旅の始まり
真白を地上に残し、羽ばたきを封印して魔力による飛行の訓練を行う。
この三年で魔力はかなり使ってきたが、枯渇を経験したことはない。
身体を動かせなくなったことも最初に食事をして以来一度も無いが、動かし慣れていない翼を使うよりは気分的には魔力の方が楽であった。
風景を楽しみながら、徐々に速度を上げる。
宙返り、バレルロール、急旋回と、必要になるかはわからないがアクロバティックな動きも試す。
魔力で身体を運ぶように動かしているのでバレルロールは非常にやりづらい。
真白を乗せていたら落ちてしまうのでやることはないだろう。
宙返りも同様。急旋回はまた酔う可能性が高い。
(あまり意味は無いか……できることはわかったが、空間識失調に陥るかもしれない。なるべく控えるか。)
洞窟内では崩落を恐れて魔力を控えていたが、今は遠慮する必要が無い。
かなり大胆に魔力を使い、速度を一段と上げる。
目への風圧も、眼前に魔力の障壁を貼って影響をなくすことができた。
(よし、こんなものか。これ以上の速さは真白がどこまで耐えられるか次第だな。)
真白を降ろしたあたりへ戻る龍。
真白もかなり回復したようで、近づいてくる龍を見つけると立ち上がり近寄ってくる。
「龍神様。おかえりなさい。」
「ああ、もう回復したか?」
「はい。あ、でもあんまり思い出させないでください……うぅ。」
軽くトラウマになったらしいが、元々白い肌はこれ以上白くなることは無いため、顔色は変わらない。
表情は疲れた様子の真白であったが、調子を取り戻して龍に向き直る。
「それで、もう練習は終わりですか?」
「ああ。あれ以上の速度はそなたが耐えられるか次第だな。」
「わかりました。……ところで、くるくる回ったりしてましたね?」
「ああ、試しにな。」
「乗せてやってください!」
「懲りないな……。」
――
そして次の日。早朝。
真白が食料を簡単にまとめて、龍の背に乗った。
龍の身体がふわりと浮く。
「では、行くぞ。」
「はい!」
徐々に高度と速度を上げる。
「海……川があるなら下流に向かえばいいな。真白、川がどちらへ流れているか見えるか?」
「えっと……あっちの方です。」
「……右手側か。背中のそなたの指は見えんのだから、言葉で説明しろ。」
「いやぁ、右も左もわからないもので。」
「教えていなかったか……?いや、ならば何故『左』を知っているんだ。」
「てへ。……って、さっきはどうやってわかったんですか?」
「ごまかしたな……ただの感知だ。」
「便利ですねぇ……では、右手奥の方に川は流れているみたいです。」
「よろしい。飛ばすぞ、捕まっていろよ。」
「もう飛んでま、すぅッ!?」
龍は翼を畳んで一気に身体を加速させた。
真白が落ちないように、真白ごと自身の身体を魔力で動かす。
「もう!急すぎます!」
「喋ると舌を噛むぞ。」
「龍神様は!?」
「忘れたか?これは念話だ。」
「ずりゅっ!たぁっ!」
「だから言った。」
抗議するようにバシバシと口を閉じて龍の背を叩く。
だが、龍は特に意に介さず、海を目指した。
――
―とある村―
「おお……龍が、龍が……!都へ使いを!」
ブックマークありがとうございます。
遅くなりました。すみません。




