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転生したら魔王が勇者になりました。  作者: よく分からん生命体
二章 勇者学園 第三幕 狐の百合と夕化粧
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63話:曳馬の騎士

※カリスの視点です。


 アルタロムの治療も虚しくフェル・ダレスが力尽きていた。


 アルタロムの精神が乱れたことで黒い触手は形状を保てなくなり、中にいたフロガによって簡単に砕かれた。


「死んだのぉ、……ふふ、はははっ。」


 フロガは徐々に堪えていた笑いが込み上げてきて、煽るように言い放った。


「畜生一匹死んだ程度で取り乱すな。

 さぁ、踊りを続けるぞ?」

「……黙れ!」


 取り乱したアルタロムに対してフロガは蹴りを繰り出し、アルタロムは民家の壁に埋まった。


「ほれ!焼いてやらねば痛ましくて見てられんだろう。」

「……やめろ!!」


 フェル・ダレスの死体にフロガが血を浴びせた直後、フェル・ダレスの死体が爆破により灰燼に帰した。


「あぁ……」


 何も出来ず、それを見届けたアルタロムは動かなくなってしまった。気を失ったか。


「終いか……。久方ぶりに楽しめたと思うたが、なんとも嘆かわしいことかの。」


 このままではアルタロムが殺される。

 きっと私はあの化け物に勝つことは出来ないだろう。


 だが……


「手を止めよ、邪悪なる者よ!

 我が名はカリス・フォンバーグ!これ以上はその者に手を出すことは許さん!」


 アルタロムが目を覚ますまで継戦することはできる。


「なんじゃ其方は?」

「貴様の問いに答えるつもりは無い。

 だが、私は問おう。貴様はフロガではないな?」

「手前勝手な餓鬼じゃのぉ。

 記憶を見ても、其方は先刻の二人よりも劣っておる。

 雑魚に答える義理はないかの。」


 周りの煙が発光して……爆撃か!

 ダメだ避けられない!


 "ドォォン"


 場に鉄の焼けるような悪臭が充満しているが、なんともないぞ?


「無事か、フォンバーグ。」

「……君は、ホースか?」


 ホースも追いついたということか。

 あの煙が爆発した、つまりあの煙に気を使っていれば今後は爆撃に当たる心配もない。


 相手の手の内がわかり、数の利もある。

 無理だと思っていたが、これなら勝てるかもしれない……。


「現状を報告しろ。」

「え、あぁ。

 アルタロムは意識不明。フェル・ダレスは死亡を確認した。

 やつの能力は自身の血を爆破させること、周辺の煙にも同様の効果があると思われる。

 更に、吹き飛んだはずの右腕が再生している。」

「……わかった。」


 授業の中でホースと関わることは少なかったせいか彼の考えていることは分からない。


 だが、今の彼が怒っていることは感じ取れる。


「……よくもフェル・ダレスを殺してくれたな。クリムの駒(友)を。」


 彼はクリムのことをよく気にかけているが、一体どう言った理由なのか……。


「……はっ、くだらんな。友だと?

 死んでしまえばただの肉塊だろう?其方は肉塊を友と呼ぶのか?」


 こいつは、人の不快感を煽るのが上手いらしい。


「我が友の姿で、貴様はもう二度と口を開くな。」

「ははっ……!其方は儂に指図するのか?」


 殺気を放っているが、今の私の怒気を上回り怯ませることなど決してありえない。


「俺が合わせる。フォンバーグは好きに動け。」

「助かる。」


 ホースは俺の動きに高い精度で連動してきた。

 大きな隙を見せるフォンバーグ家剣術の溜めを的確に補完してくれている。


 彼は一体何者なんだ。


 そんなことをいえばアルタロムだって……


「油断するなフォンバーグ!」

「考え事か!?」


 そうだ、考えている余裕なんてない。

 今の攻撃も、次は避けられないかもしれないんだ。

 今はこの化け物を討伐することだけを考えろ!


「其方ら……やはりつまらんの。」


 煙が発光し始めた!


「水の神よ 我の命に応じ……」


 だめだ、詠唱していては爆撃に間に合わない。


「やめろ。」

「ほぉ?速度が増したのぉ。」


 ホースが獣化して奴の頭を蹴り飛ばしてくれたおかげで爆撃は収まったが、頭の上半分が吹き飛んでいてもまだ生きている……。


 脳がないのに一体どういう仕組みで喋っていると言うんだ。


「これでも死なんか。ならば脳と心臓の同時破壊か?」


 ホースが化け物の心臓を貫いたが……


「……ふむ。良い考察じゃが、外れじゃ。」


 これでも死なない……!


「儂は死なんのじゃよ。

 首を跳ねようが、心臓を潰そうが、肉片一つ残らず燃やし尽くそうが灰の一欠片からでも再生出来る。」


 そんな能力……出鱈目だ。あっていいわけが無い。


「其方らはよく奮闘した。それは認めてやろう。

 そして、その上で死ぬが良い。」

「……っ!抜けん!?」


 ホースの様子がおかしい。必死に腕を引き抜こうとしているのに、抜けないのか!?


「実にこの体は優秀じゃよ、胸の筋肉だけで力を解放した獣族の筋力を上回るのじゃからなぁ。」


 助けなければ、ホースが殺される……!

 だが、私に何が出来る?


「……うぉぉお!」


 何も出来なくてもいい!少しでも時間を稼げ!こちらに相手の気を逸らせ!


「少しは黙っておれんのか?」


 煙の発光、爆発の動作か……!


 "ドォォォン"


「ぐッ……ぁぁぁぁ!!」


 腕が!焼けるように熱い!思うように動かな……


 腕が、ない。


 私の右腕がない……。


「抜ける……!フォンバーグ!」

「抜いたところで逃がすわけが無いだろう?」

「ぐァァ!?」


 だめだ、ホースは足をやられた……。これでは機動力も攻撃力も足りなさすぎる。


 万事休すか。


「……いや、まだだ。私にはまだ戦うための足も腕も残っている。

 真に死ぬまでは私は負けることは無いのだ!!」

「……そうか。なら死ね。」


 一瞬で間合いを詰めてきた……。

 獣化したホースの足を切り落とす程の手刀。こんなものを受ければ死は免れないだろうな。


 悔いはあるが、良い人生だった。

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