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第四十一話 西洋の妖怪現る

◇◇◇◇◇◇




 地獄谷を後にしたオレ達は、邪馬台国に向け歩き出した。邪馬台国には、三種の神器の一つ"草薙の剣"を持ったヤマタノオロチがいるとのことだ。当然、死を覚悟した戦闘は避けられないだろう。


「まだ着かないの?」


 歩き疲れたお雪が弱音を吐く。地獄谷を出発してそれほど時間は経っていなかったが、泥濘のある大地と蒸し暑さがより一層体力を消耗させていた。


「タクマよ。お雪の言うことも一理ある。この先にある地獄岩で休憩を取ったらどうじゃ?」


「地獄岩? あぁ、あのデカイ岩のことか? じいさんが言うなら、そこで休もう」


 妖怪大翁の言う地獄岩までは、かなり距離が離れているが、ここからでもわかるくらいのデカさだ。

 しかし、歩けど歩けど地獄岩に近付いてる気配はない。まるで、砂漠での蜃気楼を見ているかのようだ。

 気付けば湿地帯だった景色は、密林へと変わっていた。極めつけは、突然降りだした雨だ。川姫は雨に打たれ歓喜をあげたが、暑さに弱いお雪は、生暖かい雨の所為で言葉すら発しなくなった。


「じいさん、結構歩いたけど地獄岩に着かないぞ」


 オレがそう言うと、妖怪大翁は首を傾げ言い添えた。


「どうやら、道を間違えたようじゃ」


「ここまで一本道だった。そんな筈はない」


「確かに一本道じゃった。しかし、ワシらは迷い込んだ。恐らくここは樹海……この世(人間界)とあの世(黄泉)を結ぶ狭間。ワシら妖怪でも踏み入れてはいけない神聖な場所じゃ……」


「それはわかったけど、脱出する方法ってあるんだろ?」


「なくもないが、ちいとばかり厄介でな……」


 妖怪大翁が何かを言おうとした瞬間、雨足は更に強まった。


「いかん、アイツらが来る」


「アイツらって?」


 オレが妖怪大翁にそう返すと、空中を浮遊する半透明で吹き流しのような妖怪に取り囲まれていた。一体……二体……そいつらは瞬く間に増殖し、五体にもなっていた。


「やはり現れおったか……」


「問題ない。弱そうだし、行く手を阻むなら叩くのみ」


「タクマよ、気を付けるんじゃ。コイツら西洋の、ポルターガイストという低級妖怪じゃ」


「低級? なら尚更余裕だな。輪入道よ、頼んだぞ。一気にカタをつける。バトルフォース展開!」


「待てタクマよ、話を最後まで聞くんじゃ。やれやれ……どうなっても知らんぞ」


 オレは妖怪大翁を無視して、バトルフォースを展開した。低級妖怪なら、楽勝だと考えてのことだ。それに、苦しむお雪をこれ以上見てられない。


輪入道 LV15 ランクC 特性 連続攻撃 炎に強い


HP185 MP39

攻撃力23

素早さ35


1 灼熱の炎

2.3 通常攻撃

4 ミス

5 踏みつけ

6 怨念


「じいさん、ポルターガイストのステータスを頼む」


「やれやれ……妖怪使(ひとづか)いが荒いわい。ほれ、これがステータスじゃ」


ポルターガイスト LV5


HP40 MP15

攻撃力5

素早さ20

スキル『分裂』


――ポルターガイスト……西洋の低級妖怪で、異国の地では"ラップ現象"とも呼ばれている。実体を持たず縄張り意識が強い、悪戯好きな妖怪……もしくは"霊"とされている。ポルターガイストの元々の意味は"騒がしい霊"。その名の通り騒がしいのが特徴である――


「へっ。予想通り低級じゃねぇか。朝飯前だな」


 オレは早期決着を望むべく、DDを素早く振った。出た目は3。通常攻撃だ。


「輪入道よ、そんな雑魚余裕だろ?」


「勿論だ」


 輪入道は空中を浮遊する一体のポルターガイストに狙いを定め、車輪をぶち当て23のダメージを与えた。更に、地面に落下したポルターガイストを突き上げ23のダメージを与えた。合計46のダメージ。


「輪入道、一撃じゃねぇか。ま、実質二発だがな」


 オレが輪入道の圧倒的攻撃力に酔いしれていると、倒した筈のポルターガイストがムクリと起き上がった。


「お? テイムして欲しいのか? お前……弱いけどテイムしてやってもいいぞ」


 オレはポルターガイストをテイムするべく、両手を伸ばし近付いた。


「タクマよ、近付いてはいかん!」


「えっ?」


 オレが妖怪大翁にそう返すと、ポルターガイストはスライム状になり、蠢き始めた。


「ぐぉぉ――っ!」


 倒した筈のポルターガイストが分裂し、二体に増殖したのだ。


「だから、言わんこっちゃない……ポルターガイストのスキルをよく確認せんからじゃ」


 なんてことだ。低級妖怪と侮り、見落としていた。五体だったポルターガイストが、減るどころか六体に増えやがった。

 ようやくオレは、妖怪大翁の言っていた"厄介"の意味がわかった。


「じいさん、わかってたら何でもっと早く……って言っても、オレが言うことを聞かなかったのが原因か……」


「そういうことじゃ」


 反省している暇はない。今度はポルターガイストの攻撃だ。

 ポルターガイストは弱いながらも輪入道を取り囲み、攻撃を仕掛けて来た。

 ポルターガイストAが5ダメージ。ポルターガイストBが5ダメージ。ポルターガイストCが5ダメージ。ポルターガイストDが5ダメージ。EとFは、まごまごして様子を伺っている。輪入道は合計20ダメージを受けた。――HP165/185――


 弱い……確かに弱いが、これ以上増殖されてしまってはいくら輪入道とは言え、殺られるのも時間の問題だ。


「どうすれば……」


 完全に手詰まったオレは、ただただDDを見つめていた。


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