第二十六話 オレは天才テイマー
大地に降り立ったオレの目の前には、全身緑色をした妖怪が、ニヤリと不敵な笑みを浮かべていた。コイツが河童だと言うことは、既に妖怪百科事典で検索済みだ。
「よう、河童野郎。よくもオレの仲間をいたぶってくれたな」
「何だ、何だ? オラはただ向こう岸に運ぶ条件として、相撲を取りたいと言っただけだべ。邪魔はして欲しくないだべ」
オレは、上空にいるお雪達に向かって言った。
「本当か?」
輪入道の背中から顔を出したお雪は、
「えぇ、本当よ。川姫がテイマーになって、木綿ちゃんで戦っていたの」
と、返す。すると、戦いで傷付いた一反木綿が、オレの傍に降り立った。
「旦那、すまない。俺っちに力がないばっかりに」
「そう言うことか。一反木綿よ、オレの方こそ、すまない。二人を守ってくれて、ありがとう」
「な~に、問題ないぜ」
「さて、河童野郎。本当のテイマーは、このオレだ。川姫に代わってオレがバトルを仕切ってもいいか?」
「誰がテイマーだろうと問題ないべ。但し、その一反木綿がオラの相手だべ」
「わかった。一反木綿行けるか?」
「勿論だぜ。このまま引き下がれないぜ」
「よく言う。よし、バトルフォース展開だ――っ!」
一反木綿 LV8 ランクなし 特性 浮遊
HP30/54 MP5
攻撃力11
素早さ27
1.2.3 通常攻撃
4.5 ミス
6 巻き付き
「さすが旦那、俺っちの本当の力を引き出しやがったぜ」
「本当の力?」
「おうよ。こう言っちゃ何だが、川姫のテイマーとしての力は半人前。俺っちの力を十分に引き出せなかったってわけよ。それに妖怪百科事典がなかったから、河童のステータスもわからなかったしな」
「そう言うことか。妖怪百科事典の有り難みがわかるな」
オレに褒められて嬉しいのか、踊るように妖怪百科事典は河童の記載されているページを開いた。
河童 LV10 ランクD
HP39/63 MP20
攻撃力12
素早さ28
スキル『水鉄砲』
これで河童のステータスは、明らかになった。一反木綿も、河童もまだ若干の余力は残しているってことだな。
ターンはこっちの番。まだまだ引っくり返せる。オレはDDを振った。出た目は3。
「一反木綿よ、頼んだぞ」
「任せな」
一反木綿は素早く河童に回り込み、尻尾の先を叩き付けた。身軽な割には、鋭く重い一撃だ。河童は11のダメージを受けた。――HP28/63――
オレの所持している妖怪達よりは劣るが、中々見所はある。
「あぁ、いてぇ。あぁ、いてぇべ。さっきより強くなってるべ」
「当たり前だ。何故ならオレは、天才テイマーだからな」
「自分で言って恥ずかしくないべか? 今度はこっちの番だべ」
河童は唐草模様の甲羅を一反木綿に向け、そのままのし掛かった。一反木綿は12のダメージを受け、破れかけた体を自ら引きちぎった。――HP18/54――
「体が破れることなんて、日常茶飯事だぜ。旦那、ご采配を」
一反木綿のガッツは、仲間にしたいくらいだ。オレはこの短い戦闘の中で、そう思っていた。
「一反木綿。お前の言葉に感服した。男になって来い!」
空高く放り投げたDDは、6を示した。またとないチャンスだ。
一反木綿は急旋回しながら、河童に巻き付く。木綿で締め上げられた河童は、5ダメージ、5ダメージ、7ダメージと、ダメージを重ね合計17のダメージを受けた。――HP11/63――
「くそ――っ! くそ――っ! こうなったらもう一度、水鉄砲だべ。もう相撲なんて、やってられないべ」
マズイ。またあの大津波を喰らったら、逃げるのは困難だ。
「行け――っ! 大津波! ん? はれ? はりゃ? 大津波! しまった。まだ引き潮が完全に収まってなかったべ。…………くぅ、こうなったら潔くオラの負けを認めるべ。ほなら、約束通り向こう岸に運んでやるべ」
拍子抜けだ。しかし、どうやら助かったようだ。危ない、危ない……。
「さぁ、皆さんボロい舟ですが、乗るだべ」
「河童よ、宜しく頼む」
「何の何の。オラは強い者には従うだよ」
「調子の良いことを……」
こうしてオレ達は無事三途の川を越え、天狗の里に辿り着いた。
「それでは皆さん、お達者で」
「おう、お前も元気でな」
「ありがとうございます。また三途の川に立ち寄った際は、相撲の相手になって下さいな」
「勿論だ」
河童はニッコリと笑みを浮かべると、亡者が蠢く三途の川を引き返していった。
「さて……ん? 一反木綿。お前は戻らなくていいのか?」
一反木綿は何やらモジモジしている。
「木綿ちゃん。言いたいことがあるならハッキリ言いなさいよ。男でしょ?」
「俺っち……居着きの雷と融合したいぜ」
「それは願ったり叶ったりだ。居着きの雷よ? お前はどうだ?」
オレはカードから、居着きの雷を具現化してやった。
「構わん……」
「よし、決まりだな」
居着きの雷と一反木綿は手を取り合い、光の中に消え去った。代わって現れたのは……。
「我こそは、鬼神と呼ばれた男……"なまはげ"だ。主よ、どうやら融合を重ねたお陰で、ステータスが一新したようだ。基本的ベースは変わらんがな。それより主よ、早く力を試したい。次回の戦闘には是非とも我を」
「うむ。約束しよう」
◇◇◇◇◇◇
一方その頃――。ここは天狗の里――。
「何ぃ? 鬼童子が殺られただと? カラス天狗よ、それは本当か?」
「酒呑童子様、風の噂でそう聞きました」
「うーむ。我輩に楯突く奴がいるってことか。鬼童子の奴に偽物の勾玉を持たせておいて正解だったな。他の奴に奪われたら、鬼骨王様に何を言われるかわからん。ん? 酒はどうした、酒は」
「生憎、もう酒はございません」
「何だと?」
「地獄谷にいる九尾の狐なら持ってるかもしれません」
「九尾か……アイツとはウマが合わないがやむを得ん。カラス天狗よ、お前にこの勾玉を預けておく。我輩が留守の間、頼んだぞ!」
「承知――っ!」
「うむ。では、行ってくる」
酒呑童子は空になった樽を叩き割り、九尾の狐のいる地獄谷へと向かった。




