表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
七つの滞在 〜オタク男子の平穏な日常を破壊する、最強の美少女悪魔たち〜  作者: ほさ
ドッキドキのクリスマスライブ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/30

『ツンデレ悪魔とデート!?の巻』

僕の名前は神代拓巳。ごく普通の大学生だ。

――家に悪魔が5人もいる、ごく普通の大学生だ。4人でも毎日がキャパオーバー気味だったのに、千葉の地下ゲーセンの一件以来、さらに輪をかけて厄介なのが1人増えてしまった。……まあ、あの場で彼女の手を取って家に引き込んだのは、他ならぬ僕自身なんだけど。

ただ最近、居候の悪魔たちは自分たちで生活費を稼いでくるようになった。そのおかげか、家の中で理不尽に喚き散らされる回数も確実に減ってきているように思える。みんな、少しずつこの世界の生活に馴染んできているのだ。

「おはよ〜……」

まだ少し眠気の残る目をこすりながら、リビングに入っていく。

「……おはよう、拓巳……」

ソファの上で丸まっていたベルフェゴールが、気だるげに声を返す。

「おう! 遅いぞ拓巳! 俺はもうお腹ペコペコだぞ!」

すでにテーブルについてフォークを握りしめているベルゼブブが鼻を鳴らす。

「あれ? みんな早いですね。今日も朝から【仕事】ですか?」

僕が尋ねると、ベルフェゴールがボソボソと予定を口にした。

「……そう……。ベルゼブブは、いつものお店……。私は……」

「拓巳ぃぃぃぃぃぃ!!! おっはよーーーっっ❤︎」

ベルフェゴールが喋っている途中だった。横の廊下からもの凄い風圧と共に、フリルのついたエプロン姿のサタンが飛びついてきた。

「うわっ!? お、おはようございます、サタン……っ」

正面から抱きつかれ、豊かな柔らかい感触がダイレクトに伝わってくる。あまりの密着ぶりに、僕は一瞬で顔を真っ赤にした。

「今日も拓巳のために、溢れんばかりの愛情をこれでもかってくらい込めて朝ごはん作ったからね! 早く食べて私の愛を感じてっ!」

「わ、分かりました、分かりましたから……ちょっと離して!」

窒息しそうな勢いで抱きついてくるサタンの肩を、僕は必死に押し返す。

「ちょっと! 離れなさいよ、このアホサタン!!」

背後から、おたまを持ったままのエプロン姿のルシファーが般若の顔で現れた。

「あ、ルシファー、おはよう」

なんとかサタンを引き剥がしながら声をかけると、ルシファーは僕と視線が合った瞬間、ハッと我に返ったように頬を染めた。

「ええ……おはよう。もうすぐ朝食ができるから、大人しく座って待ってなさい」

どこか恥ずかしそうに、ツンとした態度でパタパタとキッチンへ戻っていく。

「サタンちゃん? 早く戻ってこないと、せっかくの卵焼きが焦げちゃうわよ〜」

奥からアスモデウスののんびりした声が聞こえてくる。

「わー! 大変! 今いくわアスモデウスの旦那ァ!」

サタンは慌ててキッチンへと走っていった。

「はあ……」

朝一番から全精力を使い果たし、僕はソファにドサッと腰掛けてため息をついた。

それを見ていたベルフェゴールが、そっと僕の隣に寄ってくる。

「……今日は、サタンも……連れていくから……。拓巳は、楽しんできて……」

「ありがとうございます。あれ? ということは、今日は3人で現場に行くんですか?」

「……いや。私とサタン、それとエヴァ……。アスモデウスは、お買い物に行くって……」

「で、俺はいつものカレー屋!!」

ベルゼブブが嬉しそうに拳を突き上げた。

そう、現在ベルゼブブ以外の4人の悪魔は、あのエヴァさんの紹介でエクソシストのアルバイト(?)をしている。前回の地下ゲーセンでのサタン戦の後、エヴァさんが「強力なフリーのエクソシスト達を発見した」と協会本部に紹介してくれたらしい。

ちなみにベルゼブブだけは「悪霊退治より美味い飯!」とか言い出して、大食いチャレンジ系のお店を回って賞金を稼いでいる。まあ、家計を助けてくれるならどんな形でもいいんだけど!

「そうですか。よかった……サタンが今日、ウチに居残りだったらなにを言い出すか分からなかったので助かります」

僕がホッとしていると、キッチンからサタンの抗議の声が飛んできた。

「ひどいっ拓巳! 私だって本当は仕事なんか行かずに、拓巳とデートに行きたかったわよー!」

「デートって……。ただのライブですよ」

僕は苦笑いしながら呟いた。

「……前からの、約束だから……ね……」

ベルフェゴールが、そっとルシファーのいるキッチンの方へ目を向ける。

そうなのだ。今日は、以前大学の友人である小田倉くんからもらった、アイドルグループ『くりいむsoだ』のプレミアムクリスマスライブ当日なのだ。僕はそこまでアイドルの知識があるわけではないけれど、ルシファーはずっとこの日をカレンダーに印をつけて楽しみにしていた。

「拓巳! ご飯食べたら、遅れないように早く準備するのよ!」

キッチンから、急かすようなルシファーの声が響く。

その弾んだ声に、思わずこちらの口元も緩んでしまう。

「分かりました、すぐ準備します!」

にぎやかな朝食の後、僕とルシファーが出かける時間がやってきた。

「うわぁぁぁん! 拓巳ぃ! 行かないでぇぇ!私も連れてってぇぇぇ!」と大泣きするサタンを、迎えに来たエヴァさんとベルフェゴールが両脇からガシッと抱え、引きずっていくのを見送る。

「じゃ、行きましょ!」

準備を終えたルシファーが、玄関で僕を振り返った。

「そうですね。アスモデウス、ベルゼブブのことをよろしくお願いしますね」

僕は見送りに来てくれたアスモデウスに頭を下げる。

「ええ、大丈夫よ〜。迷子にならないように、しっかりカレー屋さんの席まで連れていくから。2人でデート、思いっきり楽しんできてね?」

アスモデウスがウインクをする。

「だから! デートじゃないって言ってるでしょ、この色情魔!」

ルシファーが顔を真っ赤にして怒鳴る。

「ははは。そんなに必死に否定を……しなくても、なんだか僕がちょっと悲しいです……」

冗談めかしてショックを受けたフリをしながら、「いってきます!」と声をかけ、僕たちは家を出た。

今日のライブ会場は、秋葉原にあるいつもの劇場だ。だが、ライブの本番は夜から。そのため、日中はルシファーの行きたがっていた場所を色々と巡る、東京観光に付き合うことになっていた。

2人は最寄りの駅から電車に乗り込み、東京方面を目指して出発した。

ガタゴトと揺れる電車の中、僕は周囲の異様な空気に気づいて、ルシファーに小声で耳打ちした。

「……なんか、さっきから周りの男性陣の視線が凄いですね。みんなルシファーのこと見てますよ」

「ふん、当然よ。今日は気合いを入れてコーディネートしてきたんだから。いつもみたいにフードを深く被ってるわけじゃないもの」

ルシファーはフンスと胸を張る。確かに、今日は街中を歩くということもあり、僕が「ルシファーの好きな格好をしていいよ」と許可を出したのだった。

今日の彼女は、高級感のある黒いファーのついたシックなダウンジャケットを羽織り、下は……なんとも目のやり場に困る、大人っぽくてセクシーな柄のついたストッキングを履いていた。元のスタイルが抜群に良いものだから、破壊力が凄まじい。

(二次元のキャラクターがそのまま飛び出してきたレベルだな……なんて破壊力だ……。こうして私服で並ぶと、改めてルシファーの綺麗さが際立つな……)

不覚にもドキドキしながらジーッと見つめてしまっていると、視線に気づいたルシファーがジト目で睨みつけてきた。

「なによ? さっきからニヤニヤ見て。気持ち悪いわね」

「あ、いや、なんでもないです! ルシファーの今日の格好が最高に可愛くて、ストッキングの破壊力が抜群だなんて、これっぽっちも思ってないですよ?」

言葉のチョイスを間違えた。

いつもの横暴なルシファーなら、ここで「バカ言動を吐くな!」と顔面に強烈な拳を叩き込んでくるはずだ。僕は反射的にギュッと目を瞑り、衝撃に備えた。

「…………」

あれ? 痛撃が来ない。

不思議に思って恐る恐る目を開けると、すぐ横に座っているルシファーは、耳まで真っ赤に染め上げて、俯いたままじっと自分の膝を見つめていた。

「……え? どうしたんですか、ルシファー? 体調でも悪いんですか?」

覗き込むように顔を近づけると、彼女は弾かれたように顔を上げた。

「……な、なんでもないわよ! この大バカ拓巳っっ!!」

ボゴォッ!!!

「おぶっっ!!?」

油断した瞬間、ルシファーの羞恥心が乗った容赦ないストレートが僕の腹部にクリーンヒットした。僕の意識が飛びかける中、電車はガタゴトと音を立てて、大都会・東京へと近づいていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ