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#5 決着、そして

 マイコと黒竜が互いに相手を睨み合う。

 やがて黒竜が、背や翼の負傷を感じさせない確かな足取りで右脚を踏み出した。


 黄金の双眸そうぼうはマイコを見据えたまま、その巨躯を低く構え、さらに左脚を強く踏み出す。


 ――ズゥンンン


 腹に響くような重い震動が大地を震わせる。

 その光景に、マイコは嬉しそうに口角を上げていた。


「……そういうの、嫌いじゃないよ」


 マイコが足場固定スカーフォルディングの上で左足を一歩前に踏み出し、半身の構えを取る。

 顎を軽く引き、背筋を伸ばし、重心を僅かに前にかける。

 左手を前に掲げ、右手を引く。


 ――紅光集束コンバージング


 小さな呟きと同時に、軽く握りしめた右のこぶしに深紅の光が集束しだす。


 急速に集められた光が、まるで紅蓮の炎が立ち昇るかように揺らめく。

 その眩い程の光が、まるで周囲の明るさを一段落としたかように感じさせる。


 ――グゥウウウガァアアアアア!


 漆黒の竜が天に向かって今までで一番の咆哮を上げる。

 細長い瞳孔をいっぱいに開き、その額を相手にぶち当てようと突進する。


 ――はぁあああああ!


 それを大人しく迎え撃つなど考えるはずもなく、マイコは右腕を振り上げ、黒竜に向かって跳び上がる。


 巨体とは思えぬスピードに乗った黒竜の額と、渦巻くような深紅の光を纏いしマイコの右拳が激しくぶつかり合う。

 その衝撃波が大気を震わせ、大地を揺らし、周囲の岩さえも吹き飛ばした。


 だがそれでも、双方の視線は決して怯まず、激しく強い闘志を宿したまま、いつまでも相手にぶつけ合っていた。


 ◇


「……この子が、あの黒竜」

「ええ」


 アルの口から洩れた呟きに、マイコは目線を下に向けたまま静かにそう答えた。

 二人の視線の先には、気を失っている長い黒髪の少女がマイコの膝の上に頭を載せ、横たわっていた。


 見た目は十四、五歳といったところだろうか。

 もちろん見た目通りの年齢ではないのだろう。

 髪だけでなく、少女は全身黒い衣装に身を包まれている。


「……どうするんだい?」

「どうする、とは?」


 マイコは少女の艶やかな漆黒の髪を優しく撫でながら、アルの質問に質問で返していた。

 アルはちらっとマイコに視線を向け、言いたいことは分かっているだろうにと小さくため息を漏らしながら、それでも言葉を続けた。


「これから、というか、その子の事を、さ」

「それは……」


 この子が目覚めてから、そう言おうとしたとき、黒髪の少女が小さく身じろぎ、そしてゆっくりとその瞳を開けた。


「目覚めたようね」


 マイコは少女に優しく微笑みかけた。


「体の調子はどう? だいぶ治っているように見えるけど、痛い所とか無い?」


 見た限り、横たわっている少女に外傷はない。

 マイコやアルが手当てをしたわけでは無かった。

 最後の激突の後、意識を失った黒竜の身体は、マイコやアルの見ている前で急速に傷口を塞ぎ、自己治癒を行っていたのだ。意識が無いからこそ本能的に黒竜の身体は自己治癒を最優先に行なったのだろう、というのがアルの推測だった。


 そしてほとんど治癒が完了したところで黒竜の身体は徐々に小さくなり、やがて今の少女の恰好へと変貌していった。


 その様子には異世界から渡ってきたマイコはもちろん、この世界で生まれ育ったアルもまた驚きでもって凝視していた。竜は人化できる、とは聞いていたものの、アルも実際に見たのは今回が初めての事だったのだ。


 じぃっとマイコを見上げていた少女は、やがて体を起こし、ゆっくりと首を横に振った。


「問題無い」

「そう。良かった」


 マイコはその言葉にホッとした。

 ちらっとアルのほうを見ると、アルもマイコに視線を向けて頷いて返していた。

 マイコは再び少女のほうに向き直り、口を開いた。


「私はマイコ。こっちはアル。貴女のお名前は?」

「……ネロ」


 少女は少し躊躇ためらいがちに自分の名を口にし、再びじぃっとマイコを見つめる。


 マイコもまた、ネロを見つめていた。

 人化してもなお美しい宝石のような黄金の瞳に見入ってしまう。


 やがてマイコは一人頷くと、ネロに向かって口を開いた。


「早速だけどネロ。私と一緒に来ない?」

「……何処へ?」

「冒険へ、よ!」


 その言葉に驚いたのはネロだけではなかった。

 アルもまた眼を見開いて「マイコ?」と声を掛けてきたが、マイコは片手を上げてそれを制し、ネロに向かって言葉を続けた。


「貴女はずっとここを守っていたんでしょ? どれくらい守っていたの?」

「……たぶん、二千年くらい」

「二千年!? その間ずっとここに閉じこもっていたの!?」


 それが何? といった風に黙って頷くネロ。

 それに対し、マイコは勢いよく立ち上がりながら叫んでいた。


「もったいない!」


 その言葉にネロはさらに首を傾げていた。

 この人は一体何を言っているのだろう? と言いたげなネロを見て、マイコは更にヒートアップしたかのように声を大きくした。


「だってそうでしょ? 世界はこんなに広くて、綺麗な場所がいっぱいあって、優しい人たちもいっぱいいて、美味しい食べ物もいっぱいあって、素敵なことだって楽しいことだっていっぱいあって、見たいこと、聞きたいこと、知りたいこと、やりたいこと、たくさんたくさんあるのに! そんなに長い間閉じこもっているなんて、もったいないよ!」


 一気にまくし立て、肩で息するマイコに対し、ネロの感想は一言だった。


「……変な人」


 ネロの素直な呟きにアルは苦笑していたが、マイコは華麗にスルーし、右手をすぅっと伸ばして言葉を続けた。


「私が連れ出してあげる、ネロ。外の世界へ。だから、私と一緒に冒険しよう! 一緒に、この素敵な世界を見て回ろうよ!」


 ネロはマイコが伸ばす手を見ながらしばらく考え、やがて口を開いた。


「……それも、いいかもしれない」

「決まりね!」


 マイコはネロが伸ばした手を掴み、ぐいっと引き上げた。

 立ち上ったネロがマイコの顔を見上げながら口を開く。


「……一つ、頼みがある」

「頼み? 何でも言って。私にできることなら聞くよ!」

「いつか、また私と戦って欲しい。次は、必ず私が勝つ」

「……オッケー。その挑戦受けた。次も勝つのは私だけどね!」


 いつかマイコとネロの再戦が叶うのか?

 それはまた別のお話。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


短くとも激しく迫力ある胸熱(?)な戦闘描写が読みたい、カッコよく戦う女の子が書きたい、と思って創ってみた作品です。特にファンネルもどき vs ガン=カタもどき、一度書いてみたかったんですよぉ~(笑)


まだまだ稚拙で及ばない点も多々あるとは思いますが、個人的には割と楽しく書けましたので結構満足している……のですが、読者の皆さまにはいかがでしたでしょうか?


感想や評価は今後のモチベーションとなりますので、この下にある、読了後の感想や評価に御協力頂けるととってもとっても嬉しいのです。m(__)m


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