。


 やがて10名ほどの神官が集まり、アナーリは彼らを連れ共和国軍の砲兵陣地へと移動する。


 

「解放軍司令のアイデアなら、恐らくは可能です。……ただ、狙いを上手く付けられるかどうか」


 砲術士官はそう言うが、

 

「無生物にフェザーやクィックの魔法を掛けるなど聞いたことがない。これは戒律に関わる……」


 神官団は屁理屈をこねてアナーリの指示を聞こうとしない。


「なれば新しい戒律を作ればいい、急がねば味方は全滅します。的は大きい、届きさえすれば撃てば当たりますよ」

 

 アナーリは屁理屈に屁理屈で返し、彼等を強引に納得させた。



 ルジェは最前線で兵士達を率い、『ガル=ディ』と死闘を繰り広げていた。

 

 それは今の作戦を、『ガル=ディ』に悟らせないためでもある。

 

 次々と繰り出される頭に、短剣ダガーを突き立て続けるが、

 

「ルジェ、小賢しい奴め!!死ねッ!!」


 『ガル=ディ』がどうやって喋っているのか、ガイアスと同じ声を発すると、

 

 空中にインコの頭を20体程方々に伸ばし、

 

「GARU=DA=JIM……!KURSY、FREEZE!」


「ODO=GAM=D……!」


「BAHA=BO=DORU……!!」


 一斉に呪文詠唱を始める。

 

「チイッ!」


 本来魔神と精霊はそのものが巨大なマナの器であり、呪文を発動するのに術式を必要としない。

 

 しかし、多数の頭、多数の脳を用いてあえて詠唱を行う事で、大量の呪文の同時発動を行うことが出来るのだ。

 

 フリーズの魔法による氷塊とライトニングの魔法による電撃、更にはフレイムボールにストーンブラスト、

 

 次々と襲い来る魔法が周囲に被弾し、兵士達にかなりの損害を受ける。

 

 

 そして、ルジェ自身も流石に回避しきれない。ルジェの脳裏に、黒焦げになった自分が浮かぶ……

 

 

― 刹那

 

 

 ルジェの見た未来は、現実のものにならなかった。呪文詠唱の為に止まった『ガル=ディ』本体に、黒い鉄球が直撃したのだ。

 

 『ガル=ディ』によるマナ制御は狂い、ルジェにフレイムボールの魔法が直撃する前に霧散する。

 

「い、生きてる……」

 

 ルジェは、万骨達の未来視が外れる可能性を初めて知った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ