第1話 始まり
……俺は夢を見た。
日本が何者かに侵略される。ビルが崩れ、地面が裂け、逃げ惑う人々の叫び声、人が死に、街が滅び、そして日本が滅びる夢を……
――――――――――――――
「うわぁぁぁぁぁ!!!」
ベッドから飛び跳ねるように俺は起きた。
「なんだ……!?今の夢!?」
俺は今見た夢が信じられない光景で叫んでしまっていた。妙にリアルな夢で、冷や汗が出ていた。
「日本が滅びる……?まさかな……」
海の向こうに大きな影が見えた気がした……そんなことを考えていたら、廊下から足音が聞こえる。
「朝陽兄!?今何時だと思ってるの!?今日高校の入学式でしょ!?」
妹の小夜が扉をバン!と勢いよく開けて俺の部屋に入ってきた。
「わりぃ小夜、変な夢見てたんだ。今下行くわ」
俺は少し震える声を妹に悟られないように言った。
「もうしっかりしてよね!今日は朝陽兄の大事な日でしょ!」
妹はそう言って、部屋から出て行った。
「さて、俺もいつまでも夢なんかにビビってないで入学式の用意を早くしないとな」
俺はテキパキと制服を着て、階段を下って一階へ降りた。
キッチンには母がエプロンを着て朝ごはんを作っており、テーブルでは父がパンを食べながらテレビでニュースを見ていた。
「おはよう!」
俺は元気にあいさつした。
「おはよう朝陽!」
父が元気よくあいさつを返してくれた。
「朝陽おはよう、起きるの遅いんじゃない?」
母が静かに、少し怒っているように言いながら、テーブルに朝ごはんを置いてくれた。
俺はすぐに謝っておく方がいいと判断した。
「ごめん母さん!次から気をつける!」
そう言って、椅子に座った。
「いただきます!」
そして、朝ごはんを急いで食べ、学校に行く用意をして、家を出る。
「じゃあ行ってきます!!!」
「おう!行ってらっしゃい!また後で行くからな!」
「行ってらっしゃい〜朝陽」
駅へ駆け足で向かい、ギリギリ予定の電車に乗ることができた。
「ふぅ〜ギリギリ間に合ったぁ」
と小さく呟いた。電車に揺れること30分ほどで学校の最寄駅についた。
学校に向かっている途中、同じ学校に向かう綺麗な女子を見かけた。
「綺麗だな〜」
俺は無意識にそう呟いていた。そして、時間を確認したら、入学式までギリギリで急いで学校へ向かった。
学校の校門をくぐるとそこには、受験のときに見た大きな校舎が広がっていた。
「やっぱりでかいよな〜」
っとそんなことしてる場合ではなかった、急いで掲示されているクラスや番号を確認して、入学式を行う体育館へ俺は急いで向かった。
体育館ではほとんどの新入生たちがすでにいて、クラスごとに整列していた。
「おーい!朝陽〜!F組はこっちだぞ〜!」
中学の頃からよく聞いていた声が俺のことを呼んだ。
「おぉー!拓也!一緒のクラスか!やったな!」
拓也とは小学校、中学校と同じで親友だ。
「朝陽、お前小学校から変わらず時間ギリギリだな!
いつもギリギリなのには理由あるだろ?今日はどうしたんだ?」
と聞いてきた。拓也はずっと仲のいい親友で、今日の夢のことを話しても大丈夫だろうと俺は考えた。
「いや〜あのな、信じらんないと思うんだけど、夢で日本が滅びる夢を見たんだ。それがまぁ〜リアルでさ。やばかったんだ」
俺は夢で見た内容を大雑把に答えた。
「まじか!それはやべぇ夢だな!まぁ流石にそんなことにはならないと思うけどなぁ」
と拓也は笑っていた。
「だよな〜!流石に夢は夢だよな〜」
そんな話をしていたら、入学式が始まった。
入学式は校長の話は長いわ、来賓の話は長いわで、退屈だった。そして、入学式が終わり、教室へと移動するときに、今朝見かけた綺麗な女子を見かけた。俺はその子を無意識に目で追っていたら拓也が言った。
「朝陽、もしかしてあの子に惚れたか!?」
「うっせぇ!俺の勝手だろ!」
俺は否定することを忘れ、そう言った。
「はは〜ん、なるほどねぇ。朝陽に恋の季節がやってきて、俺は嬉しいよ。小学校、中学校と恋なんて言葉とは無縁だったもんな朝陽」
「………」
俺は黙ってそっぽを向いた。
「朝陽、ごめんて、俺は応援してるぜ!」
拓也は俺の恋を応援してくれるらしい。
「ありがとな拓也」
「いいってことよ!あっ!そろそろクラスつくぞ!これからの学校生活楽しみだな!」
「そうだな!」
そして、クラスに入り、席にみんながつくと、担任の前川先生が言った。
「よーしお前たち、初めての高校生活で緊張してると思うが、そう固くなるなよ!まずはクラスの親睦を深めるために自己紹介だ!」
そうして自己紹介が出席番号順で始まった。
ちなみに、俺や拓也が通うここ、[黎明高校]は偏差値68の頭がいい高校だ。
俺も拓也もこの高校に来るために必死に勉強をして、合格した。
そして拓也の自己紹介の番になった。
「俺の名前は、相澤拓也!好きな食べ物は背脂ましましのラーメン!好きなことは体を動かすことだな!
中学のころの部活はバスケをしてた!高校でも続けようと思ってる!みんなよろしくな!」
自己紹介で何を言うか考えていたら俺の番が回ってきた。
「俺の名前は、神谷朝陽!好きな食べ物はあっさりした醤油ラーメン!好きなことは泳ぐこと!中学のころの部活は水泳をしてた!高校でも続けようと思ってる!あと拓也とは小学校、中学校と同じところに行ってた!みんなと仲良くしたいです!みんなよろしく!」
俺も自己紹介を終え、クラスのみんなも自己紹介を終えたところでちょうどチャイムが鳴った。
「よぉーし!お前たち、今日の入学式等は終わりだ!また明日な!」
担任の前川先生がそう言って教室から出て行った。
俺と拓也はクラスの人と喋ってから学校を出た。
「拓也〜高校楽しそうだな!早く明日にならねぇかな!」
「そうだな朝陽!明日が楽しみだぜ!」
そして駅に向かう途中で見かけた綺麗な女子の話になった。
「なぁ拓也」
「おん?どうした?」
「あのさ、入学式で見た女子さ何組なのかな?」
「うーん、俺らよりも前に退場してたからA組からE組のどれかだな〜」
「明日もまた見かけられるといいなぁ〜」
「朝陽〜!見かけるだけじゃだめだ!話しかけないと!」
「えぇ!?話しかける!?無理無理できるわけないじゃん!」
「話しかけるぐらいしないと、一生付き合うとか無理だな」
「えぇ!?じゃあ頑張る!」
「やっぱりあの子のこと好きなのか」
俺はよく好きって気持ちがわからない、今まで人を好きと思ったことがなかったからだ。でもその子のことを考えるとこう言葉に表せない感情がある気がする。
「…………この感情が好きってことなのかな?」
拓也と話しているうちに駅に着いた、途中まで拓也は同じ電車に乗って、自宅の最寄駅で降りて行った。
「また明日!朝陽!」
「また明日な!拓也!」
そう言って拓也と別れたあと、電車で数分揺られ、駅に着いた。
「ふぅ〜入学式も意外に疲れるもんだな〜」
そう呟きながら家に帰った。先に帰った父と母が遅めのお昼を用意して待ってくれていた。
「ただいま!父さん!母さん!腹減った〜!」
「おかえり!(父と母)」
母が次にこう言った。
「お昼はチャーハン作ったから食べな」
「ありがと!母さん。」
「いただきます!」
そう言ってチャーハンをガツガツと食べ終え、自分の部屋へ戻った。
明日も早いもんな〜、夕飯は食べないでいいかな……
そして、眠りについた。
――――――――――――――
「あれ?ここどこ?」
俺は寝たと思ったらなぜか草原にいた。
「えっ!?いや待って、なんで?え?ここ草原!?」
なぜ急に草原なんかにいるのかと戸惑っていたが、そうだ、夢だと気づいた。でもこの妙にリアルな感じの夢を今朝見た気がする……
「いや流石に……違うよな、うん、そうだきっと平気なはず」
とりあえず近くに木が見えたのでそこに行くことにした。木の根元まで来ると、そこには宝箱があった。
「……宝箱?こんなところに???」
戸惑いつつ、慎重に宝箱に近づいた。
「開けてもいいのか?いやでもなんか変なものでも入ってたら……」
そんなことを言いつつ、俺は気になったものはしょうがないと自分に言い聞かせ、少し期待に胸を膨らませ宝箱を開けた。
「あれ?なんも入ってないじゃん!なんだ期待してそんした!」
と思っていたら、どこからか声が聞こえた。
「おめでとうございます!あなたは選ばれし者に選ばれました!」
選ばれし者……?なんだそれと思いながら、俺はこう返事をした。
「誰だか知らないが、選ばれし者に選ばれたってどういうことだ?」
そして謎の声はこう答えた。
「あなたは今朝、日本が滅びる夢を見たはずです。その夢は現実に起こります。いつ……とは正確には私にも分かりませんが、来る滅亡の日に備え、戦える者を選ぶ、それが私の役目……そうして、選ばれたものが選ばれし者なのです。理解していただけましたか?」
俺は話のスケールがデカすぎて、混乱していた……がなんとなく理解はできた。
「理解はできた……だが戦うって、俺は喧嘩すらしたことないんだぞ?ましてや人を殴ったことなんて……そんな俺が戦う?一体だれと…というかまず戦えるのか?」
そうだ、俺は喧嘩すらしたことがない、戦うなんてできるわけがない……だが謎の声の主はこう答えた。
「大丈夫です。あなたはこれから夢の中で強くなってもらいます。そう、この夢の世界[レーヴ]でね。
私も敵の正体は分かりません…ですが強くなって滅亡に備えましょう。力を貸してくれませんか?」
俺は考えた…本当に現実で日本が滅びるなんてことがあるのか……ましてやこんな夢みたいなことがほんとにあるのだろうかということを……だが困ってる人を見かけたら助ける!放っては置けない!
「あぁ!こんな俺でよければ力を貸す!本当に日本が滅びるなら日本を救わないとな!でも本当に戦うなんてことはしたことないからな!というかあんたの名前はなんなんだ?」
「私の名前ですか……私の名前はアンジュと言います。どうぞアンジュとお呼びくださいご主人様」
アンジュ……どっかで聞いた覚えのある気がするな……?というか、
「待て待て!ご主人様ってどうゆうこと!?」
俺は驚いた……いきなり謎の声の主のアンジュにご主人様と呼ばれたからだ。
「そのままの意味でございます、私達は仕える者にご主人様と呼ぶ決まりでございます」
……ご主人様と呼ばれ俺は悪い気がしなかった、だがなんか違和感があるので、
「アンジュ、俺のことは朝陽と呼んでくれ!」
「分かりました朝陽様」
「様をどうにか付けないで呼んでくれないか?」
「いえ、せめて様はつけさせてください」
まぁ呼ばれて困るものではないだろうと自分に言い聞かせ、納得した。
さて、本題から離れてしまったが、まずこの夢の世界の[レーヴ]で強くならなければならない……それがどのくらい大変なのか、俺にはわからない。
「なぁ、アンジュ」
「どうかなされましたか?朝陽様」
「この世界ってさ、地球……俺が普段過ごしているところとは違うところだよな?俺が知ってる景色にこんなところないもん」
「はい、この世界[レーヴ]は別世界です…地球のもので例えると異世界というのでしょうか?この世界にも人はいます。そして、人だけではありません……魔のもの、通称[魔物]がこの世界にはいます。魔物は人を襲います。」
「魔物!?怖すぎるでしょ!ていうか、魔物が人を襲ってくるってことは、俺も襲われちゃう!?
やばい戦えないよ!というか素手で戦うの!?」
不安だ…この先この夢の世界でやっていけるのかと…
「ご安心ください、魔物は狩ることができます。この世界は[剣]と[魔法]そして、[気]というものがあります。詳しくはまた説明しますが、朝陽様はこの3つを扱う才能が秘められております。
剣は努力をすれば人なら誰でも使うことができますが、魔法、そして気は生まれ持った才能が影響します。もちろん例外は存在しますが……」
「ちょっと面白くなってきた!へぇ〜ちょっと楽しみだな〜でも俺今はクソ雑魚だよね…自分の状況?とかって見れるの?」
「はい、[ステータスオープン]と言えば自分の状況が分かります。これからはステータスと呼びましょう
」
「なるほどね!ステータスオープン!」
すると、俺の目の前にゲームの画面のようなものが浮かんできた。
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[名前] 神谷朝陽
[種族] 人間
[レベル] 1
[HP] 20
[攻撃力] 5
[防御力] 5
[魔力] 5
[気] 3
[素早さ] 8
[???] ???
[才能] ・剣の才能・魔法の才能・気の才能
[スキル] 特になし
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「これが俺のステータスか……分かってはいたけど、弱いな……」
「いえ、朝陽様はお強いですよ!レベル1で魔力や気があるなんてすごいことなんです!」
俺は褒められたようで嬉しかった。
「これからの成長が楽しみだな!」
そう言った後、頭がぼんやりしてきた。アンジュが言った。
「そろそろ夢が覚めますね。今日はここまでのようです。また明日夢の中で会いましょう」
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その言葉を最後に、俺は夢から覚めた。
「日本の滅亡……俺が救えるのか……?いや、救うんだ!強くなってやる!」
そう俺は一人で叫んだ。
俺はまだ知る由もない、この先に待ち受ける強敵や絶望、喜びや悲しみ、日本の未来がどうなるかなど、俺はまだ知らない。そう、これは俺、朝陽が日本の滅亡を防ぐため夢の中で強くなる物語だ。




