64話:影王という名を持つ者
※アルタロムの目線
俺は、手の中で冷たくなるフェルを見つめることしか出来ないのか……。
「畜生一匹死んだ程度で取り乱すな。
さぁ、踊りを続けるぞ?」
「……黙れ!」
魔法を発動するよりも先にぶっ飛ばされた……!
瓦礫が邪魔だ!早く……早く動けよ身体!!
「ほれ!焼いてやらねば痛ましくて見てられんだろう。」
「やめろぉ!!」
これ以上、フェルを傷つけさせる訳にはいかないんだよ!!
俺の思いは届かず、フェルの身体は爆撃を受けた。
どうなったかなんて考えたくない。
こいつは、俺がぶっ殺してやる。
塵になるまでぐちゃぐちゃにしてやる。
”……………………。”
……誰の声だ?
”力が欲しいか?”
あぁ、欲しいさ!そのためならいくらでも代償でもなんでも払ってやるよ!
”ならば……力を理解しろ。”
なんだ、急に視界が真っ白になって……眩し!?
どこだここ?真っ白の空間……死んだ時の空間に似てるけど、空間の端がしっかりわかるし、あの世界ほど淀んでいない。
「たかが一人の淀みなどこの程度だ。」
「……父さん?」
黒髪に長身。ロングコートを纏っているが境界の分からない黒ずくめの服装、間違いない。この世界に来てからの俺の父親だ。
そういえば、体が思うように動かない。この感じどこかで……
「ってうわ!なんだこれ!?」
この体はアルタロムのものじゃない!
この身体は……俺だ。佐藤 勝 の身体だ。
「ほぉ、お前の本来の姿はそのような様相をしているのか。」
「……てか!俺はこんな所で油を売っている暇は無い!
あんたには色々聞きたいことはあるけど、俺はあいつをぶっ殺しに行かなきゃなんだよ!!」
「そう慌てるな。ここはお前の精神世界だ。ここでどれだけの時間を過ごそうが現実では多少の時間しか経たぬ。」
急にいなくなったと思えば、急に現れて偉そうにしだしたぞこいつ。
「俺の気が収まってないんだよ、要件があるなら早くしてくれ。」
「そうだな、早くしよう。
混乱する前に話しておくが、 俺はお前の父親ではない。」
何言っちゃってんだこの野郎。
え、何?もしかしてエルの連れ子でした的な?
アルタロムとそっくりな顔しておいてそんな嘘が通じるわけねぇだろ。
「俺の名は 影王 お前の父の意思により生まれた王の力。それ自身である。」
全くもって状況が呑み込めん。
「厨二病発症するんなら生前にしとけよ、次ふざけたこと言ったらぶん殴るぞコノヤロウ。」
「お前は……正直なのだな。」
「前に似たような世界に来たときは考えてること読まれてたからな。全部口に出して言ってやるよ。」
「俺にそんな能力はない。だから止めてくれ。」
ないって事はやっぱりフェルの……閻魔の固有能力ってことなのか。
「まぁ何にしても、まどろっこしいんだよ。要件だけさっさと伝えろ。」
「お前は魔王の力を最大限に活かせていない。活かせるように助言しに来たと言えばいいか?」
「最初からそう言え。」
だがしかし、魔王の力を最大限に活かせていないか……。これは八つ当たりで悪態を着いていい状況じゃ無さそうだな。
「使いこなせていないとして、どうすれば使えるようになるんだよ。」
「そもそも力というものは純血以外に決して扱えるものではない。純粋な魔人でないお前が使用できる力は血の濃さに比例する。」
つまり、ハーフである俺は引き出せても半分の力しか引き出せないってことね。
「それじゃあ、俺は完璧な魔人になればいいってことか?どうすればいい。」
「そんな方法はない。」
「お前殴るぞ。」
さっきから回りくどい言い方しやがって、こいつ敵か?雑な尺の稼ぎ方すんじゃねぇよ。
「……お前は我が祖、ルシファー……いや、ルシウスから力を継承した。
だが、まだお前は俺のことを理解してはいない。
真に受け入れ、理解して初めて王の力はお前に力を与える。」
「待て、今なんか聞き捨てならないことを聞いたよ!?」
ルシファー……?
ルシウス……?
多分パパの名前だよなこれ……。
言い直したって事はルシウス……?そういやパパが居なくなった日にそんな名前を聞いたような聞かなかったような。
「聞いているのか?」
「それより俺の質問に答えろよ。」
「ルシウスはお前の父の名だ。知らぬのか?」
そりゃそうですよね!この歳にもなってお父さんの名前知らないなんて有り得ませんものね!
「それで?俺がお前のことを理解しなきゃいけないって言ってたな。
なんだ?俺はここでお前とランデブーでもしなきゃならんのか?」
「あまりふざけていると私はお前に対して一切の協力を断つことも出来る。それを忘れるなよ?」
「ハイスミマセンデシタ。」
やっべ!怒らせちゃったよやっべ!
さすがに横暴な態度取っちゃっていましたよねごめんなさいッ!?
「お前は父のことをどれだけ理解している?」
「え、そりゃ……。そりゃ?」
そういえばこの世界のお父さんについては何も知らないな。
というか、俺は父という生物をあまり理解していないような気がする。
前世でも生まれた日から父は仏壇の写真の中にしか居ない人だった。
こっちの世界だって稀に会うくらいであまり話したこともない。
「父はお前のことを常に気にかけていた。
自分たちの目的のためでもあるのだろうが、それを除いたとしてもな。」
「自分たちの目的ってなんだ。」
「それは、すぐに知ることになるだろう。」
すぐに知るって……、俺を理解しろとか言う割に隠し事するのかこいつ。
「そもそも、お前には魔法の才能がない。
そのせいもあってか、お前が王の力を継承しても引き出せた力は一割にも満たない。」
「一割……え、一割か!?」
俺の影の力は全力を出せば原始化したフェルを捕えられるほど強力だった。
それが一割にも満たないだと……?
「おい。もし、その力を引き出せてたら。フェルは死ななくて済んだんじゃないのか?」
「……そうかもしれないな。」
なんだよそれ……。それじゃあ、フェルが死んだのは俺のせいかもしれないってことかよ。
「済んだ話だ。お前が気にすることでは無い。」
……今、こいつなんて言った?
「おい、訂正しろその言葉。」
「過去を悔いても未来は見えん。それよりも、今はお前が私を使いこなすことが先だろう?」
クソ野郎だけど、一理はあるのかもしれない。
そうだ、今は一刻を争う。影の力は過去に戻れるような能力ではない。
なら、今までと同じだ。進むしかないんだ。
「早くしろ。」
「お前はまた……」
「勘違いするな。早くお前のことを教えろ。俺がお前を完璧に使いこなしてやる。」
「……ふふ。」
え、何その笑み……。
急に笑い出すのキモイよお父さん?
「もう良い。よくわかった。」
「……え、何が?」
「お前の考え方は、我が祖とよく似ている。
お前は、そのままでいい。」
まるで言ってることが分からない。
つまり、俺とお父さんの考え方が似ていて、俺はそのままでいい……。
いや、これはただ復唱しているだけだな。
「どういうことか簡潔に伝えてくれないかな……?」
「先程も話したが、俺は我が祖の意識により生まれた。
王の力は術者と能力の想いが同調することで力を発揮する。だからこそ、お前が俺の想いと同調する必要があったのだ。
だがどうやら、お前の想いは我が祖と同じらしい。」
「つまり……俺とお前は同調できるってこと?」
「その通りだ。」
「そっかぁ……。」
もう何言ってるかわかんねぇや。
父さんがどんな考え方をしていたのかも知らねぇし、こういう時は都合のいいことだけ聞いておこう。
「と、とにかく俺は影の力を引き出すことができるようになったって事かな?」
「その通りだ。使い方は説明せずとも理解できるはずだ。
それでは、武運を祈る。」
うわ、眩し……。ってかこれ入ってきた時と同じか。
ということは、これは現実世界に戻る光ってことね。




