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第百二十四話 蜻蛉切の猛将

 閑散とする鬼骨城――風化を遂げ始めた石造りの城内は、見張りの妖怪の姿さえ見えない。余裕とも言うべきか、鬼骨王の悪しき策略とも疑える。


 鬼骨王――出端を挫かれた屈辱は忘れてはいない。

 究極進化を遂げた時に出会った奴は、似て非なるもの。不確かな存在――

 だが今度こそ、その存在を打ち消してやるのだ。


「お雪よ……怖いか? 怖いなら待っててもいいんだぞ?」


 オレの後ろにピッタリと吸い付くように歩くお雪。その心情を察すると、穏やかではないことは確かだ。


「ここまで来て、逃げるなんて出来ないわ。それに……私だって能力(ちから)を奪われたんだもの」


 オレに返すお雪の台詞――わかってはいたが、その口からもう一度聞きたかったのだ。

 そんなやり取りをしながら、長い廊下を隔てた向こう側に辿り着くと、謁見の間へと続く螺旋階段が姿を現した。ここを駆け上がれば、鬼骨王と御対面というわけだ。

 しかし、踊り場へと踏み込むと、以前とは異なる風景が目に飛び込んできたのだ。


「こ、これは?」


 まるで時空の歪み――階段を昇った先に謁見の間はなく、うねりを上げた空間だけがそこにはあった。

 強いて言えば、分裂された空間。強烈な妖気と共に、白骨化が始まった色白い手が手招きする。


「お雪! ここは一端退くぞ!」


 お雪にそう呼び掛けるが、色白い手はオレ達を引き摺り込むようにその空間(・・)へと誘った。




◇◇◇◇◇◇




 やはり、一筋縄ではいかないようだ。引き摺り込まれた場所は、邪馬台国に程近い山林。

 だが、木々は枯れ果て、見るも無惨に薙ぎ倒されていた。


「ここは邪馬台国の近く……卑弥呼は? 義経達は?」


 そう述べるオレ達の前に、待ち構えていた慶次と五分を張るくらいの体格を持った猛将――オレと同じような漆黒の鎧を纏い、兜は下品な程に反り上がった鹿の角ような立物。手には笹穂型の大身槍が握られていた。


「待っていたぞ! 我こそは鬼骨城の門番……本多平八郎忠勝(ほんだへいはちろうただかつ)。お前に恨みはないが、この蜻蛉切(とんぼぎり)を受けてみよ!」


「一つ聞こう……この山林を薙ぎ倒したのは貴様か?」


「だったらどうする?」


「貴様を倒すまでよ」


「笑止!」


 こんな奴に構っている暇はない。早急に、邪馬台国の無事と卑弥呼達の安否を確認したいところだ。


「バトルフォース展開!」


 オレ自体も究極進化を遂げたことで、真琴と酒呑童子のバトルフォース展開への負担も軽減されている。

 それにオレの体内に宿った三種の神器――それは強靭な肉体をオレに授けた。


飛縁魔(真琴) LV40 ランクSS 特性 水吸収 カウンター AI二回行動


HP1850 MP150

攻撃力495

素早さ200


1 クリティカル

2,3 通常攻撃

4 精気吸収(15)

5 水流烈波(10)

6 回復術(15)



真・酒呑童子 LV40 ランクSS 特性 炎吸収 庇う 全体攻撃


HP2110 MP90

攻撃力600

素早さ100


1 破壊無双(15)

2.3.4 通常攻撃

5 灼熱烈破(20)

6 鉄壁の構え(10)


 そして、オレもデスブレイカーの鞘に手を掛け、ステータスを晒した。


タクマ LV50 ランクSS 特性 炎、水、雷軽減 聖属性


HP3600 MP150

攻撃力980

素早さ255


スキル『聖なる鉄槌』(30)『闇の衣』(20)『デスブレイカー乱舞』(20)


 鬼骨王との決戦を前に、自分の力がどれくらいか知る為の小手調べといったところだ。


「真琴、酒呑童子よ。ここはオレ一人でやらせてくれ」


 バトルフォース展開までして二人には悪いが、自分自身の力を試したくなったのだ。


「……お兄ちゃん」


「……真琴、ここはテイマーに任せよう。それに我輩もテイマーの力がどれ程か知りたい」


 酒呑童子の奴……よく言う。だが、最強のテイマーとしては、手懐けた妖怪達に失態は晒せないのだ。


「真琴、酒呑童子よ。戻れ!」


 オレは二人のバトルフォースを解くと、デスブレイカーを鞘から引き抜いた。


「タクマよ、やるんじゃな?」


「あぁ……じいさん、奴のステータスを頼む!」


「うむ……ほれ!」


本多平八郎忠勝 LV45 ランクS 特性 なし


HP2700 MP180

攻撃力450

素早さ180


スキル『背水の陣』


――本多平八郎忠勝……徳川四天王と言われ、異国では敵なしとまで囁かれた猛将。戦において死を恐れることなく、家康の天下取りに貢献したと伝えられている――


「成る程……貴様も最前線を潜り抜けて来たというワケか……」


「貴様も? ふはははっ。笑わせるな。お前のような小わっぱと一緒にされては困る。さぁ、この蜻蛉切をとくと味わうがいい!」


 忠勝はそう返すと、胸の深い位置に蜻蛉切を構えた。

 その眼力は、凍るように冷たい。コイツの言っていることが、ハッタリじゃないことぐらいわかる。だが、オレは今までのオレじゃない。


「行くぞ――っ!」


 言葉では語り合えない――こういう奴には、武を持って語り合うのがベストなのだ。

 狙うは忠勝の左肩。一歩踏み込むと、煌めくデスブレイカーは聖なるオーラを纏いながら鉄槌のように的確に殴打した。

 忠勝は左足を大地にめり込ませながら、深紅の鮮血を撒き散らした。忠勝に1200のダメージを与えた。――HP1500/2700――MP30消費120/150――


「ぐはっ……我が気高い血を……気高い血を――っ!」


 この忠勝という男――まるで、今まで傷を受けたことのないような口振りだ。こういう奴を井の中の蛙というのだ。


「さぁ、お前の力を見せてみろ!」


 メンタル面でのダメージも効果的――オレは敢えて挑発した。これで、慶次や呂布に劣るようだと“異国で敵なし”という図式は崩れ去る。ある意味、いい機会だ。


「減らず口め――っ!」


 忠勝は脇目もせず、一直線に飛び掛かってきた。

 腰を下ろし、低い構えからの一閃突き――見た目によらず正確な突きは、オレの脇腹を捉えた。オレは450のダメージを受けた。――HP3150/3600――


「なかなかやるようだな。敵にしておくには勿体ない……だがな、攻撃とはこうやるんだよ!」


 オレは脇腹に刺さった蜻蛉切を抜き取ると、それを奪い取り忠勝の脇腹に同じく突き刺した。忠勝に980のダメージを与えた。――HP520/2700――


「ぐほぉぉ……」


 忠勝は吐血しながら、両手を地面についた。もはや、戦うまでもない。軍配はオレにある。


「これは返してやる。その腕……なかなかのものだ。さっさと国へ帰るんだな……」


 オレは忠勝に蜻蛉切を返すと、背を向けた。


「……その優しさが命を落とすのだ! 死ねぇぇぇ! 背水の陣――っ!」


 こうなることはわかっていた。戦しかない、奴なりの不器用な生き方なのだろう――。

 忠勝は危険を省みず、オレの懐に飛び込んでこようとしている。残念だが、コイツの命はここで終わり――


――刹那。


「はぁぁぁ! 円明流……抜刀術!」


 何処か懐かしく聞き覚えのあるその声――そこには以前よりも逞しくなった義経の姿があった。

 義経は忠勝に520のダメージを与えた。

 忠勝は断末魔を上げることなく、煙のように消え去り時空の歪みを作り出した。


「義経……久しいな」


「タクマ殿もご無事で……」


「どうやら腕を上げたようだな」


「いやいや、この程度でお恥ずかしい……」


 赤面する義経の背後には、弁慶、そして、川姫、卑弥呼の姿があった。


「卑弥呼よ、邪馬台国は無事か?」


「ふむ。こやつらの活躍で守られておる」


 どうやら弁慶も川姫も、過酷な修行で腕を上げたようだ。


「タクマさん、私もお供します」


「タクマ殿、某達も……」


「ダメと言っても、ついてくるんだろ?」


 オレの返した言葉に、一同は声を上げて笑った。久し振りの笑顔――


「覚悟はいいな? 行くぞ!」


 忠勝が残した時空の歪み――オレ達は一人、また一人と飛び込んだ。



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