表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/71

12、白アピ

ななし「ねー雛ちゃん、どんな気持ち?

約束した計画を土壇場でひっくり返されて、絶望のどん底に突き落とされる気分は?ひひひ」


言い返したい。怒りを吐き出し、みんなにあいつを責めてもらいたい。

しかし熱くなった頭を必死に冷やす。


霊時「ん?いやいや。どういうこと?

この場合どうすんの?」


最終票を持っている者は素っ頓狂な質問をしている。


ななし「だーかーらー言ってんじゃん!

君は既に1票持ってる中から誰か選んで2票目を作る。

雛ちゃんの対抗を作ってあげるしかないの!」


霊時「は?待ってくれよ。結局どっちかが死ぬってことだろ?そんなの……

こんなの聞いてねえぞ!」


机をバンバン叩いて訴えている。


霊時「こんなの俺が誰かを死刑台にあげるようなものじゃないか!

そうだ、やり直しだ!手違いがあったからやり直すぞ!」


桜真「レイ……残念だが、それは無理だ。

お前は誰かを雛の対抗に上げるしかない」


霊時「は?嫌だ!!もしそれでそいつが死んだら責任なんてとれない!

だから俺はこんなゲームやらねえって言ったんだ!

俺は絶対投票なんかしないぞ!」


桜真「ならば、雛が死ぬだけだ。

……お前は、崖にぶら下がっている雛に唯一手が間に合う存在でもあるんだ」


霊時「……」


桜真「お前が手を伸ばさないと雛は確実に死ぬ。

しかしお前が手を伸ばすと、もう1人岩壁に降ろすこととなる。最終的に救えるのは1人。

今はそういう状況だと理解しろ」


霊時「………………」


言葉を失う。怒りから泣きそうな顔に変わっていく。


仁一郎「最後の投票だ。どこに入れる?」


まずい。

桜真の言う通り、このまま誰にも入れられなければ私は……


雛「レ、レイくん。聞いて!」


霊時「……」


何とか私の方を見てくれた。


雛「た、助けて。しかも私人狼じゃないの。

誰か怪しいと思った人に入れるだけでいい。

その後は、あなたが入れた人と私とで決戦投票になる。その後、どちらを処刑するかは全員の多数決になるから。

とりあえず、誰かを2票にしてくれればいい。

その後は、またみんなで考えられるから」


焦りからか。上手く話せている自信はない。


霊時「……ざけんなよ」


雛「え?」


霊時「ふざけんな!何でお前らみんなそんな適応が早いんだよ!

人が死ぬゲーム?遺産?殺人鬼?

お前らみんなおかしいよ!

何で、はいそうですかって対応出来るんだよ!

こっちはな、こんな非日常的なゲームを理解出来るほど大人じゃないんだ!」


私の命を救える唯一の少年。

その叫びは虚しく響いているだけだった。


仁一郎「投票はまだか?しないなら、無効票になるぞ?」


ま、まずい!電気椅子が視界の端でちらつく。


雛「……あ、あの」


霊時「……」


雛「お、お願い……家族がいるの」


舞雪を指差す。


雛「母親は失踪して、この子には親がいない。

私がいないと……」


情に訴える私。霊時は下唇を噛む。


霊時「や、やめてくれ……だからって俺を……」


夢咲士「正論を叫ぶだけじゃ人を救えんぞ、勇者よ」


意外な人物が口を開いた。


霊時「……あ?なんだお前?」


夢咲士「くっくっく、俺様はな……人間界で言うところの貴様の弟だ」


霊時「……弟」


彼の表情が少し緩んだ。


夢咲士「かつて貴様のような意見を持っていたことが俺様にもあった。

しかし考えは変わった。

何故なら、いくら正論を振り回しても、世界は俺様になど興味はなく、手を差し伸ばしてくれることは決してない。

それゆえ俺様は魔王となったんだがな……くくく」


霊時「な、何が言いたいんだ!」


夢咲士「いいか勇者よ。

動かない者の正義は何の意味もない。

それはただの愚痴だ」


霊時「………………」


霊時は黙ったまま。

自分より年下の少年に言われたことだけに心に響いたのかもしれない。


霊時「……なんだよ。みんなして……

悪いのは、主催者やあの仮面なのに……

俺が悪いみたいに言いやがって……」


震えた手が上がる。


霊時「ちくしょお!!投票する!

やるよ!!やりゃあいいんだろ!!」


仁一郎「ようやくか。月影霊時の投票だ」


ついに心を決めてくれた。

とりあえずひとつ安心出来る。

しかし、誰を対抗に上げるかは私にとってものすごく重要だ。


霊時「はぁ……はぁ……」


叫び過ぎて荒れた呼吸。

周りへ、乱暴に視線を向けまくる。


その視線はまるで銃口だった。みんな目が合うだけで軽く悲鳴を上げる。

こいつは自分の役職すら把握していない。

死のルーレットはどこで針を止める。


初日「こわいこわい!他はええけど、ワイはなしやで?」


閏悟「……」


兎摘「くっ!私を選んだら呪い殺すわよ」


美雨「人狼っぽい人はいた?思い出して」


星彦「……でもこのガキ、役職見てなかったろ?」


花火「そ、そうよ、この子こそ人狼かもしんないじゃん!」


満月「……」


夢咲士「くく、なら人狼が人狼を殺してくれるかもな」


舞雪「や、やめて!選ばないで!」


誰を選ぶ?

出来れば決戦投票で、勝てそうな相手を選んでくれないと意味がない。


仁一郎「時間をかけ過ぎじゃ。無効票とするか?」


霊時「……うぅ、くそ!」


霊時が苦悩を漏らす。


霊時「うぅ、ごめん!」


タッチパネルの操作音が鳴る。


誰だ……?


仁一郎「……投票を確認した」


誰に入れたんだ?


仁一郎「……晩花火に2票目だ」


花火「……は?」


水を打ったような静けさが部屋に訪れた。


花火「は、はあ?

何でウチなの?何でよ!」


霊時「……ご、ごめん。わかんねえ。

よくわかんねえんだけど……

あんたは俺をむかつくって攻撃してきた。

つ、つまり俺の役職が何にせよ、あんたは敵なのかなと直感で思っただけだ。

本当にそれだけだ……ごめん」


いや、確かに。

花火は、霊時がむかつくと言い投票している。

霊時は自分の役職を見ていない。つまり人狼かもしれない。

しかしそのケースだと霊時には人狼仲間がいて、そいつらは霊時が人狼だと知っている。

その場合花火がその人狼仲間ということは薄そうだ。

これから共闘する仲間へ悪口を言う理由はない。


また、花火が人狼で、霊時が仲間ではない場合。

役職を見ていない霊時は叩きやすい位置だ。


つまり花火と霊時は役職が何であれ、敵陣営の可能性が少し高い。あくまで可能性の話だが。追い詰められた初心者にしては、まあまあな判断だった。ただ……


霊時「あ、あと宗教家って……なんかあんまりいいイメージもないし」


花火「はあ?何それ!そんな理由で?

あんた、ウチを救ってくれた母様までバカにするなら……」


仁一郎「お喋りはやめろ。

ではまとめよう。


月影初日、1票。

柊閏悟、1票。

柊雛、2票。

片桐兎摘、1票。

片桐美雨、1票。

笹川星彦、1票。

晩花火、2票。

赤村満月、1票。

月影霊時、1票。

源夢咲士、1票。

柊舞雪、1票。


では投票の結果、上位2名による決戦投票を行おうかのう」


しかし……花火か。

正直、相手としては最悪だ。

議論中にも人間らしいという話が何度か出た相手だし、対して私は疑われた履歴がある。


私達以外は11票。1票無効票にして、5対5にしてもらえれば……

いやダメだ!怪盗ななしが言う通りにすると思えない。

もう命懸けの投票戦で勝ち切るしかないんだ!


仁一郎「さてそれでは3分後に決戦投票するため、上位2名は最後の弁明をしろ」


3分。

この3分で何を言うかで、私の生死が決まる。


役職が映ったモニターを思い出す。

もし、私が占い師や霊能者ならそれをカミングアウトするだけでよかった。

そうすればとりいそぎ回避は出来るからだ。


しかし私はただの村人だ。

嘘をついて今生き残ったとしても、村人の嘘によって役職のバランスが崩れた村は基本的に勝てない。つまり結局、遅かれ私も死ぬ。

どうにか村人として信じてもらうことを言うしかないんだ。


雛「……」


どうする……

いつのまにか手に嫌な汗を握り込んでいた。


花火「えーっと雛ちゃん考え込んでて何も言わないなら、ウチから言うね。

……まずみんなに教えられることは、ウチは何の能力もないただの村人だと言うこと。

だから、配役時に安心したの。

とりあえず役職持ちではないから安心してほしい」


花火の論調が熱くなる。


花火「だけど!死にたいわけじゃないから!

こっから言いたいことは2つだけだからよく聞いて!

まず……聖愛女子学園、“国語教師一家心中”の事件」


はっとなる。自己紹介時の透視で告げた花火の母校。

そして先ほど、お父様が告げた事件のひとつ。


花火「あれ……ウチのせいなんだ。

ウチは………………うん……

3人の人間を殺しました」


目を瞑り、息苦しそうに話す。

シスター側からの懺悔に、みんな聞き入る。


花火「絶対に知られたくない過去……

だから!自己紹介の時、雛ちゃんの透視に焦った!!

茶化したことを謝った!」


雛「……」


花火「そんな私が人狼をひいてたら、絶対に焦ったと思う。

さっき雛ちゃんに透視してもらおうってなった時!

私が一番喜んでいたことを思い出してほしい」


確かに花火は私の透視に歓迎的だった。

その光景はみんな覚えているだろう。


花火「そしてもうひとつ。

ウチは……誰が何と言おうと、“母の待つ家”に入信したことを誇りに思っています。

恩師である母様に本気で感謝してるし、何百人もの迷える人の懺悔を聞いてきました。

その人達に、母様に……そして神に誓えます。

ウチは、人狼ではありません。

神よ、どうか……ウチが人狼でないことをみんなへお伝え下さい」


ギャルは手を合わせる。

ただ無表情で目を閉じる様は、神秘的なシスターにしか見えない。


なんて弁明……

私すらわかってしまった。

……花火は、絶対に人狼ではないと。


そう、私ですら思ったんだ。

みんなも思ったに違いない。


もう十分だと告げるように、みんなの視線が私に切り替わる。


私の番だ。

私は……

私も……真実だけで戦おう。

正直に、素直に訴えるしかない……


舞雪「お姉ちゃん」


舞雪に呼ばれる。


舞雪「透視結果……ひとりひとりの役職を言えばいいじゃん。

そしたらきっとみんな信じてくれるよ」


真実を……


嫌な汗は円卓に落ち始める。






1日目、昼のターン

挿絵(By みてみん)

01、月影初日

02、柊閏悟

03、柊雛

04、月影桜真

05、片桐兎摘

06、片桐美雨

07、笹川星彦

08、晩花火

09、赤村満月

10、月影霊時

11、源夢咲士

12、柊舞雪

13、怪盗ななし


全員生存。残り13人

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ