蘇った幼馴染
「そ……そんな……」
初めてゾンビを目の前にしたからなのだろうか、俺は動けなくなってしまった。
実ゾンビに恐怖しているのだろうか?
恐らくそうなのだろう。
「あぁぁぁぁああぁ……」
実から実の声とは思えない声が聞こえてくる。これもゾンビの声なのだろうか?
実が一歩ずつゆっくりとこちらに歩んでくる。
後もう少しで俺の所まで来てしまうだろう。
俺は相変わらず一切動けない。頭の中では逃げなくては、と思っているのだが、体が言う事を聞いてくれない。
くっ、どうする?武器になりそうなものは何もない。足払いでも仕掛けてみるか?
いや、ゾンビの体は割と頑丈な可能性がある。こちらの足が折れてしまったら尚更動けなくなる。
ならどうする?他の事を試してみるか?
こんな事を考えている間にも実は迫ってくる。
……もはやこれまでか。
実になら食べられても本望……そんな考えが浮かんだ。
だが、それでいいのか?俺はついさっき実の分まで生きようとしたばかりだぞ?ここで諦めてどうする?
何かあるはずだ、近くに何かが……
だがしかし
すでに実は目の前に来ていた。
もうこれまでか……俺は目を瞑り覚悟を決めた。
願わくばゾンビになった後も知性を保っていられますように……そんな事を念じていた。
だがその必要はなかった。
なぜなら、実は静止していたからだ。
直立不動という言葉がよく似合うような姿勢であった。
「あ、あれ?実?俺を襲わないのか?」
「…………」
問いかけても実は何も答えてくれない。当たり前なのだが。
だが、その当たり前を無視するかのような事が起こった。
「……ん?あれ?誠……?」
「……え?」
一瞬耳を疑った。実の声が聞こえてくるなんて思っていなかったからだ。
だが実は今、確かに喋った。
「実!?本当に実なのか!?」
「そ、そうだよ。どうかした?」
「うわああああああ!!!!」
俺は思わず実に抱きついてしまった。
涙も出ていた。
その涙は嬉しさからのものだった。
「ご、ごめんね、記憶が曖昧で……つまり、今の私はゾンビってこと?」
「うん」
カップラーメンを食べながら実に色々と聞いてみた。
実はどうやら自分がゾンビだということを認識していなかったらしい。
それはおそらく記憶が曖昧だからだろう。
実曰く、俺にあの言葉を伝えた時からさっきの発言までの記憶がないらしい。
そして、意識が戻って来たら俺が怯えた様子でいた、との事だ。
「まあ、ともかく実が戻って来てくれてよかったよ」
「うん、私もまだ死にたくはなかったからね。もしかしたらその思いが強かったからこうなったのかも」
実はいつもの日常の通りにはきはきと喋る。その表情は明るく、目には光が戻っていた。




