「うぁ!ヒーローだ!」「ビクッ」
本日2回目(残り2つ)
満開に咲き揃える都内でも有名な花見スポットの中で、人混みの中、異色な気配を放つダボダボのコートを纏い、サングラスにマスクをつける見るからに怪しい大柄な男。俺である。
「(ムギュぅ、絶対声出すなよ)」
『(ムギュ……)』
そして、エコバッグの中から覗く、異形の怪物ムギュである。
バレたら逮捕、方や抹殺。
賑やかなこの空間で、彼らだけが神経を尖らせ戦場の兵士が如く強い使命感を胸に桜を見上げていた。
「あっヒーローだ!」
『「ッゥ!?」』
「本当だ、ヒーローショーやってる!見に行こうぜ!」
都内でも有名な花見スポット。血走った目を向ける先に居たのは、ガチなやつではなく映像作品のキャラだった。
「(ムギュ、アレは偽物だ。安心しろ)」
『(ムギュ…)』
ムギュはそもそも、ヒーローに危機感を持っているどころか知力が犬より高いか怪しい外見(芋虫)だが、ホッと息をついたような気がした。
『(ムギュムギュ)』
「(うん?折角だから観ていこう?命知らずなぁお前)」
『(ムギュギュ)』
庭園内を散策し、1時間。いい加減ムギュも飽きてしまったのだろうか?
男は、ヒーローなど異世界人を思い出すだけなので見たくなかったが、ムギュがあまりに真剣に訴えるので後方から眺める事にする。
『ガハハハ、この世界は俺様が支配するのだ!』
『出たな怪人サイテイジャン!お前の好きにはさせない!』
『グハハ、速過ぎると思ったらやはりお前だけか....相変わらず行動力の化け物め、こいッサイコウレッド!』
『うぉぉぉぉ……』
…
……
「あんなの何が良いんだろうなぁ?ムギュ」
『ムギュゥ?ムギュ!』
「え?あの怪人、格好良かった?…てっ、そっちかい!」
夕焼けの空
思ったより長く居座ってしまった俺とムギュは帰路につく。
その時だった。
「キャァァ!!!!」
路地裏から女性の悲鳴が聞こえてきたのは。




