王宮からの手紙③
サルデーニャ王女との話の後、ルカルナは父親である国王に会うためフォザリアとは別行動をすることになった。フォザリアはロンダの館に行った後は一人で店に戻ることになった。
ロンダが待つ館に向かったフォザリアはロンダから大歓迎を受けた。
「フォザリア、待っていたんだよ。ねえ、おいしいお菓子も用意したから都の生活の様子とか聞かせてよ」
ロンダは自分の部屋の机のテーブルの上に、たくさんの本を積み上げ、更に本棚の中から数冊取り出し手に持ちながらフォザリアを部屋へ迎え入れた。
「ありがとうございます。ですが、お店を放り出してきているので早く戻らなくてはいけないんです」
「そうなんだ、つまんないな」
ロンダは明らかに肩を落としてがっかりした様子を見せるとソファーに腰をおろした。
「あの早速なのですが、お願いしていた物ありましたでしょうか?」
フォザリアは部屋に入って入り口で立ったままの姿勢でたずねた。
「うん、あるよ。僕にはもう必要がないからあげてもいいんだけど、条件があるんだ」
ロンダは目の前に積み上げている本に視線を向けながら言った。
「えっ、いえ、頂くなんてできません。しばらくの間お借りするだけでいいんです。時間を見つけて紙に書き写そうかと思っていますから」
「いいんだよ、これらは僕本当に要らないし、母上も僕の好きに処分していいって前から言ってたしね。だけど、あげるにしても条件があるんだよ」
「そうですよね。いただけるのでしたらありがたいですけれど、でも・・・あの、それで条件というのはどのようなことでしょうか?」
フォザリアがたずねると、ロンダが積みあげた本がたくさん置いてあるテーブルの端に置いてあった紙をピオレが掴み、入り口でまだ立ったままのフォザリアにその紙を差し出した。
「これは?」
「簡単にいうと、フォザリアに本を譲り渡すって書いた書類だよ。本の最後には王宮の印が押されているからね。後々色々盗品とか疑われたらフォザリアが大変でしょ。こういうことはきちんとした方がいいらしいから、後で別の誰かから指摘を受けてもめてもいけないでしょ。本は貴重品だからさ」
「わかりました。当然のことですね」
フォザリアはその書類の文に目を通し始めた。
「そうですね、本自体が元々高額ですし、無償でだなんて思っていません。私にできることでしたらさせていただきます。ですがこの条件の要綱に書かれているロンダ様の参加とはどういうことですか?」
「そのままの意味だよ、フォザリアの店の子達にこの本を使って文字を教えるんでしょ。その時は僕も参加させてほしいんだ」
「どうしてですか?」
「うん…まっ簡単に言えば暇つぶしかな。僕が学園に入学するのは12歳になってからだし、最近退屈なんだよね。貴族の子達も親に連れられて遊びにくるんだけど、話していてもつまんないんだよね。だからさ、僕が誰なのか知らない子達と僕の身分を隠して話してみたいんだよね。僕と歳が近い子とかいないの?」
「いますよ、そうですね・・・ロンダ様さえよけれえば私は問題ありませんが、都にでるということに関しては警備上は問題はないんですか?サルデーニャ様の了承を得ませんと」
そういいながらピオレの方を見て言った。
「それなら大丈夫です。このたび月に一度、社会勉強にと都の視察の時間を設けることになりまして、その際に訪問させていただく予定にしておりますし、サルデーニャ様の了承は得られると思いますので、多少の護衛は増えるかと思いますが、護衛の騎士たちも一般人に悟られないように変装をしての護衛になると思いますので、警備に関しては問題ございません」
「そうですか、それでは私の方は問題ありません。お店の定休日に子どもたちに文字を教えようかと思ってますので、その日に合わせて子どもたちに読み書きの指導をお願い致します。その日は定休日にいたしますので」
フォザリアはその書類を受け取ると、そこに自分の名前をサインした。
「これでいいでしょうか?」
フォザリアは署名した紙をピオレに渡し、ピオレはその書類を確認した。
「確かに」
そういうとその紙をロンダに手渡し、ロンダはそれを確認して、目の前にあるもう一枚の方の紙をピオレに渡すと、ピオレはそれをフォザリアに渡した。フォゼリアはその紙を受け取ると、内容に目を通してそれを鞄の中にしまった。
「じゃあ楽しみにしてるね」
ロンダはご機嫌で言うと、机にのせた本を箱に詰め始めた。
「次の視察は舞踏会の後だから、また近づいたら連絡するってことでいい?」
「はいかしこまりました。決まりましたら、お店は定休日にしてお待ちしております」
「了解、この本はその時に持って行ってあげるよ。そうだ黒板も用意しておいてあげるよ。僕が先生になるから」
「了解しました。いろいろありがとうございます」
フォザリアはもう一度頭をさげた。
「それはそうと、ルカルナ叔父様もうすぐこっちに戻ってくるらしいって聞いたけど本当なの?」
ロンダが思い出したかのように本を箱に詰めながら言いだした。
「えっ?」
立ち上がっていたフォザリアが驚いて聞き返した。
「そうなんですか?」
「あれ今日はその為に戻ってきたんじゃないの?」
ロンダもフォザリアの反応を見て驚いている様子だった。
「すみません、今日はサルデーニャ様にお茶会で使用する商品についての商談に呼ばれてきただけなんです。でもそうですよね、ルカルナ様の元々の作品もほとんど完売していますし、そうですか、そろそろかなとは思っていたんですけど。じゃあ、私は店に戻りますからありがとうございました」
フォザリアは心なしか動揺しているようだった。
(そうよね、ルカルナ様は期間限定で手伝ってくれていただけ、今まで当たり前のように生活していたけど当たり前じゃないんだ。ビゴーラさんにもずっと頼っていたけど、私が料理作りもしなきゃいけなくなるんだ。この世界で私にも作れる食材あるかしら、私、ビゴーラさんのような料理は作れそうにないしなあ・・クッキー販売も中止だ、何か考えなきゃな・・・今は私一人じゃないもんね、しっかりしなきゃ・・・サルデーニャ様のご注文の品もさっそく準備に取りかからなきゃいけないし、明日から大変だな)
フォザリアはそんなことを考えていたが、店にどうやって帰ったのか記憶になかった。その日遅くにルカルナも戻ってきたようだったが、朝、顔を合わせたルカルナはいつものルカルナだった。フォザリアはいつ王宮に戻るのかを聞き出す勇気が持てずに、いつもの忙しい一日が始まった。




