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11、多弁

ゴーンゴーンと鐘が鳴る。

円卓の中央時計が30分経過を告げたからだ。


仁一郎「話し合いは終了だ。

これより一切の会話を禁止する。

日が暮れて、容疑者を処分する時間がやってきた。

では手元のモニターを見ろ」


そこには円卓と、椅子に座る13人のアイコンがそれを囲んでいた。


仁一郎「そのモニターはタッチパネルじゃ。

これから人狼だと思う者に投票してもらう。

投票順は自由。心の決まった者から投票ボタンを押せ。30秒ほどで投票理由を述べ、投票先の人物のアイコンをタッチし投票完了。これを13人分繰り返す。

誰かの投票中に、他の者が割り込めないように設定してある」


ななし「ねえ、みんな打ち合わせ通りに頼むよ」


奴が口元に手を添え、トランプを再度扇状に見せる。

ちゃんと13種あることを数えた。

そして奴はその束をおみくじ箱に入れる。


仁一郎「では心の決まった者から、投票ボタンを押せ。早い者勝ちだ」


ななし「公平性をさらに追及するために、舞雪ちゃんが引いていいよ」


舞雪「あ、はい」


トランプの入った箱を隣の席の舞雪へ渡した。お互いが腕を伸ばしギリギリ届く。


舞雪は箱をシャカシャカふる。

箱を傾けた時、1枚のカードが飛び出す。


舞雪「……スペードの3ってことはお姉ちゃんだ」


いきなり、私か。

みんなが私に注目する。

まあ、しかし何も問題などないはずだ。


雛「じゃあ投票します」


私は投票ボタンに触れてみる。


仁一郎「柊雛の投票だ」


円卓の中央ディスプレイに、私の名前が出た。

私の投票ターンだと言いたいのだろう。


雛「議論で伝えた通り、配役時の反応が気になった星彦に入れるわ」


笹川星彦のアイコンに触れる。

すると笹川星彦のアイコン横に1と表示された。無駄によく出来たシステムだ。


同時に円卓の中央ディスプレイには柊雛→笹川星彦と書かれていた。


仁一郎「笹川星彦に1票じゃな。では次」


舞雪が次のトランプを出す。


舞雪「スペードの1」


初日「ん?ワイやな。よっしゃ」


仁一郎「月影初日の番」


初日「はい!えー、ワイは誰やっけかな?

……うそうそ。なはは!

えーっと、赤村満月ちゃんで」


月影初日→赤村満月


仁一郎「赤村満月に1票が入った。次だ」


次に箱が吐き出したのは9。

今、入れられた赤村満月だな。


満月「投票する。晩花火にな」


仁一郎「晩花火に1票。次」


これも筋書き通り。順調だな。


舞雪「次は、スペードの5」


兎摘「わ、私?」


爪を噛み、何かに悩んでいる……?

おい、大丈夫か?


ななし「何してるの?言う通りしなよ。

じゃなきゃ、残りの票全部入れちゃうよ?」


兎摘「ふん、何よ!死ぬことなんて別に怖くはないわよ。

でもまあいいわ。今回はあんたらの言う通りにしてあげるわよ。

片桐美雨に入れるわ!」


仁一郎「片桐美雨に1票じゃ」


胸をなでおろす。問題なしだ。


舞雪「次は、8」


花火「ウチか。投票します」


仁一郎「では晩花火」


花火「ウチは霊時くんに入れます。

理由は……ちょっとムカついたから」


霊時「は?」


花火「うん、理由言っていいんだよね?これ。

あんた何も話さなかったでしょ?

腕組んで、眉間に皺寄せて。

それがあんたの正義なんだろうけど、甘いって。

理不尽に駄々をこねて、誰かが変えてくれるのを待ってるだけじゃん」


霊時「……な」


花火「“窓が開けっぱなしで寒いと愚痴るより、自ら閉めにいく人になりなさい”

ウチの宗派の教えよ。ウチはそういう考えだからさ」


仁一郎「月影霊時に1票」


霊時は悔しそうに目線を泳がせていた。


結構言ったな、とひとつ関心する。

花火の投票先が霊時になったのはたまたまだった。

だが恐らく、本心で思っていたことに違いない。


舞雪「次は6です」


美雨「お、私だ!投票します!」


仁一郎「片桐美雨の投票」


美雨「私は、むーくんに入れます。

理由は、議論で言った通りです」


夢咲士「……ふ、愚かな」


むーくんと言う呼び名はやめないんだな。


仁一郎「源夢咲士に1票」


舞雪「スペードの11。その夢咲士くん」


夢咲士「俺様の投票は……

そう、月影初日。貴様だ」


初日「あーワイかー」


頭を抱えて笑っている。

全員生き残れるとわかってから初日は上機嫌だ。

それが私は鼻につく。


仁一郎「月影初日に1票」


舞雪が次にめくったカードは、12。自身のカード。


……この辺りからだ。

何故か無性に違和感を感じ始めたのは……


舞雪「……投票します」


仁一郎「柊舞雪」


舞雪「……」


舞雪は黙ったまま、何故か私を見ている。


……え?お前の投票はお兄ちゃんだろ?

間違えるなよ?


舞雪「ねえ、お姉ちゃん。

配役そろそろ視えた?」


雛「……え?」


舞雪「消化試合かもしれないけど。

透視、早く教えてね。

……そいつに投票するよ」


仁一郎「柊閏悟に1票」


まだそこに意識がいっているのか。


舞雪「あと5人……次は7です」


星彦「俺だな。投票する」


仁一郎「笹川星彦。誰に投票する?」


星彦「宣言通りだ。柊舞雪へ頼む」


仁一郎「柊舞雪へ1票」


これも予定通り。

でも、何故だろう。

私の不安は全く拭えず、むしろ大きくなってしまっている。


場には、スペードの2が現れる。


閏悟「投票する」


このゲームに一番不満を持っていたお兄ちゃんか。


閏悟「私は……」


低い声は、いつもより遅く感じる。


閏悟「兎摘さんへ入れます」


兎摘「フリでも腹立つものね。あんた呪ってやるわ」


仁一郎「片桐兎摘に1票」


あと3票だ。


舞雪「スペードの4」


桜真「……投票する」


仁一郎「月影桜真の投票だ。誰へ?」


桜真「俺は……」


何故か沈黙した。

桜真の投票先は、私のはずだ。

どうした?何だ?


桜真「……偶然か?

怪盗ななし……」


ななし「……へ?どうしたの?」


桜真「お前のカードがまだ出ていない。

お前の番の13は勿論、お前に投票予定のレイの10も出てないんだぞ?

残った2枚がたまたま13と10だと?おかしいだろ」


舞雪「……」


腹元のモニターを見る。

みんな1票の中、私と桜真そして怪盗ななしが0票だった。

違和感の正体が何となく分かり始める。


ななし「え?たまたまじゃないの?

舞雪ちゃん、ちょっと箱振ってもらえる?」


舞雪は言われるがままに両手で箱を振る。

カシャカシャと中から音がする。


ななし「ね?カードは全部箱に入れたの見たでしょ?偶然だってば。

そんなわがままで、みんなで決めたリレーをやめて裏切るんですかー?」


桜真は答えない。

ななしを睨みつけている。


ななし「ねえ?」


桜真「……柊雛に入れる。

理由は、とりあえず取り決め通りだ」


結局、予定通り私へ。

しかし、桜真の言ったことはもっともだ。


嫌な予感の正体はわかったが、消えたわけではない。


ななし「……」


霊時「……」


あと2票。どうなるんだ?


仁一郎「あと2人。次は、誰が投票する?」


舞雪「あ、じゃあ」


それは……


ななし「僕、投票しまーす」


カードを出す前だった。


舞雪「え?まだカードひいてないよ」


ななし「もういいんだよ。舞雪ちゃん!

残ってる2枚のカードさー、出ないでしょ?」


舞雪が箱を振っているがカシャカシャ音がするだけで、カードを吐き出さない。


舞雪「え?どゆこと?」


ななし「簡単だよ。

それさ、トランプより大きいカードをあらかじめ無理にねじこんでるんだ。

だから出ないカードが中でカシャカシャ言ってるだけなんだ」


舞雪「え、じゃあ10と13は……」


ななしは両手のひらを見せつける。


ななし「これのことー?」


手の中に曲げられた10と13のカードが貼りついていた。


舞雪「え……」


ななし「カードパームって技術だよ。

マジシャンが観客にばれないよう密かに手の中にトランプを隠し持つ技さ」


みんな啞然としている。


ななし「これで、僕の番と僕に投票する人の番は絶対に来ることはない。

公平っぽくアホどもの票を好きに操作出来るわけさ!」


なぜそこまで手をこんだことを?

なぜ裏切ったのか?

この先、何をしようとしているのか。じわじわ察し始める。


桜真「くそ!お前……

おい!約束通り、俺に投票しろ!お前は俺を嘘つきだと疑ってたんだろう?」


ななし「あーあれ?

確かに本心だけど、他に疑わしい人が出来たんだよねー。

疑ってるけど、投票は別の人に……

ほら、人狼ゲームじゃそんなことあるあるでしょ?」


ななしは、ひひひと笑う。


ななし「そうだなー、僕の投票先はねー

……柊雛ちゃんにしよう!

やっぱり君が本当の嘘つきだ!」


指を向けられる。


雛「え?」


うそ……これって、つまり……


仁一郎「……柊雛に2票目だ」


意図的に並べたはずの1票群の中、私だけ加算された2票目。

モニターを覗き、私は目眩がした。

それは取り返しのつかない死への一歩。


何で……

何で……私が……


ななし「さあ、これで最終票は霊時くんだね!

あ、霊時くんに先に言っておいてあげるけど、打合せ通り0票の僕に入れる意味ないからね?

それって2票の雛ちゃんを自分の手で見殺しにすることと同じだから。

ひひひ、最終票が誰に入るのか!見ものだね!あはは!」


してやったと多弁になる裏切り者。


手のひらに爪が食い込み、額から汗が噴き出す。

何故なら、私の生存率は今よくて50%になったからだ。


ななし「ね、言ったでしょ?これで予言通り。

僕には1票も入らないってさ!

未来は覗くものじゃない。未来は自分で作るものなんだよ、雛ちゃん」


何で……何で私なんだ!!


奴の高笑いが響く中、全員生存の道はあっけなく砕け散ってしまった。






1日目、昼のターン

挿絵(By みてみん)

01、月影初日……1票

02、柊閏悟………1票

03、柊雛…………2票

04、月影桜真……0票

05、片桐兎摘……1票

06、片桐美雨……1票

07、笹川星彦……1票

08、晩花火………1票

09、赤村満月……1票

10、月影霊時……1票

11、源夢咲士……1票

12、柊舞雪………1票

13、怪盗ななし…0票


残り1票(月影霊時)

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