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王子様はゴミ屋敷の引きこもり住人  作者: 加阪あおか
第四章:私がいたいと思う居場所
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大切な存在

これはフォザリアが船底で寝息をたて始めた頃の時間の話です。

(一体どうしてあいつはいつも無茶ばかりするんだ!今度は奴隷になっただと、ふざけるのもたいがいにしろって言うんだ)


ルカルナは久しぶりに心の底から込みあがってくる怒りを覚えていた。それと同時に沸き起こるいいようのうない不安が押し寄せていた。ルカルナはいてもたってもいられなかった。すぐにでも城を飛び出して助けに行きたい気持ちを必死に抑えていた。

「くそ!」


物に当たりながらリムルスの戻るのを待っていた。


「殿下、サザンクラース国への船も今からですとちょうど港に馬で向かうとあるそうです。到着は明日の昼前になるそうですが行けそうです」


「そうか、じゃあ港へ急ぐぞ!」


ルカルナがすぐに屋敷を出ようとした時、サルデーニャが行く手を遮った。


「フォザリアがサザンクラースへ奴隷になって連れて行かれたって聞いたんだけど本当なの?」


「姉上、今忙しいんです。邪魔しないでください」

「待ちなさい、私の質問に答えなさい!」


入り口に立って動こうとしないしないサルデーニャにルカルナはイライラしながら睨みつけながら答えた。


「本当ですよ。但し連れて行かれたんじゃなくて自分からついて行ったようですけどね。僕は今から行って連れ戻してきますから失礼します」


サルデーニャは頭をさげて強引にサルデーニャの横をすり抜けて屋敷を出て行こうとしたルカルナの肩を再び掴んだ。


「何、あの子自分から奴隷になりに行ったの?じゃあとうとうあなたから逃げたくてサザンクラース国に逃亡したの?」


「姉上この非常時に冗談は止めてください。そんなわけないじゃないですか」


本気で怒りだしたルカルナにサルデーニャはケラケラと笑いだした。


「冗談じゃない、ああお腹痛いわ」


「僕は忙しいんです。いまからサザンクラース国に行かないといけませんから」

「あら連れ戻しに行くの?」


「当たり前でしょ、間違いとはいえ奴隷にされて競売にでもかけられてどこかに連れて行かれでもしたらそれこそ取り返しがつかなくなりますからね。サザンクラース国の港でなんとか確保しないと、今から港に行って船でむかうんですよ」


サルデーニャの横をすり抜けて屋敷を出て行こうとするルカルナにサルデーニャが言った。


「もっと冷静になりなさいお馬鹿さん。大体お昼に既に出航している船を夕刻出航する船で追いつけるわけないじゃない。追いつける可能性があるとすれば陸路しかないでしょ」


「そんなこと今更言われなくてもわかってますよ。ですが、サザンクラースに行くにはローデリアを通らなければならないんですよ。あそこは事前に申請をしないと誰であれ国境は通過できないのは姉上でも知っているでしょ。今は悠長に許可を待っている時間はないんですよ」


そう言ったルカルナにサルデーニャは懐から一枚の紙を取り出した。


「これな~んだ」


その紙を見たルカルナの顔が一瞬で変わった。その紙を奪おうとしたルカルナにニヤリとして言った。


「お姉様に感謝なさい」

「恩にきる姉上」


そう言ってサルデーニャからその紙を奪って走り出そうとしたルカルナに向かって言った。


「待ちなさい、こっちも持って行きなさい。サザンクラース国への入国許可証よ。まったく久々にサルジュの所に遊びに行こうと思っていたのに、フォザリアを捕まえたらきちんと言い聞かせなさいよ。あまり心配させないでってね。お土産楽しみにしているわよ」


そういうとサルデーニャは二枚目の通交許可書もルカルナに渡して言った。ルカルナはサルデーニャを抱きしめてその許可証を受け取ると屋敷を飛び出して行った。そんな弟の後ろ姿を見送りながら笑みを浮かべていたサルデーニャにジルが近づいて言った。


「俺と離れていた間に君もずいぶん人間らしくなったんだね」

「あら何が言いたいのジル」


「俺の知っているサルデーニャ王女は自分の楽しみを他人に譲るなんてことは決してしない人間だったからね。あの通行許可書は俺達の仲直り旅行に使うつもりだったんじゃないのかい」


「あらなんのこと、こんなお腹で旅行なんていくはずないじゃない」


「そういう事にしておいてあげますかな。ではお姫様、部屋に戻ってマッサージでもさせていただきましょうか?」


ジルはサルデーニャの腰に手をあてて愛する妻に向かって微笑みかけた。


「あああっせっかく安定期に入ったからサルジュが自慢していた温泉施設に行ってゆっくりするつもりだったんだけどな。だけどあの子にまた引きこもられても面倒だし、それに、私のフォザリアをサザンクラース国に取られるのは悔しいじゃない」


「だけど、あの報告書はまだ彼女に見せてないんじゃなかったか?」


「そうなのよね、彼女の驚く顔を一番に見るつもりだったのに残念だわ。この目で見たかったけど仕方ないからサルジュに送ることにしたわ。明日の夕刻には届くでしょう」


「やっぱり、この国で最強なのは君だったんだな。俺は最強の奥さんを捕まえたんだな」

「あらなんの事かしら」

「なんでもないよ、さっ我々は神に祈ろうじゃないか、全てうまく行くことを」

「そうね、そうしましょ」


二人はほほ笑みながら部屋へと戻って行った。サルデーニャは窓の外に見えた王宮を出て行こうとしているルカルナに視線を向けながら呟いた。


「必ず間に合わせるのよ、あの子とあなたの未来の為にね。そしてこの国の未来の為にあの子を必ず取り戻すのよ」


そしてやがて外は真っ赤な太陽が西の地平線へと沈もうとしていた。


こうしてルカルナの長い夜が始まったのだ。








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