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17-空駆ける鞭使いは頭を撫でてもらいたい


 ルビー様は弓使いさんと戦っているはずです。

 助けに行きます。


 あとで頭をよしよししてもらうために、かっこいいところ見せちゃうぞ!


 木々が覆う森の中、飛び交うスキルのエフェクトと轟音をたどり、距離を詰めます。

 このゲームは、森、草原、川、海、山、砂漠など、色々なところがありますが、草木が生えるマップは森というか林が多いです。


 木々の枝を鞭で掴み移動します。


 私の器用さがあれば、慣性で空中を滑空している途中に、鞭で前方の枝を掴み、【綱渡り】と【加速】の併用で、一歩だけ前進できます。


 【綱渡り】――触れている面が一定以上細い場合、次の一歩を確実にするスキルです。


 私は手にムチを持ってます。


 このスキルを適応中に【綱渡り】を使うと、接触面が手のひらだとしても、確実に一歩分、使用者の位置が前進します。


 空間を飛び越える一歩先に移動します。

 あと、バランス感覚が良くなります。


 【加速】による移動速度アップを使うと一歩の距離を伸ばすことができます。たぶん、特定のパラメーターに依存した移動距離を算出しているとかなんとか。


 ほら、踏み出す力と慣性によって、一歩って大きく変わるものじゃないですか。


 空中でも、地面を蹴るときの一歩を踏み出せるんです。

 移動先に鞭を持った私が、空間転移してるように現れると、どうなるでしょう。


 【綱渡り】での一歩は、【加速】の移動速度アップの影響を受けますが、【綱渡り】の移動に慣性は働きません。

 移動した先で、改めて、移動に必要だった慣性が働き、体が前へと引っ張られます


 

 これで、ラグついたような動きができます。


 だた弱点があるとすれば、条件を満たす接触面の範囲内でしか移動ができないところですね。


 さて、弓使いさんを、ジャッチメントですの!



 【盗聴】されている恐れがある以上、ボイスチャットは危ないです。

 目視で敵を判断できるところまで移動した後、物陰から敵を確認しました。

 


 弓使いさんは、遠距離から、弾幕を張るように弓を連射しています。

 弓が矢が無くなるまで待ちたいところですが、危険区に来るような人が、【弓生成】のスキルを取ってないとも思えません。


 一方、ルビー様はファンネルユニットを呼び出して、自動攻撃されています。

 あとは手数を優先して応戦してるといった感じでしょう。


 お互い、耐久に自信がないのでしょうか。

 ルビー様は、【ベストフレンド】によって、平均的に能力がかさ増しされている分、有利だと思うんですが……


 いえ、理由は今はどうでもいいことです!


 気づかれていない今、最大火力で敵を穿ちましょう。


 鞭を空高く伸ばし、軽くジャンプします。

 【綱渡り】と【加速】を併用して、軌道上の一歩先へと移動します。

  

 空を転々としながら、上を取りました。


 先程、大剣使いさんを葬った一撃を入れましょう。

 カツアゲをしない理由としては、もうすでに味方さんをやっちゃっています。

 

 こちらから提案したとしても、罠だと警戒されてしまうでしょう。



 では、退場してもらいましょう。


 鞭技――【天地双龍打】!



★☆


「サンキュー、助かったぜ」


 弓使いさんを昇天させて、ルビー様と合流しました。


 ルビー様は私の頭を撫でています。

 私、手休めとして、推して行くのも悪くないのでは!?


「アタシら、PKとして有名になっちゃってるね」

「有名……誰もが認めるお友達!」

「サファイアちゃん、おもろ~。そうでなくてね、ネーム隠しても、レッドネームってバレてるから、相手の攻撃に迷いがなくなってんのよ」


「暗殺姫とか何とかサファイアたちのことを呼んでましたもんね


「だね、まぁ、PK専門でやってるプレイヤーなんて数限られてんし、しゃーねーぜ」


「死神とか呼ばれてる伝説のPKもいるですもんね」


「そうそう、誰も見たことがなく、気づけばライフを削られていき、リスポーン地点へ送られる。聞こえるのは狂気に満ちた殺意の言葉。ついた二つ名は『死神』……」


「そんな怖いプレイヤーさんがいるんですね」


 見えない敵、見えない攻撃か……どうやってるんだろ?


「でも、PKを続けてるとフレンドいなくなりますよね? 伝説と呼ばれるほどPKって継続できるのかな?」


 私たちは【ベストフレンド】のスキルで、特別な【友達運】の恩恵だけを受けて、ペナルティは免除されている。

 

 普通のプレイヤーなら、フレンドがいなくなって、【友達運】によるパラメーター上昇が維持できなくなるはずだ。


「契約フレンドで、フレンド欄を埋めているから、パラメーターは確保できるのかな?」


「たぶん、それは無理だよ。フレンド申請をする場合承認限度回数が設けられてるから」


「なにそれ!」


「月百人までしかフレンドになれないって上限のこと、だから継続的に契約フレンドは買えないぜ」


 そんな仕様があったなんて知らなかった。

 ソロプレイを1500時間してたサファイアちゃんには関係のない知識だったから……


「じゃあ、『死神』さんはどうやって、強さを確保してるんだろ?」


 装備が同じだとしても、パラメーターに差があれば、与えるダメージは大きく変化する。受けるダメージもだ。

 姿を隠す『フォレスト』シリーズでは、まずプレイヤーさんを倒し切るのは難しい。

 

 それなのに、伝説になるくらい、特別な理由があるはずだ。


 不穏な風が肌をすり抜ける。

 

 ――【敵意察知】

 

 スキルの警告音が脳内に流れた。

 赤い光が敵の位置を教えてくれる。


 髑髏の画面をつけた、華奢な少女が大きな鎌を片手に携え、悠々自適に歩いてきている。



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