運動会の準備は大変
サルデーニャ王女に運動の会の提案をしてから翌日の夕方、料理人のボンゴが大量のトトムムを持って王宮に戻ってきた。
「いやあ、ばあちゃんや兄貴に色々聞かれたけど、あのお手玉、姪っ子がすごく喜んでな。あんな嬉しそうな姪っ子は久しぶりにみたよ。ありがとうな。まあ、本来なら焼却処分するやつだからな、テマが省けていいって言ってたし。これだけあれば大丈夫か?」
そう言って大きな布袋いっぱいにトトムムが詰まった袋をフォザリアの前に降ろした。
「ええ、ありがとうございます。でも、もったいないですね。これ、乾燥させて中央に穴を開けて紐を通せばのれんだって作れるのに、これすごく粒が大きいから、きっといいのができると思うんだけどな」
「なんだいそののれんってのは?」
「ああ、部屋の仕切り用ですね、余ったら作ってみますよ。ここのトトムムの実もまだたくさん落ちてて拾っておいたものがありますから、それにこのトトムム、真ん中がわりと空洞になっているみたいで簡単に糸が通せそうだし」
「何だかわかんないけど、そんなものができるのなら農閑期のいい仕事になるかもしれないね」
「そうなるといいですね。あの私お礼をしたくても私何も持っていなくて、それで、サルデーニャ様にお許しを頂けたので、あのこれ、私が作ったドレスなんだけど、ビゴーラさんに聞いたらサイズ的にちょうどいいみたいなので、姪っ子さんにきてもらえないかと思って」
「えっこんな上等なドレスもらっていいのか?」
「はい、もともとサルデーニャ様のドレスだったんですけど、作り変えたんです。きちんと許可は頂いてますので」
「すまねえなあ」
ボンゴは嬉しそうにそれを受け取ると、仕事に戻って行った。
フォザリアは早速ボンゴからもらったばかりの大量のトトムムの実を屋敷の前の土の上に布を広げてその上に並べ乾燥させることにした。
何日も前に刈り取られ、ずっと外に放置されていた物らしく、乾燥にはそれほど時間はかからなそうだった。完全に乾燥するまでの間に、フォザリアは汚れて捨てられていた服や古いカーテンなの布生地などを玉入れ用に使うトトムムをいれる袋を切り縫って大量の玉入れ袋を縫いあげた。
この日は、昼から乾燥したトトムムを布地の中に入れる作業をロンダも手伝いにきてくれていた。そして、このぐらいになると王宮内の使用人たちも分担して準備を手伝うようになっていた。今日は非番のビゴーラが手伝いに来ていた。
「フォザリア、本当に大丈夫なのかい?」
「何がですか?」
「何ってルカルナ様だよ、もう王宮中に広まってるんだよ。ルカルナ様も出席なさるってね」
「ええ~そうなんですか?」
フォザリアがのんきに言うとロンダも心配そうに聞いてきた。
「そうだよ、ルカルナ叔父様とお話しした?」
「いいえ、それがまったくなんですよ。参っちゃいました。三階から降りていらっしゃらないし、食事の時下からも話しかけても無視されるし、ハッキリ言ってまったく話せてないんですあっははは」
フォザリアは頭をかきながら笑い出した。
「あんたねえ笑い事じゃないよ、どうするつもりなんだい?」
真剣に心配しているビゴーラに対してフォザリアは大きなあくびをしながらロンダの顔をふと見て言った。
「そう言えば、そのほっぺ絵具が付いてますけど、何かされていたのですか?」
ロンダの頬に青い色の絵の具が付いていたのでフォザリアは横にあったハギレでロンダの顔についた絵具をふき取ってあげながらたずねた。
「ああこれ、さっきまで運動の会の宣伝用の絵を描いていたんだよ」
「宣伝用?」
「そうだよ、この王宮一体何人働いていると思っているのさ、色んな人間が仕事をしているんだよ、一堂に集まるなんてことないしさ、だから僕、王宮のあちこちに絵と文を書いて、参加者を募ろうと思って描いてるんだ」
「最終締め切りは10日後にして、集まった人数で組み分けしないといけないでしょ」
「あらそうですね。何かすみません。ロンダ様にもかなり任せてしまっていて」
「いいんだよ、僕が初めて任された王宮行事なんだもん。だからさ、僕成功させたいんだよ」
「そうですね・・・」
その時ふとあることが閃いた。
「そうよ、その手があるじゃない」
突然達立ち上がると叫んだフォザリアにロンダとビゴーラが驚いて聞き返した。
「どうしたんだい、どの手があるっていうんだい?」
「ねえ、何か閃いたの?」
「ふふふっ、あのですね、ごにょごにょ」
フォザリアはロンダにだけ耳打ちした。その内容を聞いたロンダは言った。
「僕は別に平気だけど、それおじい様やおばあ様もしなきゃいけなくなるんじゃない?」
「そうですね、全員がすることに意味がありますから」
「う~ん、一応聞いてみるけど、誰がそれをするの?」
「宮廷画家とかいらっしゃるんでしょ、その人達に協力を得られないの?」
「そうですね、参加者全員となると・・・」
「じゃあ、王族の皆さんだけこったものにして、後の人達は丸とか三角だけでもいいじゃない。腕とかにお揃いのマークの絵を描くとかさ」
「そうだね、なんだか楽しそうだね。僕早速聞いてくる」
そう言って立ち上がろうとしたロンダにフォザリアは耳打ちした。それを聞いたロンダは頷くと、ピオレと共に館を出て行ってしまった。ロンダを見送ったビゴーラは首を傾げながらフォザリアにたずねた。
「絵とか何を言っていたんだい?」
「ああ、頬に我が国の象徴である鷲と鷹の絵をみんな描いたらどうかっていったんですよ」
「顔に絵を描くだって?」
「はい、お祭りですから、楽しいかなって思いまして」
フォザリアのアイデアに驚きながらも、ビゴーラは感心したように繰り返した。
「お祭りねえ・・・そうだね、確かにいい考えかもしれないね、みんな顔に絵を描いちまえば気にならないかもしれないね。ところで、ルカルナ様の顔には誰が絵を描くんだい?」
「そうですね、ごねられるかもしれませんから、私が強行手段で描きますよ。一応発案者の責任において」
「だけどね・・・簡単にさせてもらえるかねえ」
「そこが問題なんですよね。まだ対策をまったく考えてないんです」
「あんたはたいしたもんだね、行き当たりばったりの思い付きで先にロンダ様に陛下の許可をとらせにいったっていうのかい?」
「あら結果的にはそうなりますけど、まずは許可どりが最優先ですもん、それができてから、何とかなるように考えればいいんですよ」
フォザリアの目は輝きを増していた。ようやく解決策が見つかったからだ。
(さて、どうやってルカルナ様と対決するかよね・・・)
フォザリアは天井を見上げながら心の中でつぶやいた。




