69話:旅先での出会い
時間が経つのは早いものだ。
そして、時間というものは殺意を鋭く研いでくれる。
「……ここか。」
フィーアが連れ去られてから約半年の時間が経過した。
その半年の中でようやく白のいる場所がわかった。
魔大陸南西の都市 ”ケイオス”
名前の由来はこの都市の下に続く迷宮の名が ”タルタロス” ということから来ているらしい。
そういえば、タルタロスとケイオスって向こうの世界だとギリシャ神話の神の名前だったっけ。
こっちで伝承されているお話とか、向こうでも聞いたことあるような気がするものばかりなんだよな。
最近この世界と前世の世界は繋がっているんじゃないかと思うようになってきた。
……まぁ、そんなのどうでもいいか。
この辺は初めて来たけれど、南西の地と言うだけあって暑い。その上乾燥地帯と来たもんだ。
さっさとギルドに向かって手がかりを探しに行こう。
カラン カラン
外よりは涼しいからかギルドの中はガヤガヤとしているな。
強面のあんちゃんがいっぱいいて、外の雰囲気も含めて冒険者ギルドというより西部劇に出てくる酒場みたいだ。
「えっと、このギルドに冒険者登録したいのですが。」
「遥々ようこそお越しくださいました。この街にはどのくらい滞在のご予定で?」
「未定です。」
「かしこまりました。冒険者カードを提出して少々お待ちくださいませ。」
彼女を助けるためとはいえ、まさか俺が冒険者になろうとは思わなかった。
けど、いちいちギルド更新しなきゃいけないとは思わなかったよ。
冒険者は活動するために一つのギルドに所属しなければならない。
もし、遠出して他のギルドに移動することになったら、前のギルドから抜けて他のギルドに所属し直さないといけない。
誰だよこの物凄く面倒くさいルールを決めたやつは。
冒険者ランクが落ちたりしないことが救いだが、更新にかかる三十分以上はギルドで待機する必要があるのがさらに面倒具合をあげている。
「はーいルーキー!お前みたいなもやしが何しに来たってゆーの!?」
はいきた、冒険者名物新入りいびりの時間だよー。
「どうせ前のギルドじゃ全然稼げなかったからこっちに逃げて来たんだろ!?
残念だけど、ここにはお前みたいなモヤシに回ってくる依頼なんてないの!」
酒臭いおっさんだな、さすが新人をいびる冒険者なだけあって体格がでけぇ。俺の倍くらいあるわ。
贅肉は俺の5倍だけど。
それにしても、どこのギルドに行っても煽り方は変わらないなぁ。
「おい無視すんなよ!」
「うわぁ!?」
「”うわぁ!”だってよ!」
人の座っている椅子を蹴り倒して笑ってんじゃねぇよ悪趣味な奴だなぁ。
こういう展開はこの半年の間、嫌という程経験してきた。
そして、こういった状況で見ているヤツらには三パターンの動きがある。
一つ、誰も助けに入らず傍観
二つ、誰かが普通に助けてくれる。
三つ、誰かが助けてくれるが返り討ちに会う
今回は傍観かなぁ……。
しかたない。初日からあんまり下手なことはしたくないけど、俺がお灸を据えてやるとするか。
「その辺にしといてやりなよ。」
「あぁ!?」
おっと、ここに来て救世主。
助けてくれるヒーローさんかな?
「お前は……!誰?」
「えへへ。オイラもそこの人と同じ新入りなんだけど、新入り仲間同士見過ごせなくってね。」
あ、ダメだ。ヒーローさんじゃないや。三パターン目だ。
「ぷっ、ガキが何言ってやがんだよ!
大丈夫でちゅか〜?お兄ちゃんたちが怖すぎてお漏らしとかしちゃったりしないでちゅかねぇ??」
小柄だな、十……二、三歳の子ってところか。
腰まで伸ばした明るい真っ赤な長髪が目立つ。
「あー、止めてくれない感じ?」
「お前が俺を倒せたら止めてやるよ!
あ、裸で土下座でもいいぜ?」
うわぁ、こんな子供に鼻の下伸ばしちゃって気持ち悪い。
さっきてめぇでもガキって言ってただろうがよぉ。
「じゃあ簡単だな!」
バシャッ!
「うぇぇえ!?」
まじかこの子、容赦なく酒を顔面にかけやがった。
ありゃ物凄く目に染みるわ……。
「くそ、ふざけやがってこのガキィ……って、居ねぇ?」
「ここだよ。それと、動かないでね。下手に動くと首切っちゃうから。」
一瞬だったな……。
おっさんが目を開けたと同時に股下から滑り込んで首に回った。
おっさんからすれば一瞬で消えた上に後ろから首に剣を突きつけられてんだから、恐怖以外の何物でもないだろうな。
……というか、あの青龍刀は一体どこから出したんだ?
「おしまい。それじゃあおじさん!約束通り今後は新人いびりなんてやめてあげてね?」
「あ……え、はい。」
一振りしただけで、青龍刀が空中で消えた。一体何をしているんだ?
この子は……実力も、手の内も分からない。底の知れない何かを感じる。
「酒悪かったね!これで新しいの飲んで!」
ちゃんと弁償する常識的な面もあるんだな。
「はいさい兄ちゃん!怪我してねぇか?」
「はいさい……?うん。怪我はしてないよ。」
はいさいって沖縄の方言だよな、この国にそんな方言あったかな。
……まさか。
「あの、そのはいさいってどこで知った言葉なの?」
「え?ノリだよノリ。深い意味なんてない!」
嘘って感じではないな。
俺以外にも日本から来た転生者がいるんじゃないかって少し勘ぐったが、そんなことあるわけないよな。
「助けてくれてありがとう。
君も新入りって言ったよね、良かったらギルドの更新をしている間に一杯奢るよ?」
「いいの?やりぃ!」
助けてくれる人が少ないから結構嬉しかった。
それに、ギルドの更新にはこれからまだ時間がかかるからな。
今回のギルドは話し相手ができてラッキーだった。
はいさい!三章が始まりましたよ!
最後まで読んでくださってありがとうございます。
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