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伝説の始まりは現実の終わり  作者: 一ツ柳八重
アンダーグラウンド
44/53

影響

この話が第一章の最後の話になります。

是非楽しんでいってもらえたらと思います。

 目が覚めるとそこは見慣れない天井で、ソファらしきものに横たわっていた。

 部屋はうす暗く蛍光灯が点滅しており、周りには入荷された商品なのか、口が明けられてない段ボールが山になっている。

 そして少し先には従業員用のロッカーと、何かをするノートパソコンの光。

 起き上がり動こうとすると店員さんらしき声が聞こえてきた。


「いやー、びっくりしましたよ。本当に厳戒態勢の訓練が行われるなんて。さっきの発砲の音も本物かと思いましたよ。しかも急に凶悪犯がもし警告に従わなかった場合の訓練をって」

「この度の急な要請に従っていただきありがとうございます。後程今回の件に関しての今後の実験結果などをお送りいたしますので、興味あればこちらの用紙にサインと各項目のチェック、必要事項をご確認の上、私にお渡しください」


 その声のする方に脚を向けて、スタッフルームから出る。

 僕に気が付いたのか、店員が声をかけてきた。


「大丈夫ですか? こんな緊急訓練に巻き込まれて災難でしたね」


 声かけてくれたのは、見た目は清楚系の女性だった。

 身長は160位あるようで、僕とさほど変わらない。

 ポニーテールで、やせているようで、制服の上から分かるほどに胸も出ていた。

 いや、こんな事言うとセクハラになるんだろう。

 でも、意識は全くしなく、反対に言えば、そこ以外の特徴が無い。

 それは性的に見てるのでは? と思われるだろうけど。


「胸大きいでしょ? ごめんね。今度制服変わるから、そんなに避けようとしないでもらえるかな? 結構傷つくから」


 無意識に避けていたようで、先ほどの敬語の感じから砕けた話し方で言われた。


「君変わってますね。胸から視線を外そうとしていたり、凝視したりする男性が多いのに」

「いいえ。単純にそうゆう感じはなかったので。それよりも触れてしまって? 当たってしまったら申し訳ないですし、店員さんに失礼ですし」


 店員さんの顔をしっかりと見てそう答えた。


「ありがとう。と店長! 彼、目を覚ました見たいです。と君はあの黒服の人に話を聞いてね。それと、買いに来た物は用意するように言われているから、この紙に書いといてください」


 渡された紙とペン。

 そこに今回買いに来たお弁当の品名を書いて渡す。


「ありがとうございます。では、用意が出来るまで彼らから話聞いてください」


 ♢  ♢  ♢


「君が鏡由紀君であってるか?」

「はい」


 すごく威圧感がある男性で、オールバックに真っ黒のスーツを着ており、おまけに靴まで黒いローファーと言うのかな? 黒く光った革靴だった。


「班長。それだと彼も困りますし、怖いかと」


 後ろからひょっこりと出てきたのは、すらっとして綺麗な女性だった。


「驚かして申し訳ありません。私たちは、と言うより私は公安第四課の稲荷といいます。彼は公安調査庁にいる錦というんです」

「え?」


 公安?

 アニメとかでもたまに聞く?


「ちなみに本来は別部署で一緒に行動しませんし、私の四課はレジェンドオブエンド、通称『LoE』に対して建てられた部署なの。で彼は」

「それ以上しゃべるな」

「それで、今回君に接触したのは彼女が原因だ。知っているだろ? 天王寺アリス」

『こんにちは』


 この声何処かで?


「我々が君に身分を明かす事はリスクがあり、本来は行わないが、調査対象としてアリスが我々を動かした。彼女も調査対象だったが、もっと重要な対象者、開発主任リーダーであり、世界の秩序を破壊した鏡博士の隠し玉、鏡由紀に接触できると言うんだからな」


 僕に接触? 何を言っているんだろうか?

 確かに僕のお爺ちゃんはゲームを創った。

 それは今の時代としてはオーバーテクノロジーとして存在している。

 それ以上に七光鉱石という特殊なものまである以外は、現実と変わらなかった。

 それをゲームではないと言えばそうなるが、数値により身体能力を上げれるので、そこには確かにゲームの壁は存在して……。


「もしかして、あの世界は確かに現実で、でもそれを超える何かはあるんだと感じてました。実際に人が死に、この世界との関係性を指摘するのも、向こうでの影響があったのも。リアルなのを認識しながら否定する自分もいますが」

「詳しくは話せない。そして単刀直入に聞く。君はそのアクセス機以外に何かを貰ったり、聞いたりしてないか?」


 何も聞いてない。

 貰ったのはだいぶ前であり、しかも聞くと言ってもゲーム内では燃やされた。

 親には冷たくされていて、知っていそうな事は何もない。


「なるほど。わかった。後は任せる」

「はぁ。またそれですか」

「外のやつらを散らさないといけないからな」


 そう言って錦と言う人は出ていった。


「ごめんね。彼はそれだけ重要な部署にいるからね。下手すると君も消される可能性があるから気を付けてね。で、ここからは私なんだけど、君何度かログインしているはずだけど、向こうでは見かけなかったわ。TLSでもね」

「気が付いてるんじゃないんですか?」

「そう思う?」


 その顔は怖かった。

 何もない、全てを見透かすようなそんな冷たい顔をしている。

 わざわざ目を見て。


「はい」


 一言がやっとだった。


「そう。あの被害で私も一応後遺症が残ってるの。こんな風に」


 そう言うと、僕の手をとり、胸に当てた。

 その感覚は、弾力があるようで、でも柔らかい。


「何してるんですか!」


 思いっきり振り払った。


「ふふ、可愛い」


 スーツを脱ぎながら近寄ってきて、太ももから手を這わされる。

 反射的に逃げる。


「その動きやっぱり」


 癖になっていたんだろう。

 半歩引いて飛んでしまって、後ろのレンジにぶつかる。


「君、始まりの街の最高管理者の女の子ね」


 そう言って、身だしなみを正した。


「ごめんね。あの時の大規模なハッキングによって、私達女性の後遺症は深刻なの。私でも軽症だったけど、それでも意識が持っていかれるとさっきみたいに」


 そう言っても息が荒い。

 僕自身の感覚は特になかったけど、彼女はその影響が。


「確かにあの世界は数値と言うシステムにより管理されてるわ。でもね、その数値を改ざんされ、更にリンクしたら、現実でも性格、理性まで書き換えられるの。私はもともとこんなに女性らしくないのよ。言葉もきついしね。でもあの一件以降、あの場に居た人で後遺症が残った人は性格まで変わった人がいるわ」


 その話はだんだん落ち着きを取り戻していたが、苦痛と怒りが見え隠れしていた。

 僕自身もそう言われると感覚的に何かを感じたのかもしれない。

 本来は振り払って正しいし、そうする人もいると言うんだろう。

 でも、過剰なのかもしれない。

 他の場所、国では分からない。

 でも、振り払う、突き飛ばしかねない勢いで防衛するのは、もしかしたらおかしいのだろう。

 そういう意味では、僕も何かがおかしいのだと感じてしまった。


「あの、お聞きしたい事があるのですがいいですか?」

「何かな?」

「さっきの血が流れてたのと、ここお店なのに、公安? とか言っていいんですか?」


 そう。

 ここはどこにでもあるコンビニで、店長や、あの店員さんもいる。

 そして、詳しくは知らないが、ドラマや漫画で公安と言うのを公言する事はかなりまずい事なのではないだろうか?

 分かりやすく言うと、錦と呼ばれた男性はスパイみたいなものだ。


「あー。まずは、さっきの血、いいえあのペイントに対する答えだけど、あれは死んでないわ。過去にある実験があって、それの応用よ。人の思い込みに対する非人道的実験だったけど、上手くかかればあの通り、死んだかもしれないと無意識に植え付けることが出来るの。一長一短の技術で如何にかなるものではないけどね」


 つまり死んでないと?

 ならよかった。


「それと後半のだけど、君も全く気が付かないようね。そんなのだと、この先死ぬわよ」


 最後の声には威圧感があった。

 そして気が付く。

 確かにコンビニだけど、何だろうか。

 人の気配と言うか、踏み入ってはいけないそんな領域に居る感じだ。

 周りを見てみても、何も変哲も無いコンビニの風景。

 カウンターにはレジスターに、レジ横の販売棚、その奥には三列の商品棚に、壁際にはお酒類が置かれている。

 そして、客の一人もいない。


「え?」


 カウンターの隅に、僕が買いに来たものが置かれていて、さっきまで何もなかったのに今は置かれている。

 なのに店員さんや店長が居ない。


「あの!」


 そう叫んでも誰も来ない。

 蛍光灯が僕の心音に共鳴するかのように点滅していた。


「わかったかしら? 今ここには私達だけ。外には仲間がいるだろうけどね。だから堂々と話してたのよ」


 この感覚は味わいたくなかった。

 目の前にいる人はそれだけ大きな組織だと言う事と、一歩間違えれば死ぬかもしれないそんな恐怖。


「脅かして悪いんだけど、それだけ、君は重要人物。鏡博士の本名すらこの世界に、いいえ。日本の戸籍には存在しなかったんですからね。そして、天王寺アリス。彼女が君のパートナーであることも。ゲームシステム、いいえ。理と呼んでる物に君の持ってるルビーが関係してるわ。そう。空白の一年と言われる開拓期。その時のヒスイの少女もね」


 何言ってるのか、意味を理解するのに時間がかかったが、そうアリス。

 彼女も対象になっている事、エメラルドの少女、意識空間だったあの時に出会った彼女までも。

 お爺ちゃんが作ったゲームは、確かに世界を変えるのかもしれないと思っていた。

 僕が向こうの世界に行くときに性別が変わる理由も何かあると感じていた。

 だけど、事はもっと大事なのかもしれない。


「話はこれでおしまい。彼女と会うんでしょ? あの頼んでたもの持って帰りなさい。それ以外は詮索しない方がいいわ。必要な時にまた私たちは現れるから」


 僕にかかわる、いいや。

 僕に接してくる人たちは、もしかしたらお爺ちゃんが仕組んだことなのかもしれない。

 僕の見える世界は小さくて、認識できるのも本当は何もないんじゃないか? とすら感じるけど。

 それでも、確かに僕の中では変わっていたものがある。

 それを見つけられた時。

 この世界を壊してしまうのかもしれない。

 アリスなら何か掴んでるんだろう。

 今度聞いてみようと思う。

 そして、もし大きな国に命を狙われたり、利用されるようなことになったら。

 そんな不安や、悪い事を考えてしまう。

 性格なんて簡単には変わらないけど。

 誰かを助けるために必要な変化なら。

 その時は受け入れないといけない。

 そう決意して、帰路に着いた。

 アリスさんが来た時色々聞いてみよう。


いかがだったでしょうか?

第一章の最終話。

実は公安の女性は、ゲーム世界で出会ってます。誰だと思いますか?

鏡由紀が権利を所得したのを知ってますし、回避を行った事ので把握しているのも。

何処かに居た訳ですが、暇なら探してみてください!

長かった第一章ですが、何とか書き上げられたことがとても嬉しいですし、達成感も生まれました。

第二章では、リリィちゃんとの絡みやアリスとの絡みが増えるかと思います。

そんな第二章は少し時間がかかりますが、どうぞ待っていただけたらと思います。


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