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転生したら魔王が勇者になりました。  作者: よく分からん生命体
二章 勇者学園 第一幕 勇者のタマゴ
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37話:勇謝祭

 週が明け、勇謝祭当日。

 街総出で開かれるお祭り事が開催された。


 「さぁ始まってまいりましたぁ!

 今年も待ちに待った勇謝祭!

 今年はどこの学年が優勝するのか!まぁ、五年生だろうけど……

 今年の一年生は粒ぞろいだそうだ!どんな活躍を見せてくれるのかァ!?」


 やかましい。街から聞こえる解説は物凄く高いテンションで行われていて耳がキーンとする。


「しゃあ!やるぜぇ!?」


 ここにもうるさいのがいる!

 もうやめて、俺の鼓膜のライフはもう無いのよ……。


「少しは落ち着け馬鹿者。

 勇謝祭は町中に水晶で中継される。

 お前のような者がいるだけで恥であるのに、これ以上の醜態は見せてくれるなよ?」


 カリス怒っているなぁ……。

 まぁ、人が見ている中で馬鹿なことをやってるやつと同じに見られたくはないよな。


「んな事わかってるよ!ハンバーグ!」

「貴様!そういった無礼を直せと言っている!!」


 喧嘩が始まっちゃったよ……。

 あーあ、どうしようこんなの見せらんないだろ。


「ま、まぁ、落ち着いて。

 フロガは今日は黙っていてくれ。」

「……ちっ、アルが言うなら仕方ねぇな。」


 ふぅ……とりあえず落ち着いたようだ。


「おっと!一年の喧嘩を華麗に止めたのはアルタロム・ダレスだぁ!」


 黙れ変な事を言うんじゃねぇぇ!


「ははっ、アルタロム君取り上げられているね。」

「……そうですね、あんまり変な事を言わないで欲しいものです。」


 ケルスか、今日初めて話しかけてきたな。

 この子もあんまり考えていることが読めない。精霊に認められているやつってのは皆こんなやつなのだろうか。


「今日はよろしく頼むよ。」

「……よろしくお願いします。」


 特に何も無いだろうに、勘ぐってしまう。

 いや、これは失礼かもしれないな。


「始まるよ。」

「あ、はい。」


 開会式はそれはそれは大層なもので、国王陛下直々に席に参られていた。


「……っ。」


 クリムは物凄い形相で父親であるはずの国王を睨みつけている。

 操られていると知っていればそんな顔にもなるのだろうか。

 俺はそんな事になったことがないから分からないな。


 開会式が終わると各学年先生に呼び出されて概要を聞かされるようなのだが……。


「今年の勇謝祭はエリュシオン周辺の森を使った団体戦だ。

 形式はフラッグの争奪戦。

 フラッグを全て失えば負け。そして、フラッグを奪った数が最も多い班が優勝となる。」


 まぁ、聞いていた通りの内容だな。

 八人で固まって……いや、フロガ、フェル、ホースの三人で囲うように周辺を警戒するのが無難か。


「他学年との人数の差を鑑みて、我々は四人の二班に分けることになった。」


 はい……!?

 いや、俺ら一年だぞ。

 経験値不足の一年にハンデを与えてくれてもいいじゃないですかやだぁ!!


 そうして

 俺 ケルス クリム カリス

 フェル フロガ イフ ホース

 の二班に別れて参加することとなりました。


 ふざけるなパワーバランスどうなってんだよあの先公。


「頑張って勝とうね!」


 ケルス君は明るくていい子なんだけどなぁ。

 何考えてるか分からないから話しかけずらいんだよなぁ……。


「まずは、フラッグは誰が守る?」


 最初に班ごとにフラッグが一本支給される。

 そのフラッグを守りながら相手のフラッグを奪い取ればいいという簡単なルールだが、フラッグは奪えば奪う程嵩張る(かさばる)

 さらにフラッグは折れてもいけないから、フラッグを持っている人は戦いに参加しずらくなる。


「カリス、任せられる?」

「私か?」


 この班の中で最も防衛に向いているのはカリスだ。


「どうしてフォンバーグ君なんだい?」

「カリスは水魔法を得意としていますから何かあれば質量で相手を押し流せます。

 それに、仮に水がフラッグに当たろうが大したダメージにはなりませんから。

 カリス、君はフラッグの防衛に集中してくれる?戦闘は俺とケルスでするから。」


 攻撃は二人だけで十分だ。

 クリムが不満気だが仕方がない、下手に前線に出すとむしろ班員を失う可能性が出てくる。


 班員が途中離脱した場合でも減点がされるんだ。カリスと一緒に防衛を任せた方がいいだろう。


「アルタロム君すごいね、いきなり決められた班なのにそんなに計画を立てられるなんて。」

「一応みんなとは班を組んで実習に出たことがありますから、何ができたのかは把握しています。」


 とはいえ、この班では正直他の班に勝てる未来が見えない。

 圧倒的に戦闘能力が高い奴らが軒並みもう一方の班に連れていかれた。


 今年の一年の優勝はあの班に賭けるとしよう。


「二時の方向から四人来るよ。」


 なにが?


 ケルスが警戒態勢を取った時、カリスが少し遅れて反応した。

 俺はさらに遅れて気がついた。

 本当に二時の方向から四人来ている。


「四人ってことはあいつらの可能性もある?」

「ないね。」


 茂みに隠れるようにしていたケルスがいきなり立ち上がり、剣を構えた。


 旋風(ワールウィンド)


 次の瞬間、中級の風魔法が二年生の班を襲った。

 もう精霊を使って無詠唱で魔法を使えるようになったのかこの子は。


「アルタロム君。君は炎魔法得意でしょ?

 打って。」

「いや、それはさすがにやりすぎだよ。」


 旋風に巻き込まれた二年生の生徒は物凄い勢いの風とそれに巻き込まれた葉っぱや枝に襲われ、ぐったりとしていた。


「ほんとだね。」

「それに、俺は炎じゃなくて雷が得意なんだけど……。」


 え、何?なんでみんなそんな不思議そうな顔しているの!?


「私はてっきり炎魔法が得意なのかと……。」

「入学試験で使っていたのは印象的だったよね。」


 俺は君の精霊魔法の方が印象に残っているよ。


「あの守護者(ガーディアン)は炎で焼いたんだと思ってた。焼きガニ……。」


 俺ってそんなに炎の印象だったのか……?


「クリム、二本目は君が持っていてくれますか?」

「え、はい!」


 すごく嬉しそうだ。

 さっきまで不満そうにしていたのが嘘のように目をキラつかせている。


「アルタロム君、次の班を狙う?」


 次の班か。最後まで残って漁夫の利を狙うなら勝ち筋がある気がするけど、最後の班がめちゃくちゃ強かったらやだなぁ……。


「あと一本くらい手に入れておこうか。」


 参加している班は一年が二班でそれ以外の学年が一班ずつの合計六班。

 三本手に入れて半分を持っておけば目立つな。

 よし、あと一本手に入ればあの作戦が上手く行きそうだ。

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