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王子様はゴミ屋敷の引きこもり住人  作者: 加阪あおか
第四章:私がいたいと思う居場所
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再会③



その頃、キュナは路地裏を出てある場所に向かって走っていた。


「すっすみません。王都まで大至急行ってもらうにはいくらかかりますか?」


キュナが向かったのは乗合馬車がたくさん集まっている広場だった。帰りはここから乗合馬車で帰るのだと、早朝来た時にフォザリアから聞いていたのだ。だが、乗合馬車が出るのはまだ時間が先で急いで向かうわけもなくつくのは夕方になってしまうのだ。それを事前に聞いていたキュナは乗合馬車ではなく、急ぎの用事で馬単独で配達してくれる急ぎ便のある事務所に駆け込んだ。


「急ぎの荷物かい?」


建物の中で葉巻を吸っていた男がキュナの姿をみて、葉巻を灰皿に捨てると聞き返してきた。


「いえ、私を一番早い方法で王都の入り口まで運んでもらいたいんです」


キュナはそこからならビゴーラが住む屋敷まで走って行くとすぐだと聞いていたのだ。というのも、フォザリアが意識を失って倒れた時にビゴーラからもし何かフォザリアが無茶したり倒れた時は遠慮なく知らせに来るようにと、ビゴーラが住んでいる家の住所が書いた紙を渡されていたのだ。まだ行ったことはないが今、頼れる知り合いはビゴーラ以外キュナには思いつかなかった。


(この港の役所に私が駆け込んだって誰も相手にしてもらえないに決まってる。あの奴隷船はサザンクラース国に行くって追いかけてきていた男たちが言ってた。今から戻っても船が出た後かも知れないけど、何とか追いかけてくれるかもしれない、だって・・・だってあの人ならきっと)


震える手をキュッと握りしめながら言った。その切羽つまった様子のキュナをみた男が立ち上がりバタバタと何やら用意をしながら言った。


「お嬢ちゃん、金はあるのか?馬車じゃなく家で一番早い馬に二人乗りでいいなら行ってやるぜ。ただし5ルーテン銀貨だ」


「それでお願いします。とりあえず前金として2ルーテン銀貨でいいですか?」

「ああ上等だ」


キュナはそれを聞くと迷わず懐に入れていた巾着袋の中の財布から有り金全部の2ルーテン銀貨を男に支払った。そのお金はキュナがもらった今までのお給料でコツコツためたお給料だった。キュナはいつも何があるかわからないからと、まとまった金額を懐に忍ばせていた。キュナにとって2ルーテン銀貨は大金だった。だが迷っている時間はなかった。


キュナが2ルーテン銀貨を男に渡すと男はそれを受け取ると既に準備を済ませ、キュナについてくるように合図し表に飛び出した。


キュナは男が用意してきた早馬の男の後ろに乗り一路王都に向かった。キュナが唯一助けられるであろうその人物に助けを求める為に



キュナが王都についたのはお昼を少し過ぎた時間だった。時間にしてかなりの速さった。男は恐らく一番早い馬を用意してくれたのだろう。王都の入り口についたキュナは馬から降りると、申し訳なさそうに頭をさげた。


「ごっごめんなさい、あの今持ち合わせがないんです。一緒に私の家まで来ていただけましたら残りの料金を払いますから」


そう言ったキュナに男は大きな笑い声をあげたかと思うと、再び馬にまたがると言った。


「ああ、気にするな。お前さん何か急いでるんだろ、早く行きな!半分は港に行く用事がある奴を捕まえて支払ってもらうからよ」


「だけど・・・」


キュナがそれでは申し訳がないと動こうとしないのをみた男は頭をかきながらキュナに言った。


「じゃあ、また港にくる時があったら半分を払ってくれたらいいからよ」


男はそういうと右手を上げると、すぐに都の中へと馬を走らせて去って行ってしまった。キュナは大きく去って行く男に頭をさげた。そして急いでビゴーラの家の住所が書かれてある場所に向かうことにした。


「ハアハア!ロートン通り六番地、確かここら辺だったと思うんだけどな」


キュナは紙に書かれてある住所の辺りまで全力疾走で向かった。だが目の前にあるのは大きなお屋敷の壁がずっと続いているばかりだった。


「ここら辺は貴族街だと思うんだけど、こんな所に住んでるのかな・・・」


キュナは走りながら周りをキョロキョロしながら向かった。そして紙に書いている場所につき、何度も紙を確認して茫然とした。確かに住所があっているが、そこは貴族のお屋敷だったのだ。キュナは間違いないか何度も確かめたが間違ってはいないようだった。意を決して門についてある呼び鈴を鳴らした。すると、使用人らしき者が玄関から出てきた。


「何か用かな」


キュナはドキドキしながらビゴーラからもらった紙を見せながら言った。


「あっあの、私この少し行った先のフォザリアの雑貨店で働いているキュナっていいます。あの・・・ここにビゴーラさんって方はいますか?」


出てきた使用人はジロジロとキュナを見ながらキュナが差し出した紙をみた使用人が急に笑顔になって答えた。


「ああ、フォザリア雑貨店の方ですか。申し訳ありません。旦那様も奥様も本日は宮殿の方に行っておりまして留守なのですが、急ぎの御用でしたら王宮の裏門に行かれてはいかがですか?あっ少々お待ちを」


そう言って執事らしき男はキュナにビゴーラからもらった紙を返すと、走って館の中に戻るとすぐに封筒を手渡した。


「ここに急ぎのご用事がある旨を書いてありますので門番の方にお渡しください。バロッサム家の家紋印を押してありますので確実にビゴーラ奥様の元に届くと思いますので、馬車をご用意いたしましょうか?」


「いえ、走って行ってもそんなに時間がかかりませんから。ありがとうございました」


キュナはその封筒を受け取るとすぐの走り出した。馬車を用意してもらう間待つ時間も惜しかったのだ。走って行っても王宮の裏門までならここからだったらそんなに距離はないからだ。



「あのすみません、ここに勤めている騎士のリアムスさんか料理人のビゴーラさんにあいたいんですけど、呼び出してもらうことってできますか?」


バロッサム邸から全速力で走ってきたキュナは荒い息遣いのまま、執事さんから渡された封筒を門番に手渡し言った。すると門番はすぐに対応してくれた。


息を整えながら待っていると、すぐにビゴーラが裏門に走ってきた。そしてキュナをみて駆け寄った。


「キュナ、どうしたんだい?今日はフォザリアと港まで行くって言っていなかったかい?」


「あっビゴーラさんどうしよう。大変なんです」


ビゴーラの顔を見るなり腰が抜けたようにその場にすわり込んだキュナを支えながらビゴーラがもう一度質問した。


「何かフォザリアの身に起きたのかい?」


キュナは一連の事をビゴーラに説明した。するとそれを聞いたビゴーラは青い顔をしてキュナに言った。


「あらかたの事情はわかったよ。ここで待ってな。すぐに戻ってくるから」


ビゴーラが宮殿の方に消えるとキュナは門の端により、その場に座りこむと祈るように目をつぶって待った。その時、大通りから豪華な馬車が門の前に到着した。裏門に現れたその馬車の窓からチラリと視界に入った中の人物に心当たりがあった。キュナは無我夢中でその馬車に駆け寄った。しかし、門番と馬車を警備していた騎士に取り押さえられた。


「おい、何をしている」


とらえられながら、キュナは声を限りに叫んだ。


「ルーカスさん、ルーカスさんですよね。お願い助けて、フォザリア店長が、店長が!」


何とか馬車まで行こうともがきながらも声を限りに叫び続けた。その声が馬車の中の人物に届いた。馬車から降りてきたのは正真正銘のルカルナだった。ルカルナはキュナの顔を見るなり、騎士たちにキュナを離すように命じた。自由になったキュナはルカルナに近づくと叫んだ。


「ルーカスさん、お願い助けて、フォザリア店長が友達を助けるのだと言って奴隷商人の馬車にみずから乗り込んでしまったんです。奴隷商船に乗せられてしまったかも知れないんです。お願いします。助けて下さい」


「なんだってどうして奴隷商人の所なんかに・・・とにかく、一緒に馬車に乗れ」

「あの、今ビゴーラさんに伝えて待ってるんです」

「そうか、いいから乗れ」


ルカルナは門番に何か命じると、キュナを馬車の中に入れ、王宮の中へと馬車を走らせた。



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