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10 最終話

それから1ヶ月後。

 船で海を渡り北陸の玄関口、商業の国テニトラニスの港に着いた。

 簡単な入国の手続きの書類を出し、港町に足を踏み入れる。

 勢いのある雑踏が耳に届く。

 そんな彼らを待っていたらしく、すぐに男が近寄ってきた。

 クーデノムも何となく見覚えがある上着を纏っている。

 クスイの国の外交官の一人だろうが名前までは判らない。

「クーデノム様、マカット王より書を預かっております」

と差し出し出されたのは妙に豪華な文箱。

 ただの連絡用の軽いモノではなく、正式な書である事を示している。

 クーデノムは受け取り、箱はマキセに持たせて中の手紙を開き見た。

 読み終わるまで数秒。

 沈黙の中、クーデノムが苦笑して呟いた。

「………やられた」

「どうした?」

「……先を越されていたようだ」

 マキセが書面を覗き見る。

「テニトラニスへの留学を許可っていうか、遊学のお世話をしたいと言ってきたから、世話になれ、と書いている」

 テニトラニスに国に行くことは決めてクスイの定期連絡で報告していたが、滞在期間などの詳しい話はしていない。

 ルクウートで別れたテニトラニス国王は、1ヶ月の間にクーデノムの意志より先にクスイ国王の許可を勝ち取ってきたワケだ。

 クーデノムが数日ではなく、長期に渡ってテニトラニスに滞在するように。

 国に立ち寄るようにコセラーナ王から直接は言われていたが、手回しも早いようだ。

「ところで、マキセ?」

「なんだ?」

「何故、王がセーラ姫について詳しく知っているんだ?」

「え?」

「『ついでに気に入った姫がいるそうじゃないか』と」

「あはははははは……」

 笑ってごまかす手段に出たマキセに、クーデノムは諦めの溜息。

「裏切り者がこんな所に……」

「親友の父親の相談に乗っただけじゃないか。『今まで浮いた噂のひとつも聞かない息子だが、いい相手はおらんものか』と」

「それで遊学まで持ちかけたのか」

「そこまではしてないよ」

 きっぱりとソコは否定しながらも、いろいろと何か言っていたことは間違いないらしい。

「周囲には気にいるような者はいないだろうし、クーデノムが王になると知ってから近付く奴はロクなもんじゃなさそうだから」

「…………」

「それに、俺だけじゃないからね。ハイニ様からも聞かれたから」

「え?」

「『二人で歩いてるのを見かけたけど、どうなんだ』と」

 国王の腹心であるハイニが知ったとなると、いろいろ調べて報告されているのは間違いない。

 余計なことをを思いつつ、親書を箱に戻す。

「でもほんと、セーラ姫は予想外のめっけもの」

「そんな一国の王女を特売品のように……」

「いやいや、クーの雰囲気に呑まれない、しっかりしたお嬢さんだと尊敬してるんですよ」

「どういう意味ですか?」

「それに、クーが早く落ちついてくれないと困るんだ」

「?」

「一部の女子の間で、俺たち2人の関係に萌えているらしいから」

「はぁ?!」

 話している二人の側で一台の馬車が止まった。

 バンッと勢いよく扉が開かれ、一人の男の子が現れる。

「クーデノム様、マキセ様、お久し振りです。お迎えにあがりましたー」

 きちんと礼をして言ったのはルクウートでも会ったエイーナ=テニトラニス。

 この国の王子だ。

「エイーナ、先に行くなんてずるい!」

 声と共に扉を開けて現れたのは、案の定セーラだった。

 勢いよく飛び降りようとしたのだが、すぐ目前にクーデノム達がいるとは思わなかったらしく驚きで一瞬立ちすくみ、歩幅のリズムが狂う。

「きゃあ」

 馬車からの段に足を踏み外しまたもやコケそうになった所に、クーデノムはセーラを抱きとめた。

「相変わらずですね」

 クーデノムの胸にしがみつくセーラに向かい、笑いを抑えることなく言い放つ。

「ク、クーデノム様にしがみつくための計画よ」

「計画ですか?」

「そうよ」

 顔を赤くしながらも強気で言い放つセーラをそのまま抱え上げた。

「え、なにー?」

 バタバタと慌てるセーラを抱えたクーデノムは馬車の扉を開いて中へ入ると彼女を椅子に座らせた。

 さすが王宮の馬車。

 広く綺麗な内装に柔らかいクッションだ。

「今回は傷めなかったようですね」

 セーラにひざまづくようにして足を手に取るクーデノムに、セーラは声も出せず大きく肯く。

 彼女の素直な態度に笑った。

 その体勢のままクーデノムはセーラと視線を合わせる。

 出逢った時から変わらない蒼い瞳が真っすぐに自分を見つめる。

 それを確かめて、尋ねる。

「セーラ姫は、私を落とす自信はおありですか?」

「…ある!」

「では、落としてください」

 驚きと勢いのままはっきり口にする姫の手を取り、候に口づけした。



「何度も落とされてるのは姉上でしょうに」

 中から聞こえる二人の言葉に、気を利かせて馬車の外で待っていたエイーナが思わず呟く。

「ぷっ、確かにっ」

 その言葉に吹き出しながらポンと彼の頭に手を置いたマキセ。

「引きずり落とす手もあるよ」

「なるほど」

 おおーい、そろそろ入ってもいいかと中の2人に声をかけ、マキセとエイーナも馬車に乗りこみ、テニトラニスの王城へと向かった。


【完】



最終話ですが、後日談の短編が3話あります。

そちらもよろしくお願いします。

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