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番外編 次期王妃の行方 ~クスイからの便り~

番外編 3話目。 最終話です。

番外編 次期王妃の行方 ~クスイからの便り~




 結婚式を挙げて、国から送り出してから数日後。


 コセラーナ王は一通の封書を開けていた。


 クスイ国に嫁いだ娘のセーラからの手紙。




 先日、王女であるセーラの結婚式がテニトラニスの王宮で行われた。


 嫁ぎ先は南陸にある賭博の国クスイ。


 国土の大きさは両国とも同じくらい。


 だが、王女が嫁ぐのは王侯貴族のいない国であり、国政の官吏である文官のクーデノム=ガディだった。


 そのため、結婚式はテニトラニス国で行われることになり、各国の賓客を招くことも無く親しいもののみで行われた。


 といっても、テニトラニス、クスイ、リサニル(コセラーナ王の出身国)と親族が集まれば数百人規模にはなった。


 政略結婚ではなく、本人達の意志での恋愛結婚であるため、歓迎ムードで穏やかに終わった。


 式が終わるとクスイから来た花婿の身内と共に、海を渡ったのだ。


 


 無事に国に着いたとの報告や、初めて訪れるクスイ国や新たな生活のことについてでも書かれてあるのかと思いつつ、そんな内容なら男親である自分宛ではなく母のクイレイラ宛に送るだろうにと疑問に感じながら、手紙を読み始めた。


 クスイ国に着いた後の出来事を勢いに任せて書き綴っている。


「…………」


 無言で読むコセラーナの横には側近のシキアが控えている。


「コセラーナ様?」


 彼の前で突然、肩を震わせはじめた王にシキアは驚き声をかけた。


 そしてコセラーナは声を上げて、笑い出した。


「いかがなさいました?」


 訝しむシキアをよそに、楽しげに笑ったコセラーナは手紙をシキアに渡した。


「……やられた、な」


 脳裏に浮かぶのはまじめな青年、セーラを嫁がせたクスイ国の文官だったクーデノム。


 テニトラニスに一年に渡る長期滞在をしていた時、帰国することを告げに来た彼の言動を思い出していた。


 帰国の報告と共に正式に紡がれた言葉。


『セーラ姫を正式にクスイに迎えたいと思っております』と。


 最初からそのつもりだったコセラーナはあっさり『いいよ』と応えたのだが、その後にもクーデノムの確認の言葉が続いた。


『…国外にはまだ公にはされていませんが、クスイの現王が王位を退いて、新王が誕生する予定になっております』


 思いがけない言葉に彼の真意を測っていた。


『現在は王の側で文官をさせてもらっていますが、新王が起つことで私の地位も変化していくのは必然です』


 確信ある口調で語る表情に、嘘は感じられなかった。


『今の、文官の地位を必ず失うと判っている私でも、同じでしょうか?』


 真っ直ぐ見つめる瞳に今までにない力強さを感じたのを覚えている。


 一国の王と対峙しているのに全く物怖じしない、対等である視線に、心強く感じて笑ったのを。


『それこそ願ったり叶ったりだ。地位を失い路頭に迷うのならテニトラニスにくればいい。君の実力は立証済みだからな』


 滞在中に王の補佐的な仕事も彼に振り、意見を聞いたりと様子をみていたのだが、頭の回転も速く見事にやってのけていたのだ。


『ありがとうございます』


 深く礼を言って、クーデノムは部屋から出て行った。


 王の命令で遊学しているという文官・武官の二人。


 新王が起つというのなら忙しい職のはずなのに遊学という暇を出されているという事実。


 今のクスイの王城にとって彼らは居てもらっては困る事態になっているのか、と思案したりしていたのだが……。


「こう来るとは、考えなかったな」


「そうですね」


 手紙に目を通したシキアもコセラーナの呟きに相槌する。


 クスイの王は、現王の指名制で血族とは関係なしに選ばれる。


 そのため王族は存在しない。


 コセラーナも独自でクスイ国の情報を集めていた。


 調べていく中で、クーデノムが現王の息子かもしれないという噂は掴んでた。


 現王が次期王を選ぶときに『息子を探し出しててみろ』という面白い条件を王宮に務める文官・武官たちに与えたことは伝わってきた。


 結局見つけられず、次期王探しは終わったらしい。


 臣下たちがどんな行動をするかで、今後の新しい人事を思案する材料にもなるということだったらしい。


 詳しい経緯は国政に関係あるということで、箝口令がひかれているが、噂は流れてくる。


 文官の出世頭であるクーデノムが現王の子なのではないかと。


 だから、王は血族である彼を指名することはない、と思い込んでいた。


 血族で選ばないのではなく、王になれる器なら誰でも指名できるということで、血族から選んでも構わないのだ。


 結婚式ではクーデノムの親族として両親も来国していた。


 クスイの国王としての威厳など感じさせず、終始賑やかな人を引き付ける人物とおっとりとした婦人。


『こんなに可愛い娘ができるとは、よくやったな息子よ』


『うるさいですよ』


 心から喜んでいるのが分かる態度だった。


 あくまでクーデノムの親、クスイの王としての身分を秘しての来国だったが、挨拶時に目が合うと、こちらが気づいているのを知ってる感じだった。


 彼の親だな、と思った。




 そして、セーラからの手紙には驚きが怒りとなって報告されてきていた。


“クーデノムがクスイ国の王になった!!!”




 クスイ国に着いた翌日。


 クスイでも式典が行われるということで大広間に集まった王宮の官吏たち。


『任命式があるだけだから、クーデノムの嫁として隣に立ってればいいから』とマキセに簡単に説明されて。


 いざ会場へと案内されると、みんな正装の厳かな雰囲気。


 ひな壇中央の王座にはクーデノムの父親が笑顔で座る。


 王位継承認証式。


『クーデノム=ガディをクスイ国王として任命する』


 そして続けて、


『テニトラニス王女セーラを王妃として認証する』


『マキセ=トランタを側近侍従長と任命する』


 驚きで呆然とするセーラに、クーデノムとマキセは笑いを嚙み殺していたのだ。




『騙されたー。こんな大事なことを言わないなんてー』


とセーラの手紙には書かれているが、なんとも微笑ましく感じる。


 クーデノムが言った文官職を失うという言葉に偽りはない。


 こちらが勝手に思い込みのもと推測しただけだ。


 思わぬ方向の展開に、まさに、してやられた気分だった。


 普通の文官なら、王女を娶ることに身分差も感じて辞退するだろう。


 だけどすでに王位の確約があれば…王妃の地位に見合う相手なら遠慮はない。


 さすが見込んだだけはある、と妙に楽しい気分になった。


「セーラから手紙が来たって?」


 王妃のクイレイラが部屋に姿を現す。


「なんだか、楽しくやってるみたいだ」


 この先もきっと大丈夫だろう。


 そんな確信を文面から感じて、コセラーナは満足気に微笑した。




【END】

「次期王の行方」クーデノム&マキセ&セーラの話の最終話。終わりです。

ありがとうございます。

「平行世界シリーズ」短編集の中にまたチラッとゲスト出演しているかもですが、気が向いたら読んで頂けるとありがたいです。

あ、でも当分公開する中には無いかもしれない。

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