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転生したら魔王が勇者になりました。  作者: よく分からん生命体
二章 勇者学園 第一幕 勇者のタマゴ
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38話:強靭と隻眼

 四年生の先輩が、たった一人の一年生に為す術もなくボコボコにされてしまっている。

 こんな光景を見れば、先輩方に同情せずにはいられない。


 ケルス君、やりすぎだよ君は。


「さ、これで三本目だよ。」


 そう言ってケルスは俺に、奪取したフラッグを差し出してくる。


「はぁ、クリム。よろしくお願いします。」

「え、私ですか?」


 簡単に言ってしまえば押し付けているだけなんだが、少しやりたい作戦があるんだ。


「クリムとカリスはどこかに隠れていてくれないか?」

「アルタロム、一体何を考えているんだ?」

「別に班が別れてはいけないというルールはないよね?

 俺とケルスが他の班を襲う。身軽な状態だから失うものは無いし旗を気にせずに戦えるだろ?

 相手からすれば旗を持たないやつに消耗させられるんだからたまったもんじゃないよ。」


 全員がポカンとして俺の顔を見る。

 最近この展開が多いのだが、俺はそんなに変なことを言っているのだろうか。


「よくもそんな型破りな戦法を思いつくものだ……。」


 カリスがそう言って呆れたような態度を見せてくる。

 そりゃ元ブラック勤務ですから。

 普通じゃない環境では型破りじゃないと生き残れないのよ。


「その作戦で行こうか。」

「が、頑張ります!」


 クリムが不安そうだ。

 カリスには頑張ってもらいたいけど、急がないとフェルに全部持っていかれるだろうな……。


「急ごうか。」


 俺たちはすぐに解散した。


 更に、ケルスと俺は二手に分かれて探索に出る。


 俺たちが既に二班脱落させているから最低でも残り四班。

 その中で、警戒すべきはもう一方の一年の班と五年の班。


 走っていても他の班の気配を感じない。

 三年の班はもうどっちかにやられていそうだなぁ……。


「ダレス君!」


 この聞き覚えのある明るい声は……


「風の神よ 我の命に応じ力をお貸しください」

 

 突風(ウィンドブラスト)


 風を発生させて、吹き飛ばされることで距離を取ったが、


 先に遭遇したのはフィンだった。

 

 最悪だ、一年なら共闘をもちかけようと考えていたがその前にやられそう……。


「大いなる風の神々よ 我に力をお貸しください。」

 

 乱気流(タービュランス)


 不規則な強い風で体が持ち上げられる……!


 上級魔法の詠唱短縮か、五年生どころかこんなの中央大陸で習得できる技術じゃない。


 強風によって、俺は森が小さく見えるほど空高くまで持ち上げられていた。


「よくやったね!ティス!」


 そして、フィンはそんな俺にひとっ飛びで追いつき、


「覚悟してね!」

「グッ……ハ!!?」


 俺を殴って地面に叩きつけた。


 (なんていう威力のパンチだよ!背中痛い!一発受けただけで地面に叩きつけられた!)


 フロガ以上だ、馬鹿なんじゃないのかこいつ。


「さすがに一発じゃ倒せないよね!」


 さっきから物凄い笑顔なんだよな……。

 だけど、


 殺気が物凄く溢れている。


 ティス先輩の魔法の威力も異常だ。

 妙に違和感も感じるっていうのは……まぁ、そういうことなんだろうな。


「はぁ、ここは勇者学園だよな……?

 どうして魔王の配下が簡単に潜入できるんですかね。」


 バレットの件と全く同じ、(ブラン)の配下だ。


 完全に無警戒だったから気づくのに遅れた。

 というか今まではこんな感じはしなかった。


「気づいちゃったかい!

 あはは!大丈夫!僕らは君と同じ、正式に学園に入ってきたんだから!」


 (一体何が大丈夫なんだ?)


 中継されている状態で詠唱破棄も操影も使えない。

 全く、厄介なタイミングを狙われたな。


「フィン、あんまり焦らしていると可哀想よ。」

「そうだね!すぐに倒してあげないと!」


 あの二人が仲良さそうだったのはこういう理由だったのね、お兄さん勘違いしちゃった。

 なんて、ふざけている場合でも無さそう。

 


「大いなる風の神々よ 我に力をお貸しください」

 

 吹き上げる風(クリアストーム)


 また持ち上げられるな。

 “吹き上げてから叩きつける“。これがテンプレなんだろうけど、二度も受ける必要なんてない。


 身体強化(エンチャント)


 肉体に強化を施し、フィンの背後へ回る。

 

 身体強化は無詠唱で発動してもバレにくくて助かる。急に速さが変われば簡単に相手の後ろを取れるね。


「フィン!後ろ!」

「はいよ!」


 なんで見えているんだ?

 ティスの合図とともに、フィンは後ろを向いて反撃をしてきた。

 身体強化しても攻撃を受け止めた腕がビリビリするし、イカれてるよこいつの攻撃力。


 いや、今注目すべきは言われた後に追いつけるフィンの瞬発力よりも、ティスの知覚のカラクリだな。

 さすがに初見で見切れる速さではなかったはず。


 ティスを観察する時間は……


「止まっていたらこっちから行っちゃうよ!」


 あるわけないですよね。

 いや、むしろ近づいてきてくれた方が助かるな。


「大いなる風の神々よ 我に力をお貸しください」


 塵風(ダストウィンド)


 反魔法(アンチスペル) 身体強化(エンチャント)


 詠唱を始めた瞬間には、こちらも魔法の準備は整えてある。

 準備時間さえあれば、反魔法での対策は簡単としか言いようがない。


「魔法が出ない……!?」


 影の触手(シャドーテンタクル)


「やばい、ティス!足になにか絡んできた!」


 あまり目立ちさえしなければ魔法は使えるんだよね。

 影を地面を這わせることで、葉っぱや枝に隠して目立たせずに魔法を発動させた。


 そして、あれだけの感知能力には心当たりがある。

 フィンの動きさえ封じれば、ティスの動きは大したことは無いな。


「はぷっ!?」


 顔面を掴んで引き寄せる。

 相変わらず顔を掴んで寄せてみないと分からないが、左目だけが複眼だな。


「なにやってんのぉ!!」


 影を引きちぎってもう追いついてきたのか、

 やだこいつのパワー、ゴリラじゃん。


「ティス!大丈夫!?」

「大丈夫。」


 お互いに状態を確認し合って、再度、戦闘態勢に入る。


「その左目、どうしたんだ?」


 俺はティスに尋ねた。

 日本じゃ複眼はトンボとかの虫が持っているような目だったけど、こっちの世界では妖精が持っていることが多い。


 人間が生まれ持って持っているような物じゃない。


「この目について知っているんですね。」

「あいつのことだ。どうせ殺した妖精族から奪ったのを無理やり移植させられたんだろう。」


 そう聞くと、ティスは行き詰まって黙り込んだ。

 当たりかな。

 酷いことをしてくれるよな、複眼を人間に移植するなんて拒絶反応が出るはずだ。

 物凄い痛みがあっただろうに、それを我慢してあそこまで使いこなしている。


「あんまりその話はして欲しくないかな!」


 フィンがティスを庇うように前に立ったな。

 思い出したくないであろう話を振った俺に本気で怒っているようだし、なんでこんな仲間想いのヤツらがあいつの配下に……?

 って言ってもあいつ相手に拒否権もクソもないのか。


「不憫には思うけど、勝たせてもらうね。」


 あまり長引かせたくはないし、少しだけ本気を出すとするか。


「残念だったね!」


 フィンは地面を砕いて土砂で壁を作った。

 しかし、なんでそんなことを?


「炎の神よ 我の命に応じ力をお貸しください」

 

 火球(ファイアボール)

 

「風の神よ 我の命に応じ力をお貸しください」

 

 突風(ウィンドブラスト)


 後ろから誰か二人の声が聞こえた。

 振り向くと、残りの五年生の二人が俺に攻撃を繰り出している途中だった。


 二人の魔法が放たれると、物凄い火力の魔法が俺を襲う。


 炎と風ってやっぱり相性がいいな。

 

 今は飽くまでも勇謝祭の最中、五年の他の班員が襲ってくるということを忘れていた……。


 注目して見ても、他の人は普通だ。

 魔王が関連していそうなのはやっぱあの二人だけだな。


「そっちの相手だけでいいのかな!!」


 三方向からの魔法攻撃に加えてフィンの攻撃、ティスの複眼のせいで動きは全部見切られるし、俺は中継で魔法を制限される。


 クソゲーすぎるぞこれ。


 さすがにこれを一人で相手するのはきついか……。


「これでさっきみたいに魔法の無効化はできないよね!」

「できるけど?」


 反魔法(アンチスペル) 身体強化(エンチャント)


「なんで魔法が使えねぇんだよ!」


 とはいえ、どの魔法を発動させるにしても無詠唱で発動したら目立つしなぁ……。

 全部を身体強化に回したら強くなりすぎで目立つ。


 目立たない程度にテキトーに植物を生やして時間を稼ぐ。


 このままだとジリ貧になって負けるな、そろそろもう一人くらい味方が欲しいかも。


「はぁ、あんまり気乗りしないけどやるか。

 炎の神よ 我に力をお貸しください」


 炎矢(フレアアロー)


 中級の魔法詠唱。

 フィンは警戒して防御態勢に入ってるけど、これは君に打つもんじゃない。


 空に打ち上げて爆発させる物さ。


 “バーンッ“と音をさせて打ち上がった。

 夏祭りなら俺なら「たまやー」って言ってるだろう、とてもいい音が鳴った。


「魔法を使ったあとは隙が生まれるよね!」


 さぁて、攻撃が来た。

 フィンの言う通り、魔法を使ったあとだから防御できません。


 だからって、直撃を受けるわけないだろう。


 精霊の息吹(シルフィードブレス)


 地面や木々を抉るほどの旋風がフィンを巻き込んだ。


「計画通り……いや、計画していたよりも早かったね。」

「またせたかな?」

「いや、ドンピシャどころか早すぎるくらいだ。」


 さっきの魔法はケルスを呼ぶための合図だったのだよ。そして、それに応えてケルスが駆けつけた。

 ならば、ここからは反撃開始だろう。

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