↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら魔王が勇者になりました。  作者: よく分からん生命体
二章 勇者学園 第二幕 定期試験
44/126

43話:暴走

 フロガとホースの戦闘が終わり、フェル対イフの戦闘が行われていた。

 

 しかし、どうしてこうなった。


「フェ……ちゃ……」


 フェルがイフの首を絞めている。

 九つに別れた尻尾、虚ろな目、髪に宿る黒い炎。

 

 獣化 だ……。



 ───

 

 フロガとホースの戦闘が終わった後、フロガは何事も無かったようにヘラヘラとした態度で観覧席に戻ってきた。


「いやぁ、久々に楽しめたわ!」

「あんなに怪我して、よく楽しめたなんて言えるな。」

「あ?何言ってんだ?」


 まるで頭のおかしいやつを見るような目で見ながら、フロガは俺に聞き返してきた。

 フロガには危険という発想がない。こういう戦い方をするやつはいつか破滅する。

 

 だから、やめて欲しいのだけどな。


「次だ。

 イフ フェル・ダレス

 両名は舞台に登ってこい。」


 次はイフとフェルだ。

 イフには悪いがフェルに勝てるとは思えないな。


 フェルは会釈してステージに向かって行った。


「行ってくるのです!」

「え、あぁ。行ってらっしゃい。」


 少し遅れて立ち上がったイフは異様に気合いが入っているようだが、 一体何を考えているのだろうか。


 二人がステージに立つと、先生が両者の顔を見る。


「それでは、始め!」


 イフが傀儡で攻撃を開始しても、フェルはしばらくの間は動かなかった。

 イフの傀儡がフェルに攻撃を当てる刹那、フェルは動き出した。


「っ……!?」

「終わりですね。」


 まるで雑務を熟すように、フェルはイフの首に手を添え、押し倒す形で抑え込んでいた。

 爪で傀儡の魔力線を切り裂いて一気に距離を詰めたのだろうが……


 (お前なら気づいているんだろ?)


「神よ我に力を与えよ

 炎矢(フレアアロー)」


 フェルが魔法を発動すると、炎の矢が動き始めていたイフの傀儡を完全に破壊した。


 "ドォォン"

 

 それと同時に、傀儡に刻まれた魔法陣である爆発(エクスプロージョン)が発動した。

 やはりと言うべきか、あの傀儡は自動操作と自爆の機能が着いていたな。


 (イフも本気なのか?)


 「なんだあれは!?」


 カリスが驚いた口調で身を乗り出した。

 自爆よりも、フェルの方を向いている。詠唱短縮のことを言っているのかな。


 (入学試験の時もそうだが、目立つなと言っていたのにあいつは……。)


 いや、今回はイフの気持ちに答えようとしているんだ。


「フェルは詠唱を物凄く短縮できるんだ。

 種族柄、昔に他の大陸の技術も親族間で取り込んで継承していたらしい。」


 急ごしらえの作り話を口にすると、カリスや周りの生徒たちは疑う様子なく納得してくれた。


 とはいえ、本来詠唱短縮は高等技術だ。

 出来たとしても、本来はティスくらいが普通。あれでも限界まで短縮しているほどだ。


 フェルは魔法適性が高い。才能とかで括れる様なものじゃないから、俺の 詠唱破棄 と同じように加護とやらが関係しているんだろうな。


 戦線に戻ろう。

 ここまでは想像通りだ。傀儡を失って、完全に抑え込まれたイフに勝ち目はない。


「フェルちゃん、奥の手っていうのは最後まで隠すものなのです。」

「っ!?」


 不敵にイフが笑みを浮かべれば、何かが物凄い速さでフェルのことを吹っ飛ばした。

 観覧席に居る俺にも見えなかった。


「なんだあれ。」


 あれはイフ……か?


 イフが立っている。

 立っているイフと倒れているイフ。

 

 ステージの上にイフが二人いる。


「なるほど、それが貴女の奥の手。ですか。」

「まだまだ隠しているのです。」


 イフがイフに手を差し出して立たせている。なんとも奇妙な光景だな。


 見た限りでは傀儡と変わらなさそうだが、根本的に違うところがあるとすれば魔力線が繋がっていないことか。

 つまりあれは、事前にプログラムされた行動を取る自動人形だということ。一体どこに隠していた?


「まだ隠している事があるなら早くしてください。」


 フェルの周りの空気が、威圧するように揺れる。

 神通力を使って煽っているんだ。やっぱりフェルは本気で勝つ気だな。


「……お望みとあらば、受けてみるといいのです!」


 呼び出される人形軍(ドールズコール)


 地面から生えてくるように、さらにイフが増えた。

 現在進行形で魔道具で作り出している。


 三、いや五人。全てが自動人形。

 自立してフェルに攻撃を繰り出している。


「っ……。」


 フェルが防御しきれない。攻撃力がただの地魔法のものじゃない。

 地魔法で作った人形だとは思うが、それ以外にもなにか混ぜてあるな。


 "ガシャンッ"


「砕いた!」


 フェルの攻撃で外殻が壊れ、中から蔓(つる)が出てきた。

 

 これは地魔法と生命魔法の混合魔法か。


 傀儡を形成している魔法に気を取られているうちに、傀儡から飛び出した蔓(ツル)はフェルの体に絡みつき、一気に行動を制限させた。


「鬱陶しい……!」 


 イフの計画はこうだ。 

 一体だけ外殻が脆いのが率先して攻撃し、破壊されれば中から蔓(つる)が出て絡みつく。その間に他の自動人形がフェルに集中攻撃をする。

 

 実に効率的。かつ、決まれば確実に相手を戦闘不能にできるだろうな。

 さて、フェルはどう対処するかな?


「フェル!どうしたそんなもんかぁ!?」


 (うるさっ!?)


 フロガが隣でいきなり大声を出してきた。

 騒がないと気が済まないのかこいつ。さっきまでやばい怪我してたんだから少しは休んでてくれよ。

 ……いや、応援はありがたいけど。


「そうですね……期待には答えなければ。」


 フロガの応援を皮切りにフェルは反撃を開始した。

 蔓《つる》を赤黒い炎で焼き切り、たった数撃で他の自動人形を全て粉砕してから念入りに燃やし尽くした。


 (イフの姿をした人形が壊れていくのはちょっとグロテスクだなぁ。)


 一気に決めにかかった。これで決められないとまずいな……。


 本人も自覚しているようで、多少焦りの見える表情で一気に距離を詰めた。


「今は自動人形は生み出せないでしょう?」


 フェルが攻撃を受け続けていたのはイフの魔道具の再詠唱時間(クールタイム)を割り出すためであり、イフはさっき人形を出した。


 つまりフェルは、あと数秒間はイフが自動人形を出せないと判断したのだ。


「と、思うのです?」


 地震(グランドクエイク)


 次の瞬間、舞台にヒビが入るほど大きく地面が揺れ出した。

 魔道具だな、これは上級の地魔法か。


 この出力はイフの魔力量だからこそだろう。


 フェルは踏ん張りが聞かず、一瞬動きを止めたことでイフが詠唱するだけの時間を与えてしまった。


「大いなる風の神よ 我の命に応じ 勇猛なる力をお貸しください」

 

 乱気流(タービュランス)


 それにしても、イフが使用する魔法は出力が高い。

 フェルは上に吹き上がる風に耐えきれず空中に放り出された。


 空中で自由のないフェルは、一緒に吹き上げられた舞台の瓦礫の直撃を避けられない。


「決まったか。」


 カリスが落ち着いた声でそう言うが……


 (これはまずいな。)


 俺の嫌な予感は的中してしまった。


 数発フェルが瓦礫の直撃を受けた後、突如乱気流を巻き込み赤黒い炎がフェルと瓦礫を飲み込んだ。


 炎はさらに広がると舞台を全て包み込み、観覧席にまで灰を散らした。


 明らかに出力が高すぎる。


 舞台を包み込んだ炎が晴れると、九つの尾に、虚ろな瞳、前髪が 黒炎 に燃えたフェルがイフの首を掴んで持ち上げていた。


 全員が絶句している。過剰攻撃に対してではない、普段のフェルから考えられない禍々しい異様な雰囲気に声が出せないのだ。


 そんなことは関係の無いフェルは首を絞めているイフに対して貫手の型を取った。

 これ以上は、イフが殺される。


「フェル、やりすぎだ。」


 さすがに、俺が止めなければ。

 舞台のフェルの腕掴むと、フェルは呟き始めた。


「アル……タロム……様?」

「そうだ、イフを離せ。」


 ポツリポツリと呟いて少しずつ正気を取り戻したフェルは状況を理解すると、ハッとしたようにイフを空中に放ってしまった。


「頭は打ってないな。」


 イフは咄嗟に受止めたけど、フェル自信が強くショックを受けている。

 これは、あれが来るな。


「いや……、いやぁぁああ!!」


 フェルが悲鳴を上げると同時に 神通力(じんつうりき) が暴発し、その場にいた全員が金縛りの状態になった。


 この魔法は今のイフには障る、守ってやらないと本当に危ない。


「落ち着け、もう大丈夫だから。」


 蹲(うずくま)っているフェルの背中を撫でてやると、過呼吸気味だった呼吸がゆっくりと落ち着いていった。

 今回はすぐに落ち着いたようで、獣化が解けて尻尾が一本に戻ると眠りに落ちてしまった。


「先生、イフとフェルを医務室に運びますね。」

「……あぁ。」


 全員が金縛りになっているからな、一人で二人を運ぶのは骨が折れる。

 イフは早く治療してやらないと危険だな、しばらくは再開できないかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。