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オカ研の旗の下(もと)  作者: 淡太郎
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クラレスとアルキュラス・第五幕・明かされる真実

時は十数年前、まだ光明寺家、西園寺家の両家が仲の良かった時代。翠と綾乃の二人はまだ幼い光明寺先生と西園寺に出会っていた。

「二人ともかわいぃ~」

綾乃が抱っこしようとしたが今の体の無い姿では通り抜けてしまうため無理な話だった。

「光明寺先生の方が少しお姉さんなのよね」

翠が微笑ましくなった。幼き二人は年の功で言えば光明寺先生が小学生、西園寺はまだ幼稚園行くか行かないかといったところだ。他の大人達も和ましく何とも仲の良い雰囲気が両家全体を包み込んでいた。翠と綾乃はその幼き二人の足取りを追った。

「子供の頃は全然仲睦まじいじゃないの」

綾乃は優しい表情で笑っている幼き二人が愛おしい。

「憎たらしい西園寺とは大違いだわ」

翠も可愛い西園寺には勝てない。幼き二人はとても仲が良くいつも一緒だった。翠と綾乃は時間を巡って成長していく二人を見守りながら問題の真相に辿り着こうとしていた。

「ねぇ綾乃何とかしてよ」

「分かっているわよ翠」

翠と綾乃の姿は人には見えないのだが、鼻の利く犬には敏感に分かるらしい。

「さっきからワンワンとうるさいわね!」

通りすがりの大人達が口々に同じ事を言った。翠と綾乃の真後ろで可愛らしい小型犬が体に似合わぬ大きな口で吠え続けている。今は公園の砂場で仲良く遊ぶ幼き二人を観察中である。

「よしよしお静かに」

綾乃は犬の頭を撫でた。しかし・・、

「駄目だ通り抜けてしまうわ。体が無いって不便ねぇ」

綾乃の手は犬を擦り抜け地面まで行った。

「しかし時間を経過しても仲睦まじい同じ光景ね」

翠は退屈を覚え始めた。

「クラレスさんとアルキュラスさんは何時になったら現れるのかしら」

綾乃も疲れを覚え始めた。

「ちょっと待って、あれを見て!」

翠の言った方向に幼き二人の行動に変化があった。それは幼い光明寺先生が幼い西園寺に対し明らかに嫌がらせを行った瞬間だった。

「あっ!西園寺の作った砂山を光明寺先生が蹴り飛ばして崩した!」

綾乃も目撃した。

「よしっ!やったっー!」

翠は喜んだ。

「だけどあれって小さい頃によくある癇癪で遊び心の一環じゃない?」

綾乃は幼い二人を庇った。

「見てよ、あんなに連続で徹底的に砂山崩す?」

翠の言っている様に砂山は完全に粉砕されていた。やられた幼き西園寺は泣き出す事も無くまた砂山を作り出していた。そんな行動を見て腹立たしく思えたのか幼き光明寺先生は今度は幼き西園寺を突き飛ばした。

「よしっ!またやったっー!」

翠はまた喜んだ。

「やったーじゃないわよ。まだ子供なんだから。明らかにあれはいじめよ!」

綾乃は腹を立て幼き光明寺先生の前に行き説教したが悲し気な顔で肩を落とし帰って来た。

「体が無いって空しいわぁ」

「元気を出して。状況が急に展開していっているわ。もう少し二人を追跡しましょう」

翠は綾乃を慰め次の時間を辿っていった。時代は移り変わり光明寺先生は中学三年生、西園寺は小学一年生の桜の花びら舞い散る春の日になっていた。

「なんか段々と光明寺先生の西園寺に対する嫌がらせがエスカレートしていっているわね」

翠が言うように学校がある間は二人別々なのだが、終わると幼き光明寺先生の方から幼き西園寺と一緒になり遊び始める。初めは楽しそうだがそれがしばらくするといじめに変わる。しかし幼き西園寺は何も言わずそれに付き合っているようだ。

「しかし今の気が弱い光明寺先生からは想像もつかないわ」

綾乃は幼き光明寺先生を見て不信感を覚えた。

「今と昔じゃ立場が逆転してる訳ね」

翠も幼き光明寺先生の行動に驚いている。

「西園寺はなんで我慢して何時も一緒にいるんだろう」

綾乃は素朴な疑問に頭を悩ませた。

「そうよね、年もそこそこ離れているし同じお友達と遊べばいいと思うのに。それに嫌だったら離れればいいじゃん。なんで何も言わないんだろう?」

翠も幼き西園寺に同情してきた。

「気になるわ。二人の家の問題より先にこの二人の関係を探りましょう」

綾乃は幼い二人の行動を疎ましく思え翠と一緒に別の場面に移動した。そこでは幼き西園寺の部屋で遊ぶ二人の姿があった。

「今度はボードゲームで遊んでいるわ」

翠が眺めている二人の姿には愛くるしいものがあった。

「今は仲が良さそうね。二人とも笑ってるわ」

綾乃も内心ほっとしている。幼い二人は出されてあるおやつを頬張りながら遊びに夢中だ。

「あっ!西園寺が動いた」

綾乃はそういうと幼き西園寺の後ろに付いていき一緒に出て行った。残った翠は幼き光明寺先生を見ていた。すると幼き光明寺先生はゆっくり立ち上がり誰も来ないことを確認して机の引き出しを開けた。そこにはチョコレート菓子が入ってありそれをこっそり自分のポケットに忍ばせた。

「あっ!泥棒!案外この当時の光明寺先生は酷い奴だったのね」

翠はしっかりとその行動を見ていた。幼き光明寺先生は何事もなかったようにまた座り込みボードゲームの駒を動かした。そこへ幼き西園寺と綾乃が一緒に帰って来た。

「衝撃的シーンを見たわよ」

翠が戻った綾乃に言った。

「えっ?何?ところで私の方も意外な事実が分かったわよ」

綾乃も興味津々な話を持ってきた。

「そちらからどうぞ」

翠が綾乃の話にワクワクした。

「西園寺と一緒に出て行ったらトイレだったの。それで待っている間に家族の人の話を盗み聞きしてたの。・・で、なんでここまでしてもあの二人が一緒にいると思う?それは両家の亡くなったおばあちゃんの遺言なの。“いつまでも末永く一緒にいろ”って!」

綾乃は表情を変えながら続けた。

「“いつまでも末永く”って言葉、まるで結婚式ね」

翠が話の隙間に割り込んだ。

「そうなの許嫁として結婚する予定だったの。そうすれば両家のハイブリッドの完成よ。だけど蓋を開けりゃ二人とも女の子でしょ。親通しは仕方がないと思っているけど遺言書が今でも幅を利かせているのね。だから子供ながら気を遣って付き合っているんじゃない?しかしながら光明寺先生はもう我慢出来なくなってきている様子ね」

綾乃は二人を見て推測した。

「遺言書の呪いね。仲が悪くなったのもまさしくこれが原因じゃない。あっ分かった、あの二人の名前を改めてクラレスとアルキュラスにして・・、まぁオスカルとアンドレとか、ヘンデルとグレーテルとか・・」

翠のだした答が自分で恥ずかしく思えた。

「それは無いと思うわ。それにしてもその名前が引っかかるわ・・」

綾乃は冷静に受け答えした。その時話に夢中になっている翠と綾乃に後ろから大きな音が響いた。音の鳴った方を見てみると今まで何も言わず大人しかった幼き西園寺が幼き光明寺先生に向かってほたえだしている。一瞬の怒りが瞬発的な行動に駆り立てたのだろう。翠と綾乃は突然の出来事に慌てた。

「二人を止めないと!」

「今の私達じゃどうしようもないわ!」

翠と綾乃がドギマギしていると、そんな大きな音に気が付いたのか家族の者が二人を止めに入った。

「一体何が起こったの!」

翠と綾乃が驚きの顔を見せていると、幼き西園寺が家族の者に向かって「食べた、食べた」と言っていた。

「あれだわ、見てあれよ」

翠が床に落ちているチョコレート菓子の空き袋を指さした。

「まさか、あのお菓子は!販売廃止になった幻の・・」

綾乃は何か知っているようだ。その時、幼き西園寺の母親がそのお菓子の空き袋に気付き勢いよく幼き光明寺先生を引っ叩いた。幼き光明寺先生は泣き出して走って部屋から出て行った。

「またもや急展開よ!次の場面に行くわよ」

翠は綾乃の手を掴み時間を超えた。そこは現代になっておりよく見る気の強い西園寺と気の弱い光明寺先生が出来上がっていた。たぶんあの時の幼き光明寺先生のチョコレート菓子の盗み食いがきっかけで今ある立場となったのであろう。それを見た翠と綾乃は気が緩んだのか気を失い、気が付くとそこはいつもの見慣れたアジト・・、魔法陣の書かれた部室だった。

「ご機嫌よろしゅうか」

そしてお狐様が出迎えてくれた。


「あぁ~あ、よく寝たわぁ」

沙織が大きなあくびをした。

「もう放課後よ。ほんとこんなに寝るなんて思ってもなかったわ」

由香も背筋を伸ばしている。

丁度その時、壊れた洗濯機の様にガタガタ動いていた大型冷蔵庫並みのスーパーコンピューターが“チーンッ”と鐘を鳴らして印刷を始めた。

「電子レンジ?まぁいいわ、ようやく解析結果が出たみたいよ!」

沙織が喜んだ。

「なんて!なんて書いてある!」

由香も飛びついてきた。二人が目にした文面は驚愕な内容だった。

「えぇー!なんてことー!」

二人とも恐怖に慄いた。そこにはスーパーコンピューターが長い時間を掛け全力を尽くし解読された文面で一言!、“明けましておめでとうございます”と書かれてあった。

「まだ年も明けてないし、元旦でもないし」

由香が余計に気だるく言った。

「宇宙の果てではもうお正月じゃないの」

沙織は時差ボケを感じた。


「で、そっちはどうだったの」

四人はようやく集合してミーティングしている。話を切り出したのは翠の方だった。

「そんな大した事なかったわ。FAXで返事が返って来たのも暑中見舞いの内容だったのよ」

沙織はまだ眠たそうだ。

「年始の挨拶と暑中見舞いの挨拶って盆と正月が一緒に来たのね」

由香が気だるく何気に旨い事を言った。

「ところで肝心要なのはそっちの話でしょ」

沙織は翠と綾乃に向かって言った。二人は少し時間をおき穏やかに落ち着いた顔をして、そして口を合わせて静かにこう言った。

「そうねぇ私達には知らない方がいい過去の出来事もあるのよ」


オカルト研究会顧問、光明寺春江。二十四歳独身。登校拒否で極端のあがり症で、極度の人見知り。学校には滅多に来ないが通学の際は自転車登校。その自転車にはあの時のチョコレート菓子のおまけのカードが張られている。それは年を超え日差しと雨に当たり色褪せてしまっているがチョコレート菓子メーカー最期にして唯一一枚だけのマニアにとっては喉から手が出るほど欲しいプレミアカードである。そのチョコレート菓子を食べずに残しておいていた幼い頃の西園寺だったが、同じく幼い頃の光明寺のその些細な行動が発端となり両家の家族を巻き沿いに歪を生み今の仲の悪い状態に発展する。そのチョコレート菓子の商品名こそ“クラレスとアルキュラス”であった。二つの名前が商品名に刻まれている様に一つで二種類の味が楽しめるという当時画期的な大人も子供も飛びついた大ヒット商品だった。その後一切この二人の件に関しての内容はオカルト研究会ではお札を貼られ封印された。・・・おしまい。


※今回のウィキペディアで検索してみよう!※

●宇宙人

●ミステリーサークル

●幽体離脱

●第二話・クラレスとアルキュラス(全五幕)



●出演者


オカルト研究会メンバー

早乙女沙織、鷹塚翠、飾磨由香、栗須川綾乃


●ゲスト出演者


生徒会会長・西園寺公佳

オカルト研究会顧問・光明寺春江先生

新入部員・お狐様



※この物語はオカルト研究会の四人組のドタバタコメディのフィクションであり実在の個人名、団体名、建物名、本のタイトル、お菓子の商品名など一切関係はございません。

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