町の問題 前編
「巫女様、お待たせ致しました。町の長が到着したようです」
真白は一定のリズムでつまんでいたお菓子への手を止める。
『菓子はそこまでだ、真白』
『美味しかった……ふぅ。さて、帰りますか』
『目的を忘れるな!』
『じょ、冗談ですよ、流石に……半分くらい』
扉が開き、やや年老いた男が一人入ってきた。
禿頭でやや小柄のその男は、真白と机を挟んで向かい側へと進み名乗り始めた。
「巫女殿、私がこの町の代表……長をしております、ハンスと申します。以後、お見知り置きを……」
ハンスと名乗った男が腰を折り礼をする。
兵が椅子を引いたところに、「御前、失礼します」と断りつつ席についた。
「それで巫女様、この町にはいかなる御用向きでしょうか?」
『そういえば、なんでわざわざ寄ったんです?』
『……菓子を食っている間に説明したつもりだったが?』
『す、すみません。あんな美味しいもの初めてで……これっぽっちも覚えていません』
『……説教は後だ』
「……龍神様は、この町が厳戒態勢に入ったことをご存知です」
「それは……」
慌てた様子で弁明をしようとするハンスを、真白は軽く右手を上げて留めた。
「責めているわけではございません。龍神様は、突然龍が現れれば当たり前の反応だ、と寛大にも仰っています」
「お心遣い、痛み入ります」
「そちらからの手出しが無ければ、危害を加えることはありません。龍神様の命は、私と龍神様へ危害を加えるなというものです」
「勿論でございます。こちらにとってもありがたいお話です」
「そして、こちらは要求ですが、物資を多少融通していただきたいのです」
「……どの程度でございましょう?」
ハンスの眉がわずかに寄る。
「こちらには数日滞在する予定ですので、その間の衣食住……龍神様へは食料のみで結構ですが、それを保証していただきたいのです」
「龍神様はいかほどお召し上がりに……?」
「ご安心を。私と同じで大丈夫です」
「ああ……それは助かります。あのお体であれば相当量を召し上がられそうでしたので」
その言葉に対して、真白は微笑む。
ハンスの後ろに控える監視の兵が身動ぎしたのが視界の端に映る。
『ま、私がいっぱい食べるんですけどね!』
『わざわざ心を読ませて伝えることがそれか』
「ただ……要求、というのであればお断りすることもできる、ということかと思います」
「ええ。要求を飲んでいただけるなら、龍神様は何か一つ、望みを叶えようと仰せです」
「……!そ、それは、真ですか!?」
(龍神じゃなくて、神龍だな)
記憶にある、願いを叶える龍の姿を思い浮かべる龍。
「限りはございます。例えば、死者を蘇らせるといったようなことはできません」
当然ながら、いくら魔力があるとは言えできることとできないことがある。
「また、あなた個人の望みでは無く、この町としての望みを聞き届けます。そのためにあなたをお呼びしたのです」
億万長者や不老不死を願われないための予防線。
無論、ギャルのパンティーなど以ての外である。
どちらにしても、龍には叶えられない類の望みだ。
「それでは……どうかお力をお貸し願いたい!」
「……詳しい話を」
ハンスは後ろを振り返り、監視の兵を見て頷く。
それを受け、兵が口を開いた。
「ではそちらについては私、傭兵団『オデッセイ』第一部隊長フェルガーよりご説明致します」
今、この町が抱える問題が語られた。
ブックマークありがとうございます。
なんとなく前後編に。
べ、別に後半思いついてないわけじゃないんだからね!大筋はきまってるんだから!




