助太刀無用だ
これは選択肢の答えです。
第百二十六話を読んでいないなら、そちらから読んでください。
「助太刀は無用だ。ここはオレに任せてくれ。義経達は万が一の時のために備えていてくれ」
万が一……考えたくはないものだが、義経達の好意を断った。奴等の実力を信じていないワケじゃない。少なからずオレも、この鬼骨王の言動に違和感を覚えたからなのだ。
「わかりました……タクマ殿がそこまで仰るのならば、某達は待機していましょう」
「ったく……ピンチになったら俺様達も遠慮なく使ってくれよ」
「皆……すまない。その時は遠慮なく頼む。さぁ、真琴、酒呑童子! これが最後だ。行くぞ!」
「任せて!」
「ふん……御意!」
まずは小手調べ――オレが先陣を切って突破口を開く。
デスブレイカーを握り締めた感覚は悪くない。ファーストアタックを決めれば、もう後戻りは出来ないのだ。
「鬼骨王――っ! オレはこの時を待ち望んでいたんだよ。お前のような奴は、黄泉から消えてなくなれ! 聖なる鉄槌!」
「来るか? 相手になろう……」
一段と輝きを増すデスブレイカー。本来、この剣は闇属性だが、オレが人間に転生したことと、三種の神器のお陰で備えられた聖属性。間違いなく鬼骨王には効果覿面の筈だ。
以前より使い勝手がよく、切れ味が増幅されたデスブレイカーは、鬼骨王の喉元へと耳障りな音を奏でながら切り裂いた。
「ぐわはぁぁ……」
足元に伝わる鬼骨王の叫び――鉄臭さを伴う緑色の返り血は、オレの漆黒の鎧に染み込むほど大量なものだった。
鬼骨王に1100のダメージを与えた。――HP10900/12000――MP30消費120/150――
「何だ……大したことないな」
デスブレイカーに付着した血糊を振り払いながら、真琴に対するDDに手を掛けると一瞬目の前が暗くなった。
「うぐっっ……」
脇腹に伝わる鈍痛――僅かながら下唇の横を味気ない血が滴り落ちた。
「貴様のような奴が現れて、我は嬉しいぞ。どうやら、生きる意味を感じ始めたようだ」
鬼骨王の不意打ち――それはその素早さから想像出来ないくらい的確かつ、手痛いものだった。
オレは700のダメージを受けた。――HP2900/3600――
「テイマーよ、大丈夫か? 顔色が優れないようだが……」
「これくらい何とも……」
酒呑童子にそう返したものの、全身に伝わる痺れ――ダメージ以上のものがオレを襲ったようだ。
「ま、真琴……今度はお前の番だ」
軽い目眩を覚えながらも振り上げたDDは、3の通常攻撃を示した。
「お兄ちゃん、暴れてくるね!」
「頼んだぞ……はぁ……はぁ……」
どういうワケだ。この感覚……。過去にも味わったような――。
体力的には問題ないのに襲い掛かる倦怠感。それに加え、冷や汗が頬を伝う始末だ。
「鬼骨王! ボクが相手になってやるよ!」
そんな事態をひた隠し、オレは戦況を見守った。
真琴は期待通りの働きをこなし、鬼骨王の脛へと向け、目が覚めるような一撃をお見舞いした。
鬼骨王に495のダメージを与えた。――HP10405/12000――
「温い……温いわ! 教えてくれ。もっと我に生きているという意味を」
鬼骨王の奴――まるでダメージを欲しているかのような口振り。それはいいが、オレの膝は笑う程に感覚を失い、足腰が立たないまでになっていた。
こんな状況を隠し通すことは、もはや困難。見るに見かねた義経が言い寄る。
「タクマ殿……やはり、某達も」
「義経……心配するな。これくらい何とも!」
そう言った瞬間、あり得ないくらいの衝撃が脳を刺激し、気付けば力一杯義経の喉元を掴み上げていた。
「く、苦しい……」
「テイマーよ! 血迷ったか? 今すぐその手を離せ!」
近くにいるのに遠くに感じる酒呑童子の声――そんなものはどうでもいい。一つの命が消えていくのが、今はとても心地好いのだ。
「タクマ……やめろ!」
力付くでオレを押さえ付ける甘寧達――まるでハエが止まっているかのようだ。
「お前らも死にたいのか?」
聖なる力から闇の力に切り替わったデスブレイカーは、オレに群がる甘寧達を一刀両断した。
「おぉ! なんと素晴らしい!」
「鬼骨王よ。オレは気分がいい……」
「そうか、そうか。我も気分がいいぞ。ならば、もっと地獄を見せ付けようではないか」
失われた理性――鬼骨王の言った意味がわからず、オレは本能的に両手を差し出していた。
「うがぁぁぁ――っ!」
魂が吸い込まれるような感覚――いや、本当に吸い込まれているのであろう。気が付くと、オレの肉体は煙のように消え去り鬼骨王の体の一部として成り立っていた。
「ふははっ! 最高の気分だ! 我は鬼骨王! 今ここに生きている意味を見出だした」
鬼骨王と融合して気付いたことがあった。コイツ自体も何者かに操られていたということを――。だが、今となってはそれを知る術はない。
オレは鬼骨王の中で息づき、黄泉だけでなく魔界も制覇することに生き甲斐を感じ始めていた。
BAD END
残念ながらBADENDです。選択肢を選び直してください。




