第八十一話 血に染まる共闘
沈み行く船……既に玄武池の水はオレの膝下あたりまで浸かり始めていた。早くこの戦いに終止符を打たねば、折角の草薙の剣が台無しだ。
「準備はいいか? 水虎よ」
「主よ、我はいつでもいける」
「いい返事だ。酒呑童子よ、お前と共闘出来ること嬉しく思うぞ」
「甘ったれるな。我輩に屈辱を与えたこいつが気にいならないだけだ。この戦いが終わったら、テイマー……貴様の番だ」
「いつでも、相手になってやるぜ。さぁ、水虎、酒呑童子、行くぞ!」
「おおう――っ!」
反撃の狼煙をあげるかのように、水虎と酒呑童子は高らかに声を張った。
水虎 LV26 ランクA 特性 水吸収
HP365 MP62
攻撃力78
素早さ58
1 クリティカル
2.3 通常攻撃
4 ミス
5 黄金の爪
6 津波
酒呑童子 LV25 ランクA 特性 盗む
HP400 MP60
攻撃力88
素早さ69
スキル『盗む』『薙刀無双』
「じいさん、悪いがもう一度クラーケンのステータスを頼む」
「わかっとるわい。ほれっ」
クラーケン LV28 ランクA 特性 水吸収
体 HP500 MP50
攻撃力60
素早さ55
触手×4 HP80 MP0
攻撃力20
素早さ15
スキル『召喚』『再生』
あれ程攻撃を仕掛けたのにも拘わらず、クラーケンの奴……ピンピンしてやがる。だが、今度は違う。こっちには草薙の剣があるからな。
「まずはオレに任せろ! この草薙の剣の切れ味を試してやるぜ! クラーケンよ、覚悟しろ!」
オレは鞘から草薙の剣を引き抜き、両手で柄を握った。その輝き、その重み、全てがオレの体内に染み込むようだ。何処か懐かしい感じ……村正とは違う……そうデスブレイカーに限りなく近い感じだ。
今しかない。生温い玄武池から脱出するように、最大限に跳躍する。地上程高くは飛べないが、攻撃するには十分な高さ。
「喰らいやがれ!」
オレはそう言い放つと、触手目掛けて横一線に草薙の剣を振り抜いた。まるで一心同体のような感覚だ。
手応えはあった。返り血を浴びながら再び水に浸かると、クラーケンは悍しい声を張り上げた。それと同時に、水面に四つの触手がボトボトと落ちた。四つの触手全てに80のダメージを与えた。――HP0/80――
「どうだ、クラーケンよ。これで再生は出来まい」
無様な格好をしたクラーケンは、抱き抱えていた船から離れ黒煙のような墨を辺り一面に撒き散らした。
「退け――っ! 次は我輩の番だ!」
オレに続けと言わんばかりに、酒呑童子が前に出る。水面が大きく揺れる中、水飛沫をあげながら薙刀が弧を描く。クラーケンは、それを回避しようと試みるも素早く迫る薙刀の前に成す術はなかった。
酒呑童子の薙刀は、的確に滑りのある肉体を捕らえ88のダメージを与えた。――HP412/500――
「やる……」
「テイマー、お前こそな」
オレと酒呑童子は、顔を見合わせ互いの健闘を称えあった。
だが、これだけでオレ達の攻撃は終わらない。直ぐ様DDを振り次の一手へと導く。DDが示した目は5の黄金の爪だ。
水虎は玄武池へと飛び込み、魚雷のようにクラーケンを目指す。流石は水の使い手。地上での戦闘とは違う華やかさがある。
「クラーケン、我はここだ!」
水虎はクラーケンの背後を取り、黄金に煌めくその爪を優雅に振るった。スクリューのようなその攻撃は、黒く染まった水面をも透明な水に浄化した。クラーケンに、104のダメージを与えた。――HP308/500――
ここまで一方的にダメージを受け続けていたクラーケンは、体勢を整えるべく後退した。そして再び漆黒の墨を放つと、呪文のような言葉を並べた。
「何だ、何をしようとしているんだ」
「テイマー、用心するがよい」
「わかってるさ。自分の身は自分で守れってね」
身構えるオレ達に、クラーケンは眩い光を放った。反射的に瞼を閉じやり過ごすと、そこには船を取り囲む大蛇が長い舌を出していた。オレが最も警戒していた召喚ってやつだ。
「クラーケン様、私のような者お呼び頂き光栄です」
「シーサーペント、煙たいコイツらを一掃するのを手伝ってもらおうか」
「お安い御用です」
シーサーペントと名乗る大蛇は、スルスルと蜷局を巻くと沈みかけた船に圧力を掛け始めた。軋みながら、崩れ行く船。
「このままでは、玄武池に引き摺り込まれる。酒呑童子よ、一旦脱出するぞ!」
オレはそう言うと、水虎の背に乗り沈没する船から遠ざかった。その頃には船首だけが頭を出し、その面影は残っていなかった。
「はっ。酒呑童子は?」
ふと我に返り辺りを見渡すも、酒呑童子の姿は確認出来なかった。
「やられちまったか?」
嘆くようにそう呟くと、巨大な泡と共に酒呑童子は水面に顔を出した。
「我輩としたことが、油断し……うがっ!」
再び玄武池に引き摺り込まれた酒呑童子。その瞬間、漆黒に染まった水面は、朱に染まった。
「酒呑童子――っ!」
オレがそう叫ぶも返答はなかった。
「ぐははっ! 私の牙を喰らって生き延びた者はいない」
「シーサーペント、流石だな」
クラーケンとシーサーペントの言葉の後、静まり返る玄武池。
「酒呑童子の奴、やられちまったのか?」
諦めかけたその時、再び水面に波紋が広がった。
「痛ぇ。死ぬかと思ったぞ。そう何度も死んでられないからな」
「酒呑童子、生きていたか。さぁ、手を出せ」
「おう、済まない」
オレは酒呑童子の手を引き、水虎の肩を貸した。酒呑童子は、110ものダメージを受けていたが、命に別状はない。――HP290/400――
「タクマ――っ! こっちの船に乗るんだ!」
先に脱出をした甘寧が手招きをする。このままでは、まともに戦えない。オレ達は、一旦甘寧達の船へと泳いだ。




