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 クルスに連れられキース達は屋敷の外へと移動する。そして屋敷の裏側、敷地内に設けられている扉の前へとたどり着く。そこは奇妙なことに、周囲を壁で囲われていた。壁に扉、いやどちらかといえば門と言った方が正しいのかもしれない。


 その門を潜ると、すぐ目の前に新たな扉が現れる。その扉はどうやら地下へと続いているようだ。


「ここは?」


「ついてくれば理解る」


 地下へと進むクルスに続くように、キース達も地下へと足を踏み入れる。罠なのでは、そう考えもしたがキース達と一緒にオリヴィアも同行しているので、その線はないと判断するに至る。


 地下へと続く道は坑道のような空間になっていた。階段ではなく緩やかな坂道となっていた。暗い坑道内をランタンの明かりを頼りに突き進んでいくことしばらく。暗闇の向こうに仄かな明かりが灯っているのを目にする。


 明かりの方へ近づくとそこは開けた空間になっていた。そして広場と呼べるようなその場所は、まるで野営地のような様相になっていた。天幕が張られており、焚火の後も見受けられる。


 そんな広場ともいえる空間の最奥、そこに大きな扉が設置されていた。そしてその扉の前に、まるで扉を守るかのように人が立っており、その人物がこちらを覗うように視線を向けていた。


 冒険者のような出で立ちの人物にクルスが近寄っていき話しかける。


「おつかれ、変わりはないか」


「ええ、異常なしです」


 その見張りはクルスと一言二言会話をした後、その後ろに同行していたキース達に視線を向ける。


「ところで、その後ろのやつらは……。 っ!? お前ユリウスか!?」


 その人物はユリウスを知っていたようで、驚いた様子を見せている。


「クルスさん、ユリウスを引き込んだんですか?」


「俺から巻き込んだわけじゃねぇよ。あいつらが例の薬を嗅ぎ付けて来たんだ」


「マジかよ……。どっから漏れたんだ。ところで、ユリウスと一緒にいる奴らは誰なんですか? 見たこと無い顔ですが」


「こいつらは、外から来た冒険者だ。そっから薬の行方を追ってここまで辿り着いた」


 しきりに困惑する男を他所に、ユリウスがクルスへと詰め寄る。


「クルスさん、いい加減説明してくれますか。付いて来いって言ってからここまで、何一つ説明されていません。これでは納得することも出来ない」


 問いかけられたクルスは、広場の一角に備え付けられている椅子へと近づき、そこにドカっと腰を下ろす。そしてユリウスに座るよう視線で促し、同じようにキース達にも座るように促す。


「まぁとりあえず座れ。それに嬢ちゃんをいつまでも立たせておくわけにはいかないだろう」


 ユリウス等はともかく、貴族であるオリヴィアをこんな所に立たせておくのは確かによろしくないだろう。そう思い至ったユリウスは、渋々といった様子で椅子に座る。キースやエルティナらも椅子に座り、最後にオリヴィアが席についたところでクルスが口を説明を始める。


「そうだな、どこから話すか……」


「よろしいでしょうかクルスさん」


 どのように説明するか考えていたクルスにオリヴィアが声をかけまったをかける。


「……そうだな、嬢ちゃんから説明された方がこいつらも理解しやすいか。頼めるか嬢ちゃん」


「ありがとうございます」


 クルスに頭を下げるオリヴィア。そしてそのままキース達の方へ向き直る。


「まずはじめに、皆様はエヴィル家のことをどこまでご存知でしょうか」


 そう問われ、キースはユリウスと顔を合わせる。この街出身のユリウスはエヴィル家の事も詳しく知っているかもしれないが、余所者のキースらには、殆ど知らないといっていいだろう。


「申し訳ありませんオリヴィア様。ノーリウスの一部を領地として任されている貴族……としか」


 キースは頭を下げ謝罪する。


「頭を上げて下さいキースさん。キースさんの仰られた通り、我がエヴィル家は代々この地域一帯を領地として王国から任されています。そしてそれは王国が国として建国した時にまで遡ります。」


「!?」


 オリヴィアの言葉にキースは驚愕する。建国当初からこの地を任されている。それは言ってみれば、国の歴史と同じ長い時を経て現在に至る、古くから続く最古の貴族ということになる。数多ある王国貴族の中で最も古い、言い換えれば王家に続く由緒正しい貴族といえるだろう。


「我がエヴィル家と王家は建国前から旧知の仲だと言われています。そして建国の際に、初代国王からこの地域一帯を領地として治めるよう言い付けられました。それ以降、わがエヴィル家は、領地を守り現在に至ります」


「まさか、それほど長い歴史を持つとは……」


 ユリウスも驚いた様子を見せている。どうやらエヴィル家の歴史までは知らなかったようである。


 エヴィル家が由緒正しい貴族だというのは理解できた。しかし、それはエヴィル家の歴史であって、今回の件に関しての説明にはならない。ではなぜオリヴィアはその話をしたのか。そう疑問に思っていると、オリヴィアがこちらの考えを察したように説明を続ける。


「王家からこの地を任されましたが、それは正確に言えば領地ではありません。そもそも、我が領地に領民は存在しません。任された地は我が屋敷周辺、面積でいえばほんの極一部のみとなります。その周りはノーリウスを治めるアグス家の領地となります。言ってみれば、アグス家の領内にエヴィル家が治める領地があるといった状態になります」


「なんにゃ!? 意味わからんにゃ! まるで虫喰だにゃ!」


「虫食い……ふふっ、確かにミィーケさんの仰るとおり虫食い状態です」


 オリヴィアはクスリと笑ってみせる。


「なんとも、ややこしい状態になっているな」


「はたからみれば、確かにおかしなことになっているかもしれません。ですが、それも仕方がないことなのです」


 どういった理由で仕方がないのか、それがキースには分らなかった。領地の中に領地があるなど、本来ありえない。それは領地として成り立たない。


「我がエヴィル領には、領民を住まわせるわけにはいかなかったからです」


「領地に領民を住まわせられない? それはいったいどういう……」


「王家からこの地を守るように命じられましたが、それこの地を守護し、そして外部へ被害が及ばないようように抑える事、それがエヴィル家の役目となっているからです」


「外部への被害?」


 領地を守るのは貴族の義務。それは理解できるが、外部への被害を抑えるとは、いったいどう意味なのか。


 何もかもがよくわからない状況の中、オリヴィアがある一箇所に視線を動かす。その視線の先には、この広い空間の最奥にある扉があった。


「あの扉が何か」


 あの扉の先には何があるのだろう。そう疑問に思うキースに、オリヴィアは衝撃の事実を皆に告げるのであった。




「あの扉の先は―――――」












 ――――異界へと繋がっております。


少しずつ物語が動き出します。


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