帰還と継承
今回は短いですが、楽しんでもらえたらと思います。
あれから何時間たっただろうか?
何度も何度も攻撃し、躱せるようになり、戦い方も理解してきた。
「まだ」
そう言われて、何時間も経った。
あれ? 実は日もまたいでるんじゃ?
そう感じるほどに、同じことを繰り返してた。
「はぁはぁ」
疲労が凄い。
意識がと言うよりも肉体。
これ、粒子と自分の身体のリンクを知れる可能性が。
「さあ、おいで」
大きく深呼吸をする。
以てあと数回で粒子が切れる。
そう言うのも、どんどん粒子の出が悪くなってるからだ。
脳が動き、サポートがアクセス機なら電池みたいなのがあるのかもしれない。
「いくよ!」
右手に力を込めて、走り出す。
やっと感じているものがあるんだ。
力を込めて、右手に粒子を集めるイメージ。
彼女は棒立ちしているが、それも可能なほど反応速度がいい。
一撃、右手に纏って穿つ。
それだけ!
二メートル前から前に飛び振りかぶる。
「甘い」
手を挙げて振り下ろされる。
何度も繰り返し見た緑の奔流。
でも。
今回だけは。
何かがはじけた。
右手が熱くすら感じる。
「やっとだね」
奔流を越えた先には、笑顔で待っている女の子。
そして、右手を顔に……流石にまずいから、肩を殴る軌道で放つ。
炎のような形で具現化した粒子が、触れると同時に緑の装甲を吹き飛ばし肩が露出する。
同時に、赤い模様が彼女の左腕に広がっていき、手の装甲を消し飛ばして、柔らかそうな素肌がさらされた。
その綺麗さにドキッとしたが、疲労により着地した瞬間、膝を折ってしまう。
「情けない。でもいい。やっと身に着けれたね。紅玉の力の具現。情熱」
そう聞こえるなり、頭をなでられた。
「僕子供じゃないんだけど」
そう言っても、頭を撫でられ続ける。
なんか悪い気はしないけど、不思議なことに照れ臭くはなかった。
「よくできました。じゃあ、三つ目のに移るね」
「いまから!?」
「うん。時間無い」
そう言って僕を蹴り飛ばした。
蹴り飛ばしたのだ。
「なんで!?」
「君のいた位置、女性にとって解除したらダメな位置」
頭を上げたら、そこにはワンピースっぽい服を着た彼女が。
なるほど。
「別にいいのに。男だって思われたことないんだから」
「あなた、女子トイレ使ってるの?」
「男子トイレ。引かれるけど」
「そういうのに、大丈夫なの?」
「ごめん」
そんなやり取りをした後に、本題に入る。
「まず、向こうに戻ったら記憶の混濁が起こる。それは、君自身の感覚の同調と力のリンクだと思って」
「うん」
「さっきので継承できたから、その混濁が収まったら、君が向こうで腰につけてる刃折れの刀に力を通しながら戦って」
あれに何か力あるのかな?
確か変なお兄さんが投げて渡して、何もなかったから腰にしまったんだっけ。
くすんだ緑色の球体が付いていた。
ってまさか!
「あれ君のなの?」
「あれは私が昔貰った、七鉱の力をリンクさせていく刀。メイン武器としても使える。リンク後は継承相手に吸収されて力になる。スキルの発現がうまくいけば君にも貰えるか出てくる」
なるほど、と言う顔をして聞く。
「そしたら、私の力が具現し、アクセス機に吸い込まれる。それで終わり。後は君次第。頭に浮かんでくるから」
「それでいいの?」
「うん」
あっけなく終わってしまった。
「わかったけど、向こうだと僕女の子なんだけど?」
「君は男性とか女性とか区別してるの?」
「力がちがうから」
「そういってる時点でダメ。男性も女性も変わらない。そう思って戻るといい」
落ち着いた声でそう返された。
「わかった。ありがとう」
「うん。じゃあ、向こうに返すね。またどこかで」
「うん。またどこかで」
意識がどんどん遠くなっていき、白い空間が真っ黒になった。
その時間は一瞬なんだろうけど、長く感じる。
そう言うのも、今ゴブリン王と戦ってるらしき感覚と、痛みと怠さの感覚がじわじわと体を蝕んできてるのが伝わるからだ。
同時に、戦っているという記憶が、頭の中に流れ込んでくる。
これは、確かに僕だけど僕じゃない。
そう、答えを出すならクリス博士と戦った時の別の自分。
「あぁ、この事だったのか」
そう意識の中で呟いてみた。
僕の中には、僕であり僕じゃない何かがあの時に生まれた。
それはプログラムなのか、もしくは本来恐れていることに起因する、もう一つの人格なのか。
それは分からないけど、戦ってる感覚だけは共有されてきてる。
「記憶はダメなら、あの時の僕なんだろうなぁ」
そして少しずつ意識が、消えていく。




