第十八話 居着きの雷VS鬼童子
渾身の力を込め振ったDDは、酒臭い病室の床を転がる。お雪達は、固唾を飲んでそれを後方で見守った。やがて静止したDDは1の通常攻撃を示した。
「よし、居着きの雷よ。お前の力を見せてやれ」
「御意」
居着きの雷は、特製のバチを手に持ち雷鳴を轟かせる。さすが、融合しただけあり、通常攻撃の雷さえパワーアップしている。
雷はうねりを上げながら、鬼童子の巨体を貫き20のダメージを与えた。――HP116/136――
通常攻撃の雷だけでこれだけのダメージだ。付加攻撃の稲妻は、もっと期待が出来るんじゃないか? オレはそう思った。
「うぃぃ。思ったより、やるじゃねぇか。結構効いたぞ。ならば、今度はワシの番だ」
鬼童子は背丈ほどある金棒を取り出し、力任せに振り回した。居着きの雷はバチで防ぐも、25のダメージを受けた。――HP46/71――
予想はしていたが、凄まじい破壊力だ。居着きの雷は、決して弱くはない。なのに、これ程のダメージだ。
早期決着――やはり、長引かせてはいけないようだ。オレは再度DDを振った。出た目は2。またも通常攻撃だ。
スキル発動を狙いたかったが、贅沢は言えない。ミスが発動するよりはマシだ。
居着きの雷は、軽やかな身のこなしで、鬼童子の肉体にバチを叩き込み20のダメージを与えた。――HP96/136――
まだ足りない――。
オレは焦りにも似た感情を抱き始めた。どう考えても不利。しかし、当の居着きの雷は、余裕の笑みさえ浮かべる。
「何を笑ってやがる。これでも喰らいやがれ!」
鬼童子は酒樽に入った酒を飲み干した後、その酒樽を投げ付けた。居着きの雷はそれを見極め、酒樽をバチで叩き割った。
一段と辺りに、アルコールの匂いが充満する。機転を利かせた居着きの雷は、ダメージ受けない。
「こんなもの避けるまでもない」
「何だと?」
「鬼童子よ、どうやら知能は居着きの雷の方が上のようだな。さぁ、居着きの雷! 攻撃を仕掛けるぞ」
実に頼もしい。圧倒的不利な状況を覆す、居着きの雷の守備。
追い打ちを掛けるように、オレはDDを振った。出た目は5。オレが待ち望んでいた"稲妻"だ。これで一気に勝負を決めたい所だ。
「鬼童子よ。待たせたな。これこそが居着きの雷の必殺技……」
居着きの雷は激しくバチを叩き込み、雷鳴を轟かす。祟りとは比べ物にならないくらいに、電気を帯びる。
居着きの雷は身体中に稲妻をかき集め、鬼童子目掛け一気に放出し40のダメージを与えた。――HP56/136――
「うががが……」
鬼童子は黒コゲになりながらも、辛うじて立っている。
「己れ――っ! 今のは効いたぞ。お前らは馬鹿だ」
「馬鹿力しかないお前が、何を言う?」
「そう言っていられるのも今のうちだ。ワシが馬鹿力だけじゃねぇってとこを見せてやる。ワシ自身コントロール出来ない、取って置きだ」
「ならば、見せてみろ。その取って置きとやらを」
「主よ、挑発はお控え願いたい」
「案ずるな。お前なら勝てる。それにこの勝負早急に決める必要がある。長期戦はこっちが圧倒的に不利だ。居着きの雷よ、わかるな」
「主がそう言うならば……」
「ごちゃごちゃうるさい奴らだ」
鬼童子は拳を握り締め、気合いを入れ始めた。背中から湯気が立ち上ぼり、赤い顔はより一層色濃くなった。
「うぃぃ……。ここからがショータイムだ。楽しんでくれよ。はぁぁぁ――っ!」
鬼童子は目開き、握り締めていた拳を開き衝撃波を放った。しかし、然程勢いはない。ただ単に、埃を巻き上げアルコールの匂いが更に充満しただけだ。ガッカリするにも程がある。
「これがお前の言っていた"取って置き"か? だとしたら、ガッカリだ。失望したぞ!」
「それはどうかな? 後ろを見てみろ!」
「何?」
オレは鬼童子に言われるがまま、後方に視線を向けた。
「お兄ちゃん、大変だよ。二人が……」
真琴を除くお雪と川姫が、顔を赤らめ取っ組み合いをしていたのだ。どうやら、この酒を充満させることで、二人を操ったようだ。
「チッ! 酒に弱いのは二人だけだったか。まぁ、いい。この術はなかなか解けないからな。せいぜい殺し合いでもしてくれ。がははは」
厄介なことになりやがった。こっちだけでも手一杯だと言うのに、バトルに参加していないお雪と川姫に手を掛けるとは。
「川姫、アンタいい加減にしてよ。このフシダラ女」
「何ですって? この冷酷女!」
オレの後方では、女同士の戦いが激化していく。何か方法はないかと模索すると、一つの結論に辿り着いた。
「真琴、お前だけが頼りだ。二人を何とか抑えてくれ」
「ボクに出来るかな?」
「やってもらわなきゃ、困る。こっちも早めにケリを着ける。それまでの間だ」
「わかった。やってみるよ」
予想外の展開――居着きの雷と鬼童子だけのバトルだけでなく、お雪と川姫の壮絶なバトルも始まったのだ。
「さすがに、厳しいな……。居着きの雷よ、早めにケリを着けるぞ!」
「御意」
オレはDDをギュッと握り締めた。




