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エピローグ

 たったったと、リズミカルに階段を駆け上がる音で目が覚めた。

「……」

 ぱちぱちと瞬きをし、俺はそっと目を閉じる。

「おっはよー! お兄ちゃんっ!」

 これは悪夢だ。そうだ俺は長い悪夢を見てるんだ。そうに決まってる。

「あれ、寝てるの? じゃあ私もいっしょにねーちゃおっ!」

「いや起こせよっ!」

 ぎゅうぎゅう身体を寄せてくる感触に耐えかねて目を開くと、目と鼻の先にひかりの顔があった。

「あっ、起きた起きたっ! おはよお兄ちゃんっ」

「……おはようひかり」

 昨日まで好きだった子の顔がこんなすぐ近くにあるなんて朝から心臓に悪すぎる。好きな人から妹に認識を一瞬で完全に変えることなんてできるはずがなくて、俺の胸は痛いくらいに跳ね上がっている。

「おっはよー! おに…………ちょっとおねぇ! それわたしの仕事っ!」

 と、少し遅れてやってきた星良が、とたとたと駆け寄ってくる。

「私がお兄ちゃんの妹だもんっ。だから今後は私がモーニングコール係ね。わかった?」

「わかりまてん。それに、おにぃは毎朝、わたしのちょっぴりえっちなASMRを楽しみにしてるんだよ。だから、おねぇよりもわたしの方が適役なの。わかった?」

「勝手なこと言うなよ……」

 まぁ、ちょっぴり楽しみにしてるけど。

 俺の右腕に抱きつくひかりに対抗意識を燃やしてか、星良が左腕にしがみついてくる。

「暑いんだが?」

「いいじゃん、今日は振替休日で学校お休みなんだし♪」

「ならこんな早い時間に起こしにくんなよ」

 こちとら昨日一日の疲労と情報量が膨大すぎて処理が追いついてねぇんだよ。

「お兄様お兄様っ!」

「なんだよ、今日は厄日か?」

 部屋の入口で弾んだ声をあげているのはヒイロだ。

 ……ってヒイロ?

「ヒイロは早起きをマスターしました! これでお兄様の起床係に…………ず、ずるいですふたりとも! ヒイロもお兄様に寄生します!」

「寄生って言い方」

 ヒイロが正面から覆いかぶさるように抱きついてくる。

 おいおい、お前はそんな積極的じゃなかったはずだろ?

「おにぃおにぃ! あたし、今日早起き…………え、入ってる?」

「入ってねぇから!」

 まぁ、そう勘違いされても仕方ない体位をヒイロはしてるけどさ。

「ていうか、おねぇも星良もくっついてんじゃん。よぉ~しっ! あたしもおにぃの妹ハーレムに仲間入りしちゃうぞ~!」

 ヒイロが場所を譲り、ヒイロが左半身に、聖良が右半身にくっつく形となる。

「……暑いんだが」

「そっか~。ようやくおにぃはわたしに対する恋心を自覚しちゃったかぁ~」

「どうかしら? 星良じゃなくて、あたしに対する感情かもよ?」

「恋愛感情を判別することができないのがもどかしいです。……ヒイロも候補ですよね?」

「お兄ちゃんは私のことが好きなんだよ~。昨日、告白までされたんだからっ」

「頼むからその黒歴史はもう掘り返さないでくれ」

 四人の妹に三方向からロックされた形で、妹とするにはおおよそ適さない会話を交わす。

「……星良」

「ん?」

「楽しいか?」

「うんっ! すっごい楽しいっ!」

「そっか」

 ま、星良が笑顔でいるのなら、この時間に甘んじてもいいのかもしれない。

「ここでおにぃがわたしに話を振った時点で、わたしの勝ちみたいなもんだよね」

「なんとなく話を振っただけだっつーの」

「そうだよ。お兄ちゃんは素直にこの時間が楽しいって言うのが恥ずかしいから、星良ちゃんに気持ちを代弁させたんだよ。そうだよね、お兄ちゃん?」

「……まいったな。お前たち四人の妹がいたらなにも隠せそうにねぇや」

 ため息をつき、微笑んで俺は言った。

「みんなと過ごす時間はすげぇ楽しいよ。これからも俺の妹でいてくれるか?」

「もちろんっ」「当然じゃないの」「ヒイロもそのつもりです」「……はっ、いけない寝てた」

「はは、統一性の欠片もねぇな」

 まったく、可愛すぎる妹たちで困る。

 こんなんじゃ、恋なんてできるはずがない。

 だって、俺の四人の妹たちはこんなにも可愛いんだから。

 俺の妹たちより可愛い女の子なんて、どこにもいないんじゃねぇかな。

 だからまぁ、真っ当に青春して、真っ当に恋するのは、しばらくお預けってことで。

 妹たちとバカやって楽しんで謳歌する青春だって、立派に青春って呼べるもんだろ?


                                    ―FIN―

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