21ーお断りです
アメジストさんは、不自然なくらい友好的な笑みを浮かべました。
舌打ちした人の顔ではありません。
「ギルドを設立すればぁ、隠れ家を持つことができるわけぇ」
「隠れ家ですか?」
アメジストさんは鎌の柄で地面を叩きました。
「危険区に設置できる家のことだよぉ」
家を設置できる。
ルビー様をチラリ。
「新居は街が一望できる高台がいいです。二人だけのマイホーム」
またサファイアちゃんが変なこと言ってる、みたいな顔をされました。
「それ、メリットある?」
ルビー様の凛々しい顔つきに、お腹の下あたりが熱くなりそうです。
「愛が深まります!」
「サファイアちゃん今まじめな話してるから静かにしてね」
怒られました。
「アメジストたちはセーフティーエリアでの行動に制限がぁ、あるでしょぉ? でもぉ、ギルドハウスがあればぁ、取引が使えて便利だしぃ、拠点があればいざって時に逃げれるじゃぁないぃ?」
「そもそも、死神のあんたが逃げるって選択とるわけ?」
「あるある、アメジストは不可視だけどぉ、不滅じゃないしねぇ」
「ふーん……」
内心理解が追い付いてないけど、首を縦に振りながら「なるほどなぁ」って呟きを混ぜながらわかったふりをします。
仲間外れは嫌ですからね。
「PK同士敵対しても効率悪いと思わないぃ?」
へらへら口調のまま、からかう姿勢を崩しません。
アメジストさんが本気で言っているようには見えません。
「それはサファイアたちと友達になるってことですか?」
「フレンドとかただの足手まといはぁ、アメジストには、いらないんだよねぇ。あくまでも停戦協定みたいなぁ?」
友達にならないって誘い文句は噓だった!
「ならお断りです」
PKという共通目的があって、それ以外の道がサファイア達にありません。
信用もできない人と手を組むのはリスクでしかない。
それくらいサファイアにはわかります。
何より嘘友達申請は、心に深い傷を刻むんです。
あれは忘れもしない幼き頃、サファイアに友だちになろうと言ってきた笹原さん。当時のサファイアは人の悪意にさらされたこともない純真無垢な――
「フレンドになるぅ――メリットなんて、ないでしょう。ただの足手まとい、お互いに足の引っ張り合い、そんな枠組みに意味なんてない」
ぎろりと睨み、アメジストさんの雰囲気ががらりと変わます。
まるで実態をつかませない霧が鋭利な氷柱に変化した、そんなイメージ。
「意味がある関係になれたら、それは特別だよ」
ルビー様がサファイアの右手を強く握りしめ、真っすぐな瞳で、優しく、それでいて芯の通った声で言いました。
「……そんな幻想に囚われてるなんて可哀想だね。虫唾が走るわ」
アメジストさんの口調が尖ってます。
ルビー様、地雷踏んじゃってますよ、きっと。
「アンタがどんな青春コンプレックス抱えてるか知んないけど、アタシはギスギスオンラインはもうごめんだし、アンタとギルド結成しても楽しくなさそーだから、遠慮するわ」
ルビー様の凛々しい顔つきに、アメジストさんは白けたと言わんばかりに大きなため気を吐く。
「……ならぁ、いいやぁ。また気が向いたら殺しに来るからぁ」
鎌を振り上げ、斬撃とともにアメジストさんはその場から姿を消します。
まるで敵キャラが、音もなく姿を消すときのアレです。
強者感っていうんですかね?
「何だったんでしょうね?」
何か物思いにふけっているルビー様に声を掛けます。
けれど返事は帰ってきません。
ぎゅっと、強く手を握り返されました。
ドキドキが止まんないよ。
とりあえず、サファイアはルビー様の口から言葉を出るのを待つことにしました。




