第百二十一話 究極進化
陽光は遍く大地を覆う――オレは毅然たる態度を示し、三種の神器を満遍なくそっと目の前に置いた。
誰に言われたでもないが、自然とこうすることが最善だと感じたのだ。
「うぅ……お兄ちゃん……」
真琴の象徴である長い髪が、風もないのに仄かに揺れる――体内からは湯気のように青く染まるオーラが溢れ、蜷局を巻きながら真琴を包み込んだ。
「うぐっ……あがぁぁ!」
その横では毒に必死で抵抗する酒呑童子――奴もまた真琴と同様に体内から黄色いオーラが溢れだし、その身を包み込んだ。
混沌とした黄泉の最果て……二つの生命体から、強靭な肉体が今産み出されようとしている。
「さぁ、見せてみな!」
慶次は大剣の刃先を真琴と酒呑童子に向け、笑みを浮かべる。
「はぁぁぁ――っ!」
一気に開放される真琴の妖気――それと同時に纏わりついていた青いオーラが、体の一部のように定着した。
「お、お前……本当に真琴なのか?」
思わず目を疑う光景――金糸に楓が刺繍された異国の着物に、弁慶と同じく行人包された紫の頭巾……それは言葉では言い表せないほど美しい姿だった。
「お兄ちゃん……力が漲ってくるよ。どうやら……究極進化したみたい……」
真琴の言っていることは、強ち間違ったものではなかった。傍に居るだけで、揺るぎない強さを感じる。以前の真琴と違うのは一目瞭然だ。
「真琴の奴……やりおったわい」
「へへっ……磯女改め、飛縁魔推参!」
「タクマ、何をしておる。早くバトルフォースを展開してみせんか」
「そ、そうだな」
あまりの強さと美しさ……オレは真琴の魅力にしばし心を奪われていた。
「バトルフォース展開!」
飛縁魔(真琴) LV40 ランクSS 特性 水吸収 カウンター AI二回行動
HP1850 MP150
攻撃力495
素早さ200
1 クリティカル
2,3 通常攻撃
4 精気吸収(15)
5 水流烈波(10)
6 回復術(15)
SSランクは鬼骨王のみだったはず――それがここに今一人誕生したのだ。
「さぁ、タクマ。掛かってきな!」
「お望み通りやってやるさ。真琴! 頼むぞ!」
DDを振り上げると、それは2の通常攻撃を示した。試運転には丁度いい。
「手加減はなしだよ!」
「望む所だ!」
慶次は大剣を構え、防御に徹する。しかし、究極進化した真琴の前では、そんなものは何の意味もなさなかった。
慶次は勢いよく吹き飛ばされ、祠の祭壇に体を打ち付けられた。
慶次に495のダメージを与えた。――HP???/???――
「つ、強くなったねぇ」
埃まみれになった慶次は、瓦礫を払いながら笑顔さえ見せる。
「あれほどのダメージを喰らって、何故笑っていられる?」
ステータスが確認出来ないことといい、ダメージを受けていながらこの表情――オレは疑問を投げ掛けた。
「代わりに私が説明しよう」
呂布が慶次に手を貸しながら話す。
「さっきも言ったが、私達は一度死んだ身。妖魔と違って痛みを感じない……言うなれば死人。つまり、永遠に死なない……その代わり、常に悪夢に悩まされているのだ」
「悪夢だと? それから開放される術はないのか?」
「ないこともない……。三種の神器――つまりタクマ殿達が持っているそれがあれば開放される」
「タクマ……いっそのこと助けてあげれば?」
慶次と呂布の事情を知ったお雪が、身を乗り出す。
「そうだな……開放してやるぜ!」
オレがそう言うも、呂布は渋い顔を見せた。
「気持ちは嬉しいが、断る。我らが運命は究極進化を手助けすること。罷り通らん……それより、酒呑童子と栄螺鬼の究極進化がまだであろう?」
これは何か裏があるとオレは踏んだ。第一、その“悪夢”が何なのかを呂布は語ろうとしなかったのだ。
「……わかった」
やむを得ない返答……今、優先すべきことは残りの酒呑童子と栄螺鬼の究極進化。
会話が途切れると、酒呑童子が毒から開放され雄叫びを上げた。
「ぐぁぁぁ! テ、テイマーよ。待たせたな。我輩……地獄から生還したぞ!」
真琴と同様にオーラが肉体の一部になった酒呑童子。折れた角は修復され、新たな武器として身の丈と同等の大きさの鉄球が備えられていた。
鉄球には禍々しい棘が幾つあり、こんなもので攻撃を受けたら大概の妖怪は即死するだろう。
「酒呑童子よ。待っていぞ」
「な~に、ちょっとばかり寄り道をしたまで。さぁ、バトルフォースを展開するのだ」
「あぁ……」
真・酒呑童子 LV40 ランクSS 特性 炎吸収 庇う 全体攻撃
HP2110 MP90
攻撃力600
素早さ100
1 破壊無双(15)
2.3.4 通常攻撃
5 灼熱烈破(20)
6 鉄壁の構え(10)
新たな酒呑童子の門出――オレがDDを振り上げると、4の通常攻撃を示した。
「御意!」
大地にめり込む程の鉄球を酒呑童子は軽々と振り回し、慶次と呂布に狙いを定める。その風圧だけで昏倒しそなほど。
慶次と呂布は受け止める暇もなく、鉄球の餌食となった。
「うぐっ……見事だ」
流血しながも立ち上がる呂布。痛みがないとは言え、その姿は痛々しい。
遅れて慶次も立ち上がり、酒呑童子の圧倒的破壊力を讃えた。
残るは栄螺鬼の究極進化――それを前に、呂布と慶次は再び魔方陣の前に体を向けた。




