14-ルビー様との連携PK実践編です
低難易度マップのPK可能エリア。
私たちの輝きし伝説の始まりを飾る、最初の獲物を発見しました。
三人組のパーティー。
盾を持ったタンク。
槍を振り回すアタッカー。
杖を持ったマジックキャスター。
周囲を警戒しながら散策中です。
私とルビー様は木の上から様子を伺っています。
「私が特攻しますか」
「そうだね。サファイアちゃん注意事項は忘れてないよね?」
「はい、武器を持って攻撃しようとヘイト向けると、相手の警戒スキルに引っかかるんですよね」
「正解、だから、攻撃のタイミングは、射程距離に入れてからだよ」
「サファイア、頑張ります」
隠密装備フォレストシリーズを纏い、地面に着地する。
サーチ、索敵の影響は受けないけど、警戒スキルは無効にできないみたいです。
物音を立てず、私の攻撃が届く距離まで近づきました。
フレンドのボイスチャットで、ルビー様に教えたいんです
けど、盗聴スキルなんてものがあるみたいなんです。PKエリアでしか使用不能のスキルみたいなんですが、持っていたら、百%存在がバレます。
じゃあ、メッセージを送ればとなると、PKエリア専用で盗み見のスキルで周囲の人のメッセージを確認できるスキルもあるとか……
このゲームを考えた人は性格が悪いみたいですね。
フォレスト装備中だと、パーティーメンバーには視認されるみたいですが、ルビー様から目視できてるか判断がつきません。
ですので、私の準備が終わったら、打ち上げ花火のアイテムを使います。
時限式のアイテムで、使用して5秒後に発射します。
アイテムを使用したら、私はその場から全力で走り出しました。
ぴゅ~と間抜けた音が鳴ると、三人は音の方へ注意が向きます。
その合図を受け取ったルビー様が、詠唱に入りる予定です。
花火が弾けた音と共に、向けられたヘイトに方へ一人が警戒。
その一人がルビー様の方向を指差し「敵だ!」と叫び、他二人が反応しました。
マジックキャスターが詠唱を始めます。
私はそのタイミングを見計らい、攻撃を仕掛けます。
最大火力の鞭技――『天地双龍打』
鞭をしならせ、天と地を這う龍のパワーエネルギーを敵に走らせます。
龍が上から下から挟むように、敵三体を叩き飛ばしました。
全員、死亡状態になることを確認。
サファイアはやればできる子、元気な子、えっへん!
この状態から、更に攻撃を繰り返せば、リスポーン地点へ強制送還です。
「これで、終わりですよ!」
私がトドメのトドメを刺そうとしたとき、物陰から、ナイフが飛んで来ました。
「くそったれ、ビギナー向けのPVPエリアでPKかよ」
軽めの軽装備、第一印象は――
「盗賊さんです!」
「どの口が言ってんだ!」
怒られました。
「なぁ、俺ら、もう帰るからさ、見逃してくれないか?」
たぶん、死体状態から蘇生をするつもりなんでしょう。
そうすれば、友達運によるペナルティは発生しませんからね。
「でも、攻撃しましたよね」
「だから、どの口が……いや、悪かったな。フレンドを完全に殺されそうになったんで、慌ててたんですよ。だから、許してください」
へらへらと笑い出して、言葉遣いが丁寧になりました。
本当は4人パーティーだったわけですね。
「じゃあ、アイテムをください」
「し、仕方ないですね」
そう言うと、手持ちのアイテムを地面へ落としました。
「じゃあ、そこから離れてください」
「本当に攻撃しないんだよな」
「私は攻撃しません」
「名前を非表示にしてるし、嘘をついてるかも」
「それはお互い様ですよ」
危険区では、ネームを非表示にするのがセオリーだと、ルビー様は言っていました。
相手がPKかもと思わせることで、警戒させる意図があります。このゲームでPKの旨味は少ないけど、それでも私達みたいにPKを好んでする迷惑な人達はいるからです。
「共倒れの書を使いましょうか?」
「は?」
私が変なことを言うものだから、盗賊さんは困惑中です。
共倒れの書は、使用中、敵を倒してしまうと、自分も倒れるというネタアイテムです。
これを使えば、私からの攻撃は自殺行為と同義です。
けれど、PKにおける交渉は普通だと、ルビー様は言ってました。
「使ってくれるなら助かる」
それでも、背後をチラチラと気にしています。
ルビー様の攻撃を警戒しているのでしょうか。
一番やばいのは、自分が死ぬことです。
このゲームは、本当にたちが悪いと思うのは、ステータス欄に死亡回数が載るところなんです。
それが多いとかいうことはリスク管理が出来ない、信頼できない人となります。
盗賊さんからすれば、共倒れの書を使った私からの攻撃はないものと考えているはずです。PKサイドだって、殺ればペナルティをフレンドに背負ってもらうんですから。
なら、あと考えるべきことは、背後からの攻撃です。
背後に潜む私の仲間が、私とフレンドなのか分からない。
その仲間が攻撃してくるか、という迷い。
それと同時に、刻々と死亡待機状態のタイムリミットが削れていく焦り。
盗賊さんが、いろいろ難癖をつけてきたのは、少しでも心理的に楽になりたいからでしょう。
色々な交渉をして、お互いの許容点を見出す、心理戦ですね。
「ルビー様、私、攻撃しないでくださいね」
ボイスチャットで連絡します。
このチャットシステムは、フレンドとしかできません。
盗聴スキルで、私達が繋がっているのを確認して、やっと盗賊さんは警戒を解きました。
「へへ、ありがとうさん」
盗賊さんは、私達を普通のPK紛いの強奪パーティーだと思ってくれたようです。
悪いことをしてるはずなのにお礼を言われる日が来るとは思いませんでした。
「いえいえ、こちらこそ」
ホワイトネームのプレイヤーを殺したところで、アイテムは落ちない。プレイヤーに厳しいこのゲームにおける良心。
だからこその交渉。
本当に良心なんだろうか?
恐喝を誘導してませんか?
盗賊さんがアイテムを取り出し、仲間の蘇生を始めた、その瞬間を、私は『蛇縛り』を使う。
「な、テメェ騙したな!」
身動きが取れなくなった盗賊さんが怒鳴りつけてきます。
私も、共倒れの書によって、同じ拘束状態になって身動きが取れません。
このスキルは、一定時間拘束します。私が任意で解除するか、無理やり突破するだけが対処法ですよ。
「知らないんですか。女の子に縛られて、喜ばない男性はいないってルビー様が言ってましたよ!」
「縛ってんの蛇だし、今それどころじゃねぇんだよ。ふざけてんのか、あ?」
「そんな! お礼になるってルビー様言ってたのに!」
世の中には、これがお礼っていう男性がいるというのは、ルビー様の勘違いだった!
私が驚愕していると、遠距離からのルビー様の魔法が、盗賊さんを撃ち抜きました。
せめて、「私のご褒美?」が、盗賊さんの慰めになっていますようにと、私は彼らのこれからの活躍をお祈りしました。




