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湖畔
わたしの周りは水ばかりだ
すっかりと湖に囲まれている
霧は深く対岸は見えない
目を凝らしていると
遠くで何かが跳ねる水音が聞こえた
あれが言葉になる前に
絵を描くことを覚えなければいけないのだ
わたしの後ろに疎らに広がる
針葉樹の森の奥の小さなせせらぎの
遥か後ろで銀嶺の気配がする
彼女はきっとまだ雪の冠を戴いたまま
疼く木の芽を宥めているのだろう
不意に森閑が破られた
バタバタと水鳥たちが飛び立つ
メリメリとヒマラヤ杉の巨木が倒れる
ゆっくりと現れたのは森の王だった
その頭に大鷲の翼のように悠々と角を広げ
その巨大な肩に漲るものを隠そうともしない
彼はわたしの前を通り過ぎる時
確かにわたしを見た
長く豊かな睫毛がフッサリとしていた
その下に大きく黒い瞳が星のように輝いていた
そのまなざしは澄み渡る夜空のように深く静かだった
写真は空乃 千尋さんより頂いたものです。




