↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら魔王が勇者になりました。  作者: よく分からん生命体
二章 勇者学園 第一幕 勇者のタマゴ
40/126

39話:鬼畜の所業

 俺の合図でケルスが合流してきた。

 だけど、想定より早く来すぎだし人に対して躊躇(ちゅうちょ)なく精霊魔法ぶっぱなしたよこの子。

 勝手で悪いが、結構引いてる。


「あれ、フィンさんだったよね?

 なんだろうあの魔力……変な感じ。」


 ケルスはフィンとティスの異様な魔力に気がついているみたいだ。

 精霊使いは、自分の魔力とは別の精霊を身に宿しているせいか魔力の感知に長けているところがある。


 ……あれ、それなら俺の魔力も勘づかれているのではないか?


「フィン!大丈夫か!?」

「大丈夫!こんなの全然効かないよ!」


 フィンは精霊魔法が直撃したのに起き上がってきた……。

 パワーだけじゃなくて耐久までゴリラなのか。


「やだなぁ、橙色のゴリラ。」

「え、なにそれ。確かにキモイ。」


 やっべ、声に出てた。ケルスが俺の話を聞いて引いてる。


「ゴリラってなんなのかな!!」


 耳もいいのね、このゴリラ 。

 フィンは無意識で出した俺の挑発に乗ってこちらに突っ込んできた。


「アルタロム君、ごめん。

 こっちも想定外のが着いてきてるみたいだ。」

「はい?」


 “コォォォ“という呼吸音がした後、俺とケルスの間を縫って何かがフィンに向かって飛びかかって行った。


「おらァ!」


 フロガだぁ。

 ゴリラ二匹で動物園が開けそう。ではない。


「なに?ケルス、なんであいつがここにいるんですか!?」

「さっきまで戦っていたんだけど、君が助けを求めているようだったから。

 こっちを優先して走ってきたら着いて来ちゃったみたいだね。」


 みたいだね。じゃないでしょケルス君……。

 ゴリラ二匹なんて同時に相手できないよ。


「逃げてんじゃねぇぞ勇者様ァ!」

「逃げたんじゃなくて援軍に来たの。」


 フロガ怒ってる、頼むから落ち着いて欲しい。

 もう一匹も多分まだまだ暴れちゃうから。


「いいパンチだね!」

「お?なんだお前!強そうだな!」


 フロガは本当に人の顔を覚えないな……。

 だけど、フロガとフィンが戦い始めればこっちは戦いやすい。


 そのままゴリラ二匹はドラミングで縄張り争いでもしておいてくれ。


「ティスは僕が戦うので、ケルスは二人を任せていいですか?」

「わかった。気をつけて行ってね!」


 フロガの気分が変わってフィンとの戦闘を止める前に、一気にティスを叩く。

 彼女の魔法以外の戦闘能力はあまり高くない。

 反魔法(アンチスペル)で魔法対策だけしておけば基本は問題なさそう。


「行かせるわけないよね!」

「待てやコラァ!」


 なんで二人同時に襲ってくるんですかねぇ!

 と言うよりは、フィンが無理矢理に突っ込んで来ているのをフロガが追っているという感じか。

 

 攻撃を繰り出されるが、紙一重で避け、距離を取ることに成功した。


「あっぶないなぁ!

 フロガ!フィンのこと抑えておいてよ!」

「あぁ!?今はお前に指図される筋合いはねぇだろ!」


 確かにそうだけど、

 察しの悪いやつだなぁ、今は俺たちが戦ってる場合じゃないって言うのに……。

 さて、この状況、どうしたもんか。


「大いなる風の神々よ 我に力をお貸しください」

 

 吹き上げる風(クリアストーム)


 ティスが攻撃を開始してきた!

 そりゃそうだよ、一箇所に固まってたら打ってくるわ。


 反魔法(アンチスペル) 身体強化(エンチャント)


「フロガ!頼む助けてくれ!」


 正直、これ以上身体強化を重ねがけするのは難しい。

 キャパオーバーになる前に決着をつけたい。


「……じゃあ、勝ったら旗よこせよな!」

「わかった!五年の旗は譲るよ!」


 交渉成立。フロガは“へっ!“と笑ってフィンに殴り掛かりに行った。

 

 フロガは察しが悪いけど人の言うこと聞いてくれる優しいやつだね。


「行かせるわけないって言ったよね!」

「うわぁあああい!」

「はぁ!?」


 フィンはフロガを投げ飛ばしてきた。

 ふざけんな、なんつー馬鹿力だよ!


「アル、受け止めてくれても良かったんじゃねぇか?」


 さすがに無理だよ、あんなプロ野球選手が投げたボール速度を咄嗟に受け止めんのは。


「ったく、人を玩具みてぇに投げやがってよぉ!!」


 物凄い勢いでぶっ飛ばし返したなぁ。

 あの威勢なら暫くは大丈夫そうだ。


「さてと、これで邪魔者は居なくなりましたね。ティスさん?」


 歯を食いしばって悔しそうだにしている。

 さすがに俺と一体一じゃ分が悪いことを理解しているみたいだ。


「大いなる風の神々よ 我に力をお貸しください」

 

 塵風(ダストウィンド)


 反魔法(アンチスペル) 身体強化(エンチャント)


「大いなる風の神々よ 我に力をお貸しください」

 

 吹き上げる風(クリアストーム)


 反魔法(アンチスペル) 身体強化(エンチャント)


「大いなる風の神々よ 我に力をお貸しください」

 

 乱気流(タービュランス)


 反魔法(アンチスペル) 身体強化(エンチャント)


 半狂乱になりながら高威力の技を打ち続けている。

 そんなことをしても俺のパワーが上がっていくだけなんだがな。


「そろそろ、決めさせてもらおうか。

 大いなる風の神々よ 我の名に応じ勇猛なる嵐の力をお貸しください 全てを解き放ち吹きあらせ」

 

 吹き上げる風(クリアストーム)


 ティスがやっていたものと全く同じさ。

 魔力も彼女のを使っているから全く同じ威力。ただし、彼女がかまいたちに切り刻まれる前に決着をつけないとね。


「名も無き大いなる神よ 我の命に応じ寛大なる心で力をお貸しください 純粋なる力を解き放て」

 

 身体強化(エンチャント)の詠唱……とは言っても、既に使っているからこの詠唱は建前だけどね。


「ティスさん、受けなきゃ死ぬよ?」


 その声でティスが防御態勢をとったのを確認して地面に叩き落とす。

 まぁ、さっきティスとフィンの二人にやられたことだ。予告しておいたし、これでおあいこにしておいてくれよ。

 受身を取ったとはいえ、戦闘復帰出来るようなダメージではない。


 拘束(バインド)


 無属性の魔法で動きを止める。

 このくらいしないとまた動き出しそうだ。

 それに、終わり次第色々と聞きたいことがあるしな。


 さて、もう一方の方は───


「アル!終わったんなら手伝いやがれ!」


 フロガとフィンの戦闘は拮抗していた。俺が加わればこの拮抗は確実に崩れ勝利はほぼ確定。

 ティスは完全に戦闘不能状態で、これなら参戦しても問題は無いだろう。


「ここまでかぁ……。」


 (……っ、なんだ?フィンの気配が変わった?)

 

 フィンは諦めたような顔をしたあとに、フロガをこちらに蹴り飛ばし、避けきれずにフロガを受け止める。


「ケルス!フロガ!伏せろ!!」


 嫌な予感がする。

 受け止めたフロガを抱えるように倒れ込み、すぐにケルスの方に向かう。


「待て!」

「は……?」

 

 フロガに服を引っ張られて地面に倒れ込んだ。

 これじゃ間に合わない。


 次の瞬間フィンは大爆発を引き起こした。


 まさか自爆するとは思わなかった。

 いや、これは自爆させられたのか……。

 ダメージは大したことは無いが、こいつはやばい。


 中継されているとか言ってる場合じゃない。影移動でちょっと遠くに転移する。


「フロガ!大丈夫か!?」

「……あ?あぁ、大丈夫だ。」


 頭を打ったのか……?意識が曖昧だ。

 だが、大したことがないならすぐにケルスを助けに行かなければ。


 精霊の息吹(シルフィードブレス) 


 あれは、ケルスの技だ。

 空に打ち上げた……?いや、最前の行動だ。

 すぐに連れていかないとまずい。


 フィンの爆発に巻き込まれた時、黒い粒子が舞っていた。

 これは 白(ブラン) の能力だ。

 

 俺がもう一度現場に駆けつけた時には……

 すぐ近くで受けた五年生の四名は死亡、ケルスはすぐに風で粒子を払ったからか意識を失った状態で倒れていた。


 結果として、勇謝祭で五年生全員が死んでしまうという大事件になり、すぐに騎士団が駆けつけてきた。


「こりゃ、あの時と同じだな。」

「あの時ってなんですか。」


 アーサーは俺の顔を見て、騎士団の全員を下がらせた後に話をし始めた。


「お前一人か?」

「はい。フロガもケルスも隣の部屋で眠っていますから。」


 バンッ!


 音を立ててアーサーがテーブルを叩いた。


「言ったよな、何もしないならそれでいいと。これはどういう了見だ?」

「どういうも何も、国の内部に魔王の配下が紛れていた。

 一年生数名と五年生の生徒全員が巻き込まれた。それだけです。」

「ふざけんな!!」


 テーブルを蹴飛ばしてバラバラにしてしまった。医務室では静かにして欲しいものだ。


「魔王であるお前が現場にいた。

 お前が他の魔王と手を組んであいつらを殺したんじゃねぇのか?」

「もし俺が全員殺すつもりならあの場にいたケルスとフロガも殺しているさ。

 お前、死体はちゃんと見たのか?」

「見たよ!あの戦場で死んだやつと同じ!無惨に干からびちまってる姿をなぁ!」


 見ているなら、なぜそんなことが言えるのか……。


「もっと良く見ろ、この女の目を。」


 ティスの左目は明らかに異常だ。

 一日やそこらで移植できるような物じゃない。


「魔王 白(ブラン)さ。

 こんなことをするのも、五年生を殺した魔法も全部あいつのだ。

 もし手を組んでいるなら、フィンの自爆に俺が巻き込まれるはずない。」

「……悪い、取り乱したな。」

「別にいいさ、俺もあいつが嫌いだ。」


 あの自爆を引き起こしたのは白《ブラン》だ。

 フィンの諦めたようなあの顔はトラウマになりそうだ。


 配下を人とも思わぬ所業、まるで玩具で遊んでいるような感じだ。


「あいつのとこに殴り込むって言うなら手伝うが、どうする?」

「はっ、俺の一存じゃ決められねぇよ。」

「……そうだろうな。」


 アーサーは国王に忠誠を誓っているような節がある。いや、なにか弱みを握られている……というのが正しいか。

 国王はクリムの言う通り何者か……いや、白《ブラン》に操られている。


 アーサーが白《ブラン》と戦うことは期待できない。


 あいつが生きている間は国王は操られたままだ。

 その状態でクリムが賢老に挑めば殺される。


 やっぱり白《ブラン》を殺す必要がある。


 それには紫《ヴィオレ》と同盟を結ぶ必要があると……


 やることが多すぎて嫌になる。


 結局今は、もう少し泣き寝入りするしか俺にはできないか……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。