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オカ研の旗の下(もと)  作者: 淡太郎
51/56

赤い糸の伝説・第三幕・女子会は長く続く。

「何だかごめんね。仮想空間であってもどうも告白する勇気が持てなくて・・」

由香が申し訳なさそうに言ってきた。

「大丈夫やでぇ~。気にしてないわぁ~」

ヘルメットを付けた沙織が何処の方言かも分からない口調で言った。

「ところで夕方近くもなってきたら、めっぽう寒いわね」

そう言って翠が囲炉裏に火を灯して、綾乃も百本の蝋燭に火を付けた。

「ひぇぇぇー」

香町と南本が肩を並べて隅っちょに逃げだした。

「どうしたの先輩方々?」

翠が首を傾げ二人を見た。

「私達アレルギーで火が怖いのよ。やめてくれる」

香町と南本は寒い訳ではないが、ガタガタ震えながら寄り添っている。

「変なの?おかしな先輩達。こっちは隙間風だらけで寒いんだけど・・。しゃーないわ・・。カイロと毛布で身を包みましょう」

翠が使い捨てカイロを揉みながらそう言うと、四人は火を消し毛布で身を包み、こたつを用意して、その周りに食べ物を置いた。

「お気遣いどうもありがとう。ところで此処は電気は来ているの?」

南本がほっとして聞いてきた。

「心配ご無用!近くの滝からの水力発電で賄っているわ」

綾乃がそう言ってピースサインをした。


四時限目・恋はフィーリングで始まり、最後は空気の様な相手になる。


「沙織の憧れる好きな人って誰かしら?初顔合わせだわ」

翠が興味津々に見入っていた。

「それじゃ準備はいい!スイッチ入れるわよ!」

綾乃がヘルメットを被った沙織に聞いて電源を入れた。ゆっくりと辺り一面に広がったホログラムの映像に、他の三人も呑み込まれ沙織の仮想現実の世界に入り込んでいった。

「何よ此処!だいぶ前に行った山道じゃない!」

翠が覚えのある山道に驚いた。由香と綾乃もキョトンとしている。

「妙子危ないわよー!無理しないでー!」

遠くから沙織の大きく叫ぶ声が聞こえる。

「えっ!なに!何が起こってんのよ!」

翠が振り返り三人は沙織の声がする方へ走って行った。するとそこには、断崖絶壁をロープをつたって降りる園芸部部長の和中妙子の姿があった。

「この場面思い出した!不老不死の薬草を取りに植物に詳しい妙子と一緒に、危なくて足も踏み入れない谷へ来た時の映像よ!」

綾乃が思い出の引き出しを頭から引っ張り出した。

「今これって恋愛の授業でしょ?沙織はどんな人が好きか探り出すだけのほろ酔い色恋沙汰なのに、何故に危険映像になるのよぉー!」

翠が侘しく募っていると妙子の悲鳴が聞こえた。

「危ないっー!」

由香の気だるい声が裏返った。その時、妙子が足を踏み外し崖から宙ぶらりん状態で気を失っていた。

「妙子ー!大丈夫ー!」

泣きながら叫ぶ沙織の声が虚しく響く。

「何が何だか分からないけど、とにかく助けるのよ!」

翠が咄嗟に妙子のぶら下がったロープを力一杯引っ張り込んだ。その後を由香、綾乃が続いた。妙子の全体重が掛かったロープは重く、ゆっくりゆっくりと昇って行く。ようやく崖っぷちから上がってきた妙子の姿を拝んだ時には、三人とも汗だくだった。

「やったーっ!おめでとうー!」

沙織がそう言ってクラッカーの紐を引っぱった。もうそこには妙子の姿は無く、汗に濡れた三人の体にクラッカーのカラフルな色のリボンがこびり付いた。

「ドッキリですか・・?」

三人とも放心状態だ。

「やっぱり私たち四人は切っても切れない存在なのよ!」

沙織は真っすぐの気持ちで言った。

「それじゃ沙織の恋愛相手は私達なの?」

綾乃が不思議そうに聞いた。

「そうよ。だけど変な意味で捉えないでね。我が愛する友って感じだから。・・で、翠は何か期待していたわけ?」

沙織思いっきりの笑顔で言った。


五時限目・女は美貌、男は財力


「先生ーっ、それって女は愛嬌、男は度胸じゃないんですかーっ」

文学に精通している綾乃が聞いてきた。

「あなた!そんな戯言で食べていけますか?」

香町が険しい口調で言い返してきた。

「そうよねぇ、食べる事は大切だわ」

沙織がまんじゅうを口に放り込んで食べながら言った。

「興味本位で飛び付いても、狩りをしない雄なんかは言語道断!一生苦労するわ」

香町が輪を描いて言ってきた。

「それでは少しナルシスト気味な翠さんを使って見て行きましょう」

南本が言った先には既にヘルメットを被った翠の姿があった。


「また経費を無駄遣いして!沢山お金が溢れてくると思っているわけ!いつも生徒会室には、あなた達のくだらない領収書で一杯よ!」

翠の前には生徒会会長で天敵の西園寺公佳が立っており、いつもの様に言い争っている。

「あなたにとってはくだらない物に見えるでしょうが、私達にとっては必要な物なのよ!無駄には使っておりませーん!」

翠も意地を張って突っ返している。

「生徒会はあなた達の財布じゃないのよ!何でも限度ってものがあるの!湯水の様に経費が出てくるとは思わないで頂戴!」

西園寺も当たり前の事を言い返している。

「だってぇ~、いるんだもん仕方ないじゃない。なに不自由なくクラブ活動をしているかどうか見守るのも生徒会の役目でしょ」

翠も正論で返した。

「あなた達は口が酸っぱくなるほど何回も言う様に・・、同好会です!別の悪い意味で目を付けられて特別待遇なのよ!」

西園寺はこれまで何度も同じセリフを言っている。二人の言い争いは、まだまだ続くようだ。

「二人とも引き下がらないわねぇ」

由香が感心している。

「二人とも気を静めて!」

綾乃は気が気ではない。

「二人とも美貌には程遠く似ても似つかわしくないものですが、ほら・・、よく喧嘩するほど仲がいいと言うじゃない。あの二人も互いに引き寄せられて分かち合っているところがあるのでしょう・・」

南本がまとめて結論を出した。

「あたし達にはそうには見えないけど・・」

翠と西園寺の言い争いが終わること無く続くなか、ぼそぼそと言った沙織の言葉に一同納得した。


六時限目・恋愛は夢が生まれ、結婚は地獄が生まれる。


綾乃が最後にヘルメットを被り対象者になった。

「さぁ、授業も終盤戦よ。しかし恋愛のシミュレーションだというのに、結局ちゃんとした例題も上がっていないじゃない。みんな恋に対する胸のときめきはある?」

香町は段々やる気が失せてきた。

「先生ーっ!私達もがんばってまーす!しかしながらテーマに沿ってイメージしても、どうしてもこうなっちゃうんです」

沙織が手を上げて言った。そういうやり取りが続いている間、ホログラムには山積みになった本が足の踏み場も無いくらい広がった映像が映し出されていた。

「ちょっと綾乃!これ凄いわね!」

積み重ねられた本の山に由香の足元がふら付いた。そんななか、綾乃は嬉しそうに笑いながら本の山に埋もれ戯れている。よっぽどその辺の男子より本の方が好きなのであろう。

「今回も恋の話には辿り着かないみたいね・・」

南本も拍子抜けした。その間、本の中に埋もれた綾乃は顔がたるみ、にやにやし続けていた。

「私達には今のところ男子に縁がないのね」

翠が肘を付いてため息が出た。


「結局・・、何も教えられる事が出来なかったかもしれないけれど、これで恋の授業は終わりにします」

香町が長く続いた講義に終わりを告げた。

「えー!もう終わっちゃんうんですかー!」

四人がヘルメットを奪いながら一斉に声を上げた。癖になってしまって、まだ物足りないらしい。

「まぁ四人とも若いんだから、これからまだまだ結婚するまでに、たくさん遊んでおく事ね」

南本が四人に胸の内を伝えた。

「結婚なんて、その時の状況に合わせたタイミングと勢いよ。また子供が出来ちゃうと、育てるのに何かと子供寄りになって忙しくて大変なのよ」

香町がしみじみと語った。

「やっぱりお母さんはたくましくなくっちゃね。そういう私達には子供はいないけどね」

南本が先に言った香町の言葉を覆した。

「結婚には憧れているんですが、やっぱり結婚生活は地獄なんですかー」

また沙織が手を上げて聞いてきた。

「人によりけりね。だけどベストパートナーに出会えれば、終わりよければ全て良しよ!」

南本が首をひねって考え込みながら答えた。

「もうこれで私達の伝えたいことはこれ以上ないわ」

気が付くと香町の顔から三本の髭が生えている。

「あれっ?なにか変!?」

翠がキョトンとしている。

「百年以上も生きている私達みたいにならないようにね。人生楽しく生きるのよ」

南本も顔から髭が生えてきた。

「ひゃくねん生きている!?」

沙織もキョトンとしている。

「今日はありがとう。楽しかったわ。それじゃもう遅いから私たち帰るわね」

香町と南本が四人に手を振った。

「もう外は真っ暗よ!何も見えなくて危ないわよ!」

翠が出て行く二人を止めた。

「お気遣いなく。私達は目がいいからへっちゃらよ!」

香町と南本は笑って言って、飛び跳ねて出て行った。


夜も深まり四人は秘密基地でお泊り会をする事に決め込んだ。百本の蝋燭に火を点け、寝床を作り布団に潜って女子会の続きのお喋りを楽しんでいた。

「あの二人。自分達が狐と狸だって事、私達にばれていないとでも思っていたのかしら」

由香と綾乃がニヤニヤしながら言ってきた。

「えーっ!そうなのぉー!私には分からなかったわぁー!」

翠と沙織が驚愕した。

「考えてもみなさいよ。こんな寒い所で寝れるなんて正味の毛皮を着ている者でしか耐えれないわ」

由香が気付かなかった二人に言った。

「そうよねぇ。だって・・、授業中スカートの中から尻尾が見え隠れしていたもの」

綾乃も二人に言った。

「ところで何で中学生の姿で現れたのかしら?」

翠が勘のいい二人に聞いた。

「思うに・・人間の歳でいう私達の様な年頃が、二人にとって一番楽しかったんでしょうね」

由香が考察した。

「そう考えると・・、たぶん二人ともだいぶお婆ちゃんよ。長い間、生き続けて人間に化ける妖力も付いたのね」

綾乃が計算している。

「そう言えば百年は生きているって、ボヤいていたわ」

沙織は最後に二人が言っていた台詞を思い出した。

「二人とも他の仲間と一緒に普通に暮らして生涯を全うしていれば、今もそんなに長く生き続けたくはなかったでしょうに・・」

綾乃が哀れな二人を労った。

「だけど、そんなに執念深く恋愛に拘ったんだろうね・・」

沙織が二人が拘った理由が分からなかった。

「二人の仲が良すぎて、今まで雄に対してなかなか執着が無かったからじゃない・・」

綾乃も余り分かっていない。

「・・か?もしくはあの二人、若い頃はライバル意識をもっていがみ合って争っていたんじゃないかしら。だけどどこかで信頼関係が互いにあったって事が、二人の頭の片隅にいつも残っていたんだろうね」

由香も、もひとつ分かりづらいらしい。

「どっちにしろ互いに踊らされ合っていたんでしょう」

翠が難問を丸く収めた。

「正しく!男女関係と同じく、狐と狸の化かし合いね」

沙織がうまく表現した。

「そして長い間生き続けて、ようやく赤い糸の本当の意味に気が付いたのよ!」

綾乃が本題を切り出した。

「赤い糸って恋愛話に定番だけど、恋する事だけじゃなく人や動物もそう、心から好きになって皆が皆、自分が持っているその見えない赤い糸の伝説を信じて、固い絆で結び合えば、世界はいがみ合う事なく平和になっていくのよ」

綾乃が理想を語った。

「それはいつのことかしら・・?」

由香がまた何時しかのように、皮肉っぽく気だるく言った。

「ところで何で私達の基地にいたんだろう?」

沙織はどこかしら頭に引っ掛かっていた。

「春の陽気に誘われて隣町から、こっちに遊びに来たんじゃない?」

綾乃が素朴な疑問を簡単に答えた。

「だけど・・確かに回覧板は回って来たんだけどなぁ~?」

翠が学校での事を思い出し頭をひねって考え込んだ。

「そこに何が書いていたのよ」

沙織が肝心な事を聞いてきた。

「書いてある内容まで目を通して見てなかったから、覚えていないのよ」

翠が絶望的な事を言い出した。

「まぁ、どうだっていいじゃない。もう寝ましょう。おやすみーぃ」

沙織が真っ先に布団を被った。四人が寝静まるころ、外では満開の星空の下で狐と狸がじゃれ合っていた。


いま翠が言っていたその回覧板は、四人のアジト・・、部室の散らかった机の上に無造作に置き去りにされていた。そこにはたった一言。“次回最終回”と書かれてあった。誰もいない春休みの学校。それを目にする時は、そんなに遠い日ではないだろう。


※なお今回の講釈は、作者の個人的解釈であって参照引用した個所もあり、世間一般的に通用する恋愛ではございません。あしからず・・。


※今回のウィキペディアで検索してみよう!※


●百物語

●ホログラム

●アドレナリン

●不老不死

●ナルシスト

●第十弐話・赤い糸の伝説(全三幕)



●出演者


オカルト研究会メンバー

早乙女沙織、鷹塚翠、飾磨由香、栗須川綾乃


●ゲスト出演者


生徒会会長・西園寺公佳

園芸部部長・和中妙子

デジタル写真部部長・小佐井和哉

野良猫の輔清


香町美沙織

南本亜夜



※この物語はオカルト研究会の四人組のドタバタコメディのフィクションであり実在の個人名、団体名、建物名、本のタイトルなど一切関係はございません。

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