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第百二十七話 闇に溶けて

 鬼骨王は、まるで自我を失ったかのように怒り狂った。オレにDDを振る隙さえ与えてはくれない――。

 そして、後退する義経へと向け、灼熱の炎を撒き散らし反撃に出た。


「義経――っ! 逃げろ!」


 オレの声に素早く反応した義経だったが、あまりに強力な鬼骨王の灼熱の炎は凄まじいガスの臭気と共にその身を飲み込んでいった。


「どぁぁぁ……」


 咄嗟に身構えた義経は、何故か膝丸を投げ捨て灼熱の炎を耐え抜いた。義経は700のダメージを受けた。――HP650/1350――


「義経よ、大丈夫か? しかし、何故膝丸を?」


「タクマ殿……心配には及ばぬ。……大切な膝丸。あれほどの炎を喰らっては、膝丸に申し訳がたたぬ……」


 義経はそう語りながら、放り投げた膝丸を拾い上げた。

 決死の覚悟――それよりも、“膝丸”を守りたいという武士もののふの魂をここに見た。

 こうなると、オレも負けてはいられない――短期決戦で鬼骨王を仕留め、奴自体を苦しめる何かを追求するのだ。


「真琴……行けるな?」


「いつでもいいよ!」


 姿は美しく豹変した真琴だが、何処かあどけなさが残る。かと言って、生半可な気持ちでここに立っているかと言えばそうでもない。

 その瞳の奥は義経と同様に、確固たる意志が感じられた。


「いい返事だ……行くぞ!」


 一人の戦士として、テイマーとして、戦闘を今まで通りこなすのは容易なことではない。恐らくこれは、オレの中で息づく三種の神器の力なのであろう。

 何より、持て余す程の力がそれを証明している。オレ自身も怖いくらいだ。


 DDは重力に逆らうことなく確かな道筋を辿り、6の回復術を示した。

 こうなると回復すべき対象者は、鬼骨王の反撃を喰らった義経になる。


「はぁぁぁ!」


 真琴は両手を組み上げ静かに目を閉じると、義経へと妖気を飛ばした。すると傷付いた義経を包み込み、癒していった。

 義経は300ポイント回復した。――HP950/1350――MP15消費135/150――


「真琴殿……忝ない」


「気にしないで。これもDDの決めた運命だから」


 運命――いい意味の運命ならばいいのだが――


「まだまだ、行くよ!」


 義経への回復を終えた真琴は、直ぐ様体を反転させ鬼骨王へと挑んで行く。

 非力な真琴にとっては、AI二回行動が最大の武器――いや、非力とはもはや言えない。究極進化したことで、攻守のバランスが取れた立派な戦士に仕上がっている。


 真琴は妖艶な笑みを浮かべながら、鬼骨王の肩へと触れた。その瞬間、煙のようなものが立ち込め真琴の体内へと吸収されていった。


「うぅん……まだまだ吸い込みたりないね」


 発動したのは、“精気吸収”。真琴は鬼骨王に400のダメージを与えつつ、体力を奪った。――HP9890/12000――MP15消費120/150――

 しかし、真琴のHPは満タンの為、これ以上吸収は出来なかった。


「真琴、いい働きだ」


「うん、ありがと」


 あの妖艶な雰囲気は消え去り、いつもの真琴に戻る――。真琴も女ということか。


「テイマーよ、今度は我輩の番だ」


「好戦的な輩が多すぎて困る……」


 酒呑童子の望み通りDDを振り上げると、1の破壊無双を示した。

 酒呑童子は鉄球を振り回しながら、果敢に飛び込んで行く。

 待ち受ける鬼骨王は、鋭い眼光を酒呑童子にぶつけながら両手を前に突き出した。

 酒呑童子としては、世話になった長。少しの躊躇いがあってもおかしくないのだが、猪突猛進していった。

 鉄球は鬼骨王の強固な肋を砕きつつ、その巨体を壁に打ち付ける程の破壊力を見せた。鬼骨王に800のダメージを与えた。――HP9090/12000――MP15消費75/90――


 見事に吹き飛ばされた鬼骨王は、不気味な笑みを見せると、何やら妖気を集め出した。


「貴様ら……我に何の恨みがあるというのだ――っ!」


 またもや別人のような言動――しかし、その攻撃力は本物であった。


「冥界の鉄槌を喰らわしてくれるわ!」


 まるで影が横切るような程、一瞬の出来事――不思議と痛みはない。なのに、体からは鮮血が流れ出ていた。

 オレは800のダメージを受けた。――HP2800/3600――


「うぐぁぁ!」


 甘寧にも同様に、冥界の鉄槌が襲ったようだ。甘寧は800のダメージを受けた。――HP590/1390――


「大丈夫か? 甘寧! 無理はするな」


「すまない……タクマ。折角……修行を重ねたったってのにこの様だ。どうやらこの戦い……桁違いみたいだな。残念だが、俺様は離脱させてもらうぜ……」


 いつも強気の甘寧がそう吐露すると、一筋の涙が頬を伝っていくのが見えた。

 そんな甘寧にオレは、何も言わず肩に手を乗せ、お雪達がいる場所へと送り出してやった。

 甘寧はここまで頑張った。あとはオレ達で何とかすればいいだけのこと。

 目には目を――オレはデスブレイカーの鞘を握り締めながら、膝丸に手を掛ける義経とアイコンタクトを取った。

 一か八かの大博打――デスブレイカーと膝丸の共演を遂行するべく、もてる力を開放していった。


 

 


 

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