1話 アラト君は巻き込まれる。
新連載です。
こちらから読んでいただけるとなお楽しめるかと思います。
何もしてないのに、幽霊だけ勝手に成仏していくおじさん ~スロプーおじさんは除霊なんてしたくない~
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俺は九条 新人。
春から高校生だ。
受験はちょっと頑張った。
本当にちょっとだけ。
ゲームの時間を減らして、
寝る前に単語帳を開いて、
休日に少し勉強したくらい。
その結果、そこそこの高校に受かった。
親は喜んだ。
姉ちゃんは驚いてた。
俺もまあ、悪くない気分だった。
だから今日から、最高の高校生活がスタートする――気がしている。
「アラト君。」
家の前で名前を呼ばれる。
そこにいたのは鳴海 菊枝。
幼馴染み。
眼鏡。
黒髪。
一見すると優等生の委員長。
実際、成績も良い。
ただし中身は暴走特急。
思い立ったら即行動。
説明はない。
大体、俺が巻き込まれる。
昔からずっとそういう感じだ。
「おはよう。」
「おはようございます。」
「……緊張してる?」
「少しだけ。」
「珍しいな。」
「アラト君は?」
「俺はしてない。」
「嘘ですね。」
「なんで分かんの。」
「顔です。」
「顔、か。」
昔からキクエには隠し事が出来ない。
高校までの道を二人で歩く。
これも昔から変わらない。
幼稚園も。
小学校も。
中学校も。
気付けば、いつも隣にキクエがいた。
そして、その度に、俺は――。
◇
昇降口。
張り出されたクラス表を見る。
「一組……あ。」
「同じですね。」
「まあ、そうだろうとは思ってた。」
「安心しました。」
そんなことを話しながら教室へ向かう。
「九条。」
後ろから声がした。
振り返ると、中学からの友人、田中が笑っていた。
「同じクラスだな。よろしく。」
「おう!」
「相変わらず仲良いな、二人とも。付き合ってないんだろ?」
「「幼馴染です。」」
「ハモんな。」
「付き合ってないよ。」
「ほんとかよ?」
相変わらず距離が近い。
悪いやつじゃないんだけど。
◇
放課後。
「いつも一緒だな、お前ら。」
田中が笑う。
「そうかな。」
「やっぱり――。」
「「幼馴染だから。」」
「ハモんなって。」
田中が笑う。
「そういえば鳴海、あの神社行った?」
「あの神社?」
「そうそう、南雲神社。人魚のミイラがあるんだってよー?」
「人魚の、ミイラ。」
お前、何してくれてんの。
業務用洗濯機で洗濯するよ?
ほら、見ろ、幼馴染み様がワクワクドキドキしてんじゃねぇか。
「じゃ、じゃあなー!田中!また明日ー!」
笑顔の田中は手を振りながら口パクで、「いってらっしゃい。」とかいってやがる。あの野郎、やっぱ確信犯じゃねぇか。
俺は、キクエの背中を押しながら校門を出た。
桜が風に舞う。
とはいえ、今日は入学式。
いくらキクエがオカルト好きと言っても――。
「……アラト君。」
キクエが立ち止まる。
振り返ると、少しだけ頬が赤かった。
上目遣いでこちらを見る。
「行きたいところがあります。」
一瞬。
心臓が跳ねる。
(え。)
「……う、うん。いいけど。」
「本当ですか?」
キクエの表情がぱっと明るくなる。
「ありがとうございます。」
歩き始める。
「で、どこ行くんだ?」
「神社です。」
「NOOOOOOOOO!!!」
「南雲神社です。」
「入学式だぜ?!今日!?!?」
「お昼まででラッキーでしたね。時間はたっぷりあります!」
「生き急ぎすぎじゃない!?」
「調査しないといけません。」
「いけなくないよ?!」
「ほら、行きますよ。」
「聞いて?!俺の話!!」
鳥居が見えてきた。
……高校生活初日。
やはり俺は幼馴染みに巻き込まれる。
毎週水曜日に更新予定です。よろしくお願いします。




