逃がさない
この話は選択肢の答えです。
読んでいないのであれば三十九話から、読み直して下さい。
「川姫! 逃がしては駄目だ! 九尾の狐よ、オレを倒せば勾玉が手に入るぞ」
最後の賭けだ。これに九尾の狐が食い付いてこなければ、一巻の終わりだ。
「勾玉? 本当でおじゃるか?」
オレの狙い通り、九尾の狐は"勾玉"に食い付いてきた。
「ならば、その望み通り、息の根を止めてやるでおじゃるよ。死ね――っ!」
「これでいい……」
九尾の狐は深呼吸すると、炎を蓄え始めた。輪入道には効かなかった"灼熱の炎"……まさかオレがそれを喰らうことになるとは。
「喰らえ! 灼熱の炎――っ!」
凄まじい熱風を浴びた後、遅れて強烈な炎がオレを包み込んだ。オレは、60のダメージを受けた。――HP90/150――
「ぐはぁぁ……まだだ。まだ足りない……」
「……タクマさん、私からも行くわよ」
川姫は一瞬躊躇いながらもDDを振った。出た目は5。遊びだ。
真琴は振られたDDに反抗出来ず、オレに血塗られたお手玉を三度投げ付けた。12ダメージ。12ダメージ。12ダメージ。合計36ダメージ。――HP54/150――
流血した患部から、煙のようなものが放出され、真琴の両手にそれは吸収された。――HP76/110――
「はぁ……はぁ……後少しだ。輪入道よ、DDは振れんがやれるな?」
「…………」
「ぐはっ……何をしている……早く……早くしろ」
輪入道の、オレを思う気持ちはありがたい。しかし、オレは魂のみならず肉体までも蝕まれ、もはや魔族とも妖怪とも言い難い、化け物に変化していた。
「うぐぐっ……うぉぉ――っ!」
気付けばオレは奇声を発しながら、輪入道に斬り掛かっていた。
「主よ……永遠に……御免」
斬り掛かるオレに輪入道は全身を震わせ、灼熱の炎を吐いた。再び迫り来る熱風……。
「輪入道……それでいい……」
薄れ行く意識の中、オレは瞼を閉じた。
「とうとうオレも死ぬのか……」
意を決した瞬間、何者かがオレの前に立った。
「主――っ! 死んではならん! そなたには、やるべきことがある筈だ。どぁぁぁ――――っ!」
オレの前に立ったのは、なまはげだった。そうか、なまはげも生き返っていたのだな。忘れていた――。
「あ、主よ。済まない。我は忘れ去られたことに腹を立て、裏切ろうとした……許して欲しい……」
なまはげはそう言うと、息を引き取った。そして、その体から今まで融合した妖怪の魂が抜け落ち、オレの体内へと吸収された。
すると不思議なことに、オレは化け物から人間の姿に戻り、自我を取り戻した。
なまはげは満足そうな笑みを浮かべ、煙のように消えていった。
「なまはげよ、悪いのはオレの方だ……すまなかった。この命……大事に使わせてもらうぞ」
「な、何が起きたでおじゃるか?」
「お前に説明する暇はない。さぁ、バトル再開だ!」
オレは血塗られた村正を放り投げ、DDを握り締めた。




