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第1話 些細なすれ違いからの追放

試験的なものですので変更ありです。

基本は一人称、時折別の視点。

割と不定期投稿。

 とある森の中、辺りはすっかり暗くなりいそいそと野営の準備に追われる時間の出来事。

 そこで野営を始めることになったのは6人の男女。

 メンバーは勇者、賢者、聖職者、戦士のメインメンバーと商人とサポーターのサブメンバーで構成されている。

 そんな中、勇者は1人のサポーターと野営場所から離れた場所で言い争いをしていた。


「おいイリス! 俺のソフィたちと仲良くしてんじゃねえ! いくらソフィたちと幼馴染だからといって俺の女たちに手を出すんじゃねえよ!」

「は? 手なんか出してないが? 大体ソフィたちはいつライルと付き合うことになったんだよ?」

「俺のパーティーにいる女は全員俺のだ! 賢者ミティスも戦士アリスもシーフのアルマもだ!」

「えっ、なにそれキモッ」

「キモッとか言うな! 大体お前な、イリスって女みたいな名前しやがって! アルトマ国の王から勇者の仲間に必要な聖女はパーティーを組んでいるから全員取り込んでしまえって言われたから見に行ってみたら美少女だらけじゃん! って思ってウキウキしてたのによ! エルフの美少女だと思い込んで仲間に入れたのが間違いだったわ!」

「うるさいな、俺の名前のことなんてどうでもいいだろ! 顔は親譲りだっつーの!」


 勇者は異世界から魔王を倒すために召喚された年若い青年だった。


「大体お前って何の役に立ってるんだよ? 魔法も攻撃も防御も偵察も他の奴らだけで十分だし、サポーターなんて言ったってエルフらしく精霊出して時々何かしたり荷物運んだり何かパシリのように物資を購入したりしてるだけじゃねえか! 攻撃魔法の1つくらい使ってみろよ! なんなんだよ、【精霊との絆】ってスキルは! 精霊と親密になれたって仕方ねえだろ!」

「仕方ないだろ!? そういうスキルしかないから精霊にお願いして色々手伝ってもらってるんだって前から言ってるだろうが! それに金銭管理もお前に任せてたらあっという間に破産しちまう。だからやってるんじゃないか! 後攻撃魔法は俺は使えねえよ! 精霊使いだって言ってんだろ!」

「俺を子ども扱いするんじゃねえ! 女にも手を出すし役にも立たねえし、もうとっとと出て行けよ! お前なんかいらねえよ!」

「子供かよ。あっ、子供だったわ。分かった出て行ってやるよ。荷物も装備も餞別としてくれてやるからな、じゃあな!」


 勇者ライルの物言いに俺も子供っぽく言い返してしまった。

 もっと大人な対応できればよかったけど、俺もまだ勇者と変わらず子供だったんだなと後になって後悔した。

 こうして勇者パーティーは6人から5人になった。

 まぁあとでいい感じの女性でも仲間に入れて理想のハーレムパーティーでも作るんだろうけど。


「はぁ……。俺もまだまだガキじゃねえか。くだらないことで喧嘩して。受け流せるくらいじゃなきゃいけねえのに」


 後悔先に立たずとはよく言ったものだと思う。

 とはいえ、このことわざはこの世界にあるものじゃない。

 前世で住んでいた世界にあることわざだった。

 そう、俺は転生者なのだ。


 闇が迫る暗い森の中、俺はただ1人とぼとぼと歩いていた。

 喧嘩しちまった以上一刻も早くこの場を離れたかったし、何かを考えるのも面倒だったからだ。


「はぁ。だっせー。俺、旅に出てから全然成長してねえじゃん。困難でこの先自立してやっていけるのかよ……」


 出てくるのは後悔の念と自分の情けなさばかりだった。


「馬鹿イリス。あんなのと喧嘩しても損するのはイリス自身じゃん」

「アルマ、いつからいたんだよ」


 とぼとぼと森を歩く俺のすぐそばに、いつの間にかシーフのアルマが近寄ってきていた。


「俺のソフィと仲良くしてんじゃねえの辺りから」

「最初からじゃん」

「うん。みんな心配してたから」

「……」


 そんな風に言われたらみんなの気持ちも考えずに口論して出て行った自分が馬鹿としか思えないじゃんか……。

 たしかにただのバカだったけど。


「でもイリスはこのままあの勇者から離れたほうがいい。みんな喧嘩のことも心配してたけどあいつの性癖のことも知ってたからそっちを心配してた。だからちょうどいい機会」

「あいつの性癖って?」

「あいつ、エルフ系の美少女がものすごい好きらしい。どうにか騙して男の子って思わせることに成功したけど」


 ハーレム要員という言葉を口にした時のアルマの目はゴミを見るかのような目をしていた。

 

「そっか」

「うん。うまく騙せてよかった」


 そう言ってアルマは俺に手鏡を手渡す。


「とっても可愛い顔してる」


 アルマはそう口にするとにっこり微笑んだ。

 いつもは無表情なのに、こういう時に微笑むんだからめちゃくちゃ可愛いと思う。

 俺は手鏡を覗き込むと、自分の顔を改めて見る。

 今はてきぱきとアルマが髪を整えてくれているのでいつもよりは少し小奇麗に見える。


 鏡の中の自分の顔はきれいな青みかかった銀髪の可愛らしい顔立ちをした美少女のような顔をしていた。

 目の色はエメラルド色をしているし肌は白めで唇はほんのりピンク色、耳はエルフ特有のとがった耳をしている。

 前世の自分と見比べても圧倒的に整った顔立ちだ。

 俺の前世は何の変哲もない平凡な男だったからなおさらだ。


「そんな顔しないで。あいつに女の子だって認識されないようにみんなで頑張って騙してたんだから」


 鏡を覗き込みながら足を止めていた俺の頬にアルマは手を触れる。

 そしてそのまま俺のおでこに軽いキスを落とす。

 生ぬるくてなんだかおでこに奇妙な感覚を覚える。

 そう、ソフィたちは本当の俺のことを知っているしずっと守ってくれていたのだ。


「ん……。アルマたちはこれからどうするの?」


 俺とアルマとアリスとミティスとソフィの5人は実は全員幼馴染だ。

 彼女たちの両親は俺の父親とは親友だったらしく、探索者生活引退を機にエルフの国に引っ越してきたという事情があった。

 だから家族ぐるみで付き合いがあったのだ。

 

 彼女たちそれぞれの今の職業は実は両親の影響を強く受けている。

 まぁその点でいえば聖女のソフィだけは若干特殊かもしれない。

 彼女の父親はエルフの国で枢機卿をしているのだ。

 つまりめちゃくちゃお偉いさんということになる。


「魔王を倒したら機を見て離脱するから安心して。合流地点は別で知らせる」

「わかった。魔物の王は強いって聞くから気を付けてね」

「もちろん」

「そういえば俺の荷物も衣服も置いてきちゃったけどどうしよう」

「ソフィが大事そうに抱えて持ってったから大丈夫」

「それは大丈夫ではない」


 色々と面倒で私物もほとんど置いてきちゃったから心配してたけど、ライルに使われないならよかった。

 まぁソフィの手に私物が渡ったのはある意味大事故ではあるけど。

 

「それじゃ私は一回戻る。しばらくは何かできそうな仕事しててくれればいいから」

「おっ、もう戻るのか?」

「うん、イリスが少し笑顔になったから」

「そっか……。ありがとな」

「うん。それと近くに精霊がいてイリスのこと見てるから行くね」

「あっ、うん」


 アルマはそう言うとその場からスッと去って行ってしまった。

 足元には革袋が落ちている。


「アルマのやつ」


 革袋拾うと、チャリっと硬質な硬貨の感触を感じる。

 中を見てみると、そこにはブラウプラチナ貨幣が2枚入っていた。


「げっ、大金じゃねえか」


 ブラウプラチナ貨幣とはエルフの国で発行されている金貨より上の貨幣だ。

 日本円にすると1枚当たり100万といったところか。

 これは後のために大事に取っておこう。

 さすがに使うのは憚られるしね。

 それにエルフの国の貨幣は他の国より貴金属の含有率が高いという特徴もある。

 人間の国で換金すれば額面以上の金額にはなるはずだ。


「さてと」


 革袋をポケットにしまい込んで顔を上げると、何者かが近づいてくる気配を感じた。

 振り向くとそこには金髪の人型の女性精霊がいた。

 光の精霊だ。


「アルマ、やっと行ってくれた。イリス、大丈夫?」


 光の精霊は心配そうに声を掛けつつこちらの頭をそっと撫でてくる。


「ブラン、見てたんだ」

「うん。ずっと見てたよ。他の精霊も女神様もみんな」

「あー……」


 どうやら知り合い全員が今日の出来事を見ていたらしい。

 穴があったら入りたい気分だ。

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