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王子様はゴミ屋敷の引きこもり住人  作者: 加阪あおか
第三章:大切なもの
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平凡な日常①

仮面舞踏会の翌朝、フォザリアは再びローザンやマルザに仕事依頼をお願いすべくローザンの家に来ていた。


「ローザンさん、マルザさん、実は服を着た招き猫の制作依頼が大量にきているのですが、お時間がありましたら引き続き衣装の仕事を手伝ってくださいませんか?」


フォザリアがいうとお二人の顔が急に笑顔に変わるのがわかった。


「本当ですか?」


「ええ、今は頂いている注文を仕上げるのに時間がかかりそうなのでまだ店はあけられないと思いますが、今頂いている注文が落ち着いたら布で作った小物類を中心に可愛い雑貨のお店を再び開こうかと思っているんです。働いてくれるとありがたいのですけれど、お給料は六日ごとで、お給料がでた翌日は一日休みというのでどうでしょうか?」


ローザンとマルザは顔を見合わせて頷き合うとマルザが返事をした。


「ありがとうございます。実は針子の仕事が中々決まらなくて、是非させてくださいませ」


「私は、午前中だけ働かせてもらってもかまいませんかねえ、お給料は半分で構いませんから。午後からは友達とおしゃべりしたりもしたいんでね」


そういうローザンにフォザリアは笑顔で頭をさげた。


「それでかまいませんよ。お体が辛い時は言ってくださいね。ああ・・・よかった。では明日からお願いいたします」


「こちらこそ、こんな老いぼれにまで仕事っていう張り合いを貰ってありがとうございます」


ローザンはもう一度頭をさげて礼を言った。

フォザリアがそして店に戻ろうとした時、ローザンが思い出したようにフォザリアを引き留め言った。


「あっそうそうフォザリアさん、実はこの通りから少し行った先に教会があるんですけど、その教会の祈りの会に昨日出席したんですけどね、読み書き教室を開いてくれるって言っていたことを神父様に話したら、教会を提供するから他の子どもたちにも教えてもらえないか頼んでくれないかって言われたんだけどね。どうだろうかねえ・・・」


「あらいいんですか?読み書きや計算ができる子どもたちが増えることはいい事ですもんね。教会なら多くの人がはいりますものね。早速教会に行って神父様に会ってきます」


「そう言ってもらえると助かるよ。私やマルザはかろうじて簡単な読み書きぐらいはできるけど、大人でも読み書きできない連中が多いからね。せめて子どもには読み書きと計算はできるようにさせてあげたいと思っていても誰かに習わせる金銭的余裕もないし、中々教えるのも時間もないしね」


最近気づいたことだが、このローザンはこの商店街ではかなり顔が広いらしかった。フォザリアはさっそく店に戻る前に反対方向の路地を曲がった先にある教会に向かった。


フォザリアは教会につくと、早速教会の中に入った。フォザリアが育った孤児の施設は教会と併設されていた為に、教会は見慣れた場所だった。ただ、この世界の神様には一度会っているせいか、どれほどすごい方であったとしても、ただの知り合いのお兄さんという印象でしかなく、神として崇めることはできずにいた。


(大体神様なんて忙しいんだもの、いちいち人間一人一人の言い分や願いなんか聞いてくれないわよね。特別なことでもない限りは・・・自分で何とかしなきゃ、神様にお願いしただけじゃいい結果になんてなるわけないもの)


フォザリアはどこか冷めた気持ちで目の前の見たことのある神様の像を眺めていた。


「おや初めてこられる人かな」


フォザリアが神様の像を何気なしに見上げていると背後から声が聞こえてきた為慌てて振り向き謝罪をした。


「あっすみません。勝手に入ってしまいました」


「いやいやここは教会、いつでも扉は開かれておりますよ。さて今日は神に懺悔ですかな、それとも願いごとですかな」


「あっいえ、実はローザンさんからお聞きしたのですが、子どもたちに読み書きを教えるのと引き換えに場所をこちらの教会が貸してくださるとお聞きしたのですが」


「ああ~!あなたですか?お若いのに店を切り盛りしながら恵まれない子どもたちをやとってその従業員の子達に読み書きを教えてあげようとしていなさる方というのは」


「初めまして、フォザリアと申します」


「ドドルです。実は私も常々どんなに貧しくても読み書きは重要だと思っているのですが、どう教えればいいのか見当もつかなくて、それでローザンさんから話を聞いて、ここで他の子達にも一緒に教えていただけないかと思ったしだいなんですよ。こちらからお願いに行こうと思っていたところなんですよ」


神父様がフォザリアにいうと、フォザリアは笑顔で答えた。


「読み書きの方は、実は絵本を譲っていただける貴族の私の知り合いの子がぜひ人に教えてみたいっていう子がいるのでその子に頼もうかと思っているんです。きちんと家庭教師から教育を受けている子ですので読み書きは完璧なんです。簡単な文字を読み書きできるような練習をする程度の事なのですが、それでもよろしければ場所を変更してこちらで一緒に楽しく文字を一人でも多くの子ども達に教えてあげられたらいいと思うのですが、ここでするならその子の警護の為に数人の護衛の大人の人達も教会内に入ることになると思うのですがよろしいでしょうか?あっ一応私の商売上の知り合いのご子息ってことで、もちろん貴族の子というのは極秘にしていただきたいのですが」


「そうですか、きちんと教育を受けられた貴族のご子息から教わるのでしたら、すごいことですね」


神父様は多少の驚きの顔を見せたがすぐに大きく頷きながら言った。それを見たフォザリアは更に付け加えた。


「あの本当にこの場所を無償でお借りできるんですよね」

「はい、お願いしているのはこちらですから」


「それでは後日また、詳しい日程が決まりましたらご連絡いたします。働いている子達もいるでしょうから、仕事が始まる前とかの方がいいかもしれませんね。最近は夜明けが早いですし、そうだ!みんなが食べられるような大鍋に具沢山のスープでも用意して持ってきます」


フォザリアの提案にドドル神父も大賛成の様子だった。


「何から何までありがとうございます。お椀などは炊き出し用のがありますからこちらで用意いたします」


フォザリアはそれで了承し、細かい打ち合わせは後日ということで神父様との話を切り上げた。

孤児として生きてきたフォザリアにとって、朝食にありつけるということがどれだけありがたいか身に染みていたからだ。毎日となると負担がかかるが、たまになら問題ないはずだ。今は幸いにも資金がある。できるうちはボランティア活動をして自分のような孤児やお腹を空かせた子どもたちがひと時でも満足できる日を与えてあげたいと思っていたのだ。


フォザリアは満足したような表情で教会を後にした。その後、場所が教会になったことで、後日、その報告をロンダに伝えに行くと、その話を聞いたルカルナが勉強の後の炊き出しは王宮が用意すると申し出てくれ、結局、勉強の後に教会の外で炊き出しが行われることが決まった。それに伴い、勉強したいと申し出る子どもたちがかなりの数に膨れ上がり、100人あまりの希望者が集まることになった。ルカルナはその子どもたち一人一人に小さな黒板とチョークを用意してくれ、国で初めての平民の為の学びの場の最初のモデルケースがスタートすることになった。

もちろん、大勢の人の前で教師として教えることが決まったため、興奮気味でしばらくウキウキのロンダであった。

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