第四十二話 脅威 ポルターガイスト
くそ……下手に攻撃すればまた増殖しちまう。一体どうすれば……。
「タクマ、冷静になって。増殖する場合、大抵核がある筈よ。核を叩けば増殖しないんじゃないかしら」
「核か……」
「タクマよ、お雪の言う通り核を叩けば、奴らは死滅する。じゃがな……全部纏めて叩かにゃ、意味がないんじゃ……」
それはつまり、全体攻撃を仕掛けないと無理ってことか。輪入道が全体に攻撃出来るとしたら、"灼熱の炎"のみ。しかし、ある程度近くに纏まっていたらの話。縦横無尽に浮遊するポルターガイストを、一気に叩くのは無理な話。
あれこれ考えてる時間はない。半分諦めかけ、DDを振ろうとしたオレに真琴が囁く。
「ちょっと待って、お兄ちゃん。ちょっと耳を貸して……ごにょごにょ……」
「真琴、でかした。でも上手くいくか?」
「大丈夫! 相手は分裂するだけの低級妖怪。バレやしないよ」
真琴の作戦はこうだ。オレの衝撃波を使い、まずは6の目を出し"怨念"でポルターガイストの動きを封じる。そして、纏まった所を"灼熱の炎"で一気に燃やし尽くす。確かにいい作戦だ。問題はこの"イカサマ"がバレないかだ。しかし、この状況……やるしかないようだ。
イカサマのダイスは今はもうない。やれることと言ったら以前もやった、衝撃波でのイカサマ。
「はぁ……」
オレは小さく溜め息をついた後、DDを転がした。更に予定通り衝撃波で、出目が6になるようにコントロールする。かなりの集中力が必要だ。
「よし、6だ! 輪入道よ、行け! 怨念だ」
幸いポルターガイストは、オレが衝撃波でDDの出目をコントロールしたことに気付いていない。所詮、低級妖怪はこの程度だ。
輪入道はDDの目を確認すると、六体のポルターガイストに怨念を放った。ランクの高い妖怪には効果が薄い怨念だが、低級妖怪であるポルターガイストには有効であった。
怨念で動きを封じられたポルターガイストは、浮力を失いボトボトと地面に落下した。
「作戦通りだ。輪入道よ、畳み掛けるぞ!」
「御意」
ここで狙う目は、勿論1の灼熱の炎だ。オレはさっきと同じ要領でDDを振った後、衝撃波で1になるようにコントロールした。出た目は狙い通り1。容易いものだ。
「よし、輪入道よ。灼熱の炎で一気に焼き払え!」
「御意」
輪入道は身動きの取れないポルターガイスト達に、強烈な炎を放った。無抵抗の敵を一方的に倒すのは心苦しいが、これも生き残る為だ。
ポルターガイスト達はそれぞれ62のダメージを受け、一体……また一体と断末魔をあげていった。
何とも言えない臭気が、辺りを包み込む。焼け跡からは、緑色をしたヘドロのような物が残った。
「クリスタルがない…………」
本来倒した妖怪は煙のように消え、クリスタルを残し浄化する。しかし、ポルターガイストは緑色のヘドロを残しただけで、クリスタルの欠片さえ残さなかったのだ。
「まさか……な」
オレの予想は的中した。緑色をしたヘドロは、沸騰したかのようにグツグツと煮立ち、形を元の姿へと変えていった。
「嘘だろ……核を完全に破壊出来なかったというのか?」
オレがそう言うと、一体のポルターガイストにもう一体が重なり、更にその上にまた別なポルターガイストが重なった。
「融合か? いや、違う」
最後のポルターガイストが重なると、頭に黒光りした二本の角を持った妖怪へと姿を変えたのだ。恐らくこれがコイツの正体。
「うぉぉぉ――っ!」
その妖怪が雄叫びを上げると、全身に銀色の体毛が生え、オレの何倍もの腕の太さに変化した。
「あ――っ! 久しぶりの自分の体はいいもんだ。イカサマのクソ野郎! 俺様が何にも知らないと思っていたのか? ま、力を取り戻したことだし、ここは礼を言うべきか?」
「何だと?」
「こうも上手くいくとはな。俺様は何れ黄泉を支配するべリアル様だ。異国のふざけたカラス天狗とかいう奴に、ポルターガイストにされちまったんだ。俺様としたことが油断したもんだ」
「お喋りな奴だ。そのカラス天狗って奴は、オレ達が倒した」
「へっ? お前らが? コイツは愉快だ。奴を倒す手間が省けたぜ。ガハハハ」
「下品な笑い方だ。安心しろ、お前も冥土に送ってやる」
「ガハハハ。小僧……俺様を舐めるなよ」
「タクマよ、こやつを挑発するでない。べリアルと言ったら、西洋妖怪の王じゃ」
妖怪大翁は震えながらそう言った。その震え方は尋常じゃない。
「マズッたかな……」
「マズイに決まっとるわい」
「そのジジイの方が利口のようだな。さぁ、地獄のショータイムの始まりだ!」
これも自業自得って訳か。こうなりゃ、やるしかねぇな。
「川姫! 真琴で援護を頼む」
「そのつもりで、こっちは準備オッケーよ」
川姫もだいぶ戦闘に慣れたようだ。オレが言わなくても、空気を読みやがる。以心伝心ってやつか?
「バトルフォース展開!」
川姫はバトルフォースを展開した。
座敷殿(真琴) LV13 ランクD 特性 遊び上手
HP121 MP47
攻撃力19
素早さ48
1.2 貫通パンチ
3 ミス
4.5 遊び
6 通常攻撃
「じいさん、べリアルのステータスはどうなってる?」
「年寄りを労れって言うとるじゃろ。ほれ、これじゃ」
べリアル LV18 ランクB 特技 一撃必殺
HP250 MP0
攻撃力30
素早さ60
スキル 『一撃必殺』
――べリアル……西洋妖怪の王と呼ばれた男。その攻撃力は岩をも砕くと言われてる。カラス天狗と歪み合い、ポルターガイストにされていた――
今度は、スキルをちゃんと確認しないとな。一撃必殺か。警戒が必要だな。体力的には大したことなさそうだ。
「さぁ、べリアル! どっからでもかかって来い!」
オレは声を張り上げ、全てを輪入道に託した。




