第百二十八話 究極連携
デスブレイカーは妖しい程に光輝く。それと同様に義経の持つ膝丸も負けじと眩い光を放つ。
今までは妖怪達を操っていた所為か、このような共演じみたことはなかった。だが……今こそ好機。
「義経――っ!」
鬼骨王の懐に素早く潜り込みながら、その名を呼ぶ。
「うむ!」
言葉少なに返答する義経は、鬼骨王の死角を利用し背後に回り込んだ。
その瞬間、思わずオレはニヤリと笑った。この連携の成功に笑ったのではない。
今まで魔王として生きてきたこのオレが、義をもって悪を滅ぼそうとしていることに笑みを浮かべたのだ。
デスブレイカーの鞘に掛けた手は驚くほど心地好く、まるで綿毛のような感覚だ。
「抜刀術――ッ!」
まるで流星のように煌めく閃光は、その硬さを感じない程に滑らかだ。同じく後方からも義経が抜刀術を放つが、清流のような囁きを見せた。
鬼骨王は足元から体勢を崩し、恨めしそうにこちらを見上げた。
鬼骨王に2500ものダメージを与えた。――HP6590/12000――MP40消費110/150――
一方の義経は全力を尽くしたのか、200あるMPを全て失った。やはり、Aランクでは無理があったのだろう。
「……ぐはっ……思い出した。今の一撃で思い出したぞ! 我は黄泉を支配する鬼骨王……。我としたことが、何者かに記憶を飛ばされていたようだ。魔王ダグーマ! 我は貴様を許さんぞ! そして、酒呑童子! 貴様もな!」
やはり、鬼骨王は何者かに記憶をすり替えられていたようだ。だが、記憶を取り戻したところで何も変わらない。コイツを倒すだけだ。
「鬼骨王よ、あの日のカリ……今ここで返してやるぞ!」
「魔族ごときに何が出来るか――っ! とは言えまずは、御礼をせねばな! ふごっ!」
鬼骨王が強く念じると、亡霊と化した妖怪達が義経へと襲い掛かった。
精魂つきた義経は、それを回避する力もなくただただ刻まれていった。
義経は800のダメージを受けた。――HP150/1350――
「義経!」
「かはっ……タクマ殿。某の力はここまで……そなたと戦えたこと誇りに思いますぞ!」
甘寧に続き、義経までも戦闘から離脱した。残るはオレと真琴……それに酒呑童子だけだ。
無意識のうちに肩を落とすオレに真琴は言う。
「お兄ちゃん……ボク達が居るじゃない。今までだってやってこれたんだ。今回だってイケるよ!」
「真琴……そうだな。よし、次はお前の出番だ。思いきり暴れてこい!」
気を取り直して振り上げるDD――それは真琴が持つ最高の技、5の水流烈波であった。
水系の妖怪を経て進化を繰り返した真琴……これはその集大成とも言うべき大技に違いない。
真琴は自分の何倍も背丈のある鬼骨王を見上げながら、静かに息を止め周囲に水を呼び寄せる。
過去の水を使った技とは比べ物にならない程迅速かつ、ダイナミックにかき集め、鬼骨王の心臓目掛けそれを放った。
「水流烈波!」
鬼骨王はサイドステップを駆使しながら、それを回避した。
「甘いな!」
その素早さから想像も出来ないくらいの速さ――真琴の放った水流烈波は誰もいない王座をすり抜けた。
「は、外したか?」
項垂れるオレを余所に、真琴は尚も水流烈波の軌道修正を掛ける。
「まだ、まだ――っ!」
真琴はAI二回行動の特権を活かし、重ね掛けを施したのだ。
新に呼び寄せた水流烈波は鬼骨王の脳天を貫き、先に掛けた水流烈波は肩甲骨を貫いた。
鬼骨王に合計1400のダメージを与えた。――HP5190/12000――合計MP20消費100/150――
「はぁ……はぁ……し、しぶといね」
よくやった真琴――と、褒めてやりたいところだが、まだまだそこまでは至らない。奴を倒して初めて労いの言葉を掛けることが出来るのだ。
「酒呑童子よ、お前も真琴に続け!」
本来なら一言、二言返す酒呑童子だが、この言葉には何も返してこなかった。
不信に思い顔を覗き込むと、心なしか震えているのがわかる。恐らく記憶を取り戻した鬼骨王に臆しているのだろう。
「酒呑童子! 気をしっかりと持て! 何があろうとお前はオレが守る!」
「テ、テイマーよ。我輩は平常心だ。能書きはいい……采配を!」
酒呑童子の奴……強がりを。だが、そこが奴のいいところでもある。
オレは奴の心意気に打たれ、DDをそっと転がした。出た目はまたしても破壊無双――
「御意!」
酒呑童子は鉄球を携え、鬼骨王の正面に立つ。
「酒呑童子、いい度胸だ。ゴミのクセに意気がるなよ!」
ほんの少しの躊躇い……しかし、目で語るオレを見て、酒呑童子は力の限り鉄球を胸元に打ち付けた。
鬼骨王はそれを両手で受け止めるが、酒呑童子の放った鉄球は勢いを殺さずそのまま弾き飛ばした。鬼骨王に800のダメージを与えた。――HP4390/12000――MP15消費60/90――
「フハハハッ! かつての部下に歯向かわれるとは……我も落ちぶれたものだ。ならば纏めて地獄に送ってやろう。この雲外鏡でな!」
懐を探る鬼骨王だったが、雲外鏡は魔方陣から進入した世界で、栄螺鬼が命と引き替えに破壊済みだ。そこにあるはずなどない。
「ない……ない! 雲外鏡がない! 己れ……こうなればリスクはあるが、地獄の灯火を使うしかあるまい……これで全ては終わりだ!」
鬼骨王はそう言うと城の天井を突き破り、龍のような咆哮をあげた。
その咆哮をあげる度、鬼骨城は悲鳴をあげながら崩壊を始めた。
「な、何なんだこれは? 城が崩れるぞ!」
「死に行くものに話す義理はない……もっと戦闘を楽しみたかったが、遊びはここまでだな……さぁ、叫べ! 喚け! 嘆け!」
かつてない恐怖と共に訪れた鬼骨王の“地獄の灯火”。
オレ達は何も対策することが出来ず、呆然とするしか方法がなかった。




