Number.25 レーザー・ソード
間一髪であった。
フィティを狙った黄色い閃光は、目の前に突き付けられた剣に当たってその軌道を変えた。
二つ、三つと、次々に襲い掛かってくるそれに目をいためながら、フィティを守り続ける。
ようやく光が消えた頃には、持っていた剣は傷だらけになっていた。
「フィティちゃん......大丈夫?」
「よく見たら、二人しかいないじゃないか。ミナトはどうした?置いてきたか?」
ハッとして声のした方に目を向けてみると、やはりというか......そこに立っていたのはハイフィス・フェイビデイだった。
「......まあ、関係無いか。なんにせよ、ケントゥリア・1の一員としての初陣には悪くない。」
「ケントゥリア・1......?お前、ついに"共食い"か......!」
「悪いかよ。」
ハイフィスは乱暴に返すと、手に持っていた剣の"柄"を、こちらに向けてきた。
「悲しいな。君たちはこの、"レーザー・ソード"に殺されるのだ。」
「ああ?レーザー・ソードだあ?舐められたもんだな。柄だけで俺らが斬れるもんかよ」
そう言いながら、腰の剣を素早く抜いた。
「斬れるんだよ......これがな!」
ギリギリまで。ギリギリまで柄の"まま"だ。
この剣の中身を知ったら、あの二人はさぞ驚くことだろう。
だから、間合いに入るまで、隠しておこう。
風を切る音を聞きながら、シスクトとの距離を着実に狭める。
あと二歩......一歩......。「今!!」
自分の剣が一瞬にして使い物にならなくなった事実を、簡単に信じることは出来なかった。
何度見ても剣は中腹辺りから先が無くなっていたが、それでもあの一瞬は、いまだ夢のように現実味のないものだった。
「どうかな?本当に斬れただろう?」その声が耳に入り込んだことで、ようやく我に返った。
間髪入れずに声の方向を見てみると、ハイフィスが黄色に光る剣を見せつけていた。
「終わりだな。君の剣は使えなくなってしまったが......容赦はしないぞ!」
「フィティちゃん!!君だけでも逃げてくれ!」
レーザー・ソードが襲い掛かる。回避する間もなく、それは思惑通りこちらの胴にジリジリと熱を感じさせながら突き刺さった。
「シスクト!!」
「あっ......」彼の凄惨な姿は、二人の屈強な男によって遮られた。
ハイフィスの仲間......彼らも同じようにレーザー・ソードを手に持っている。
彼らは、もう私を捕まえようとはしていない。本気で殺す気だ。
それは彼らの目と、その動きを見れば明らかだった。
誰も助けてはくれない。シスクトも、ミナトも。
光を灯すレーザー・ソードは天高く持ち上げられ、そして容赦なく振り下ろされる。
「うっ......!!」
何か、特別何かを考えていたわけではなかった。ただ、その恐怖から、とっさに手をかざしただけだった。
地面に倒れこんだ杖が赤く光っていたことも、その時は気が付かなかった。
レーザー・ソードは、当たらなかった。それが完全に振り下ろされるその前に、二人の身体は赤く燃え上がった。
屈強な男二人が、その熱さに耐え切れず身を捩っているのを、私はただ茫然と眺めていた。
今のは......攻撃魔法......"ファイヤー"......それを......。
「私が......やったの?」やっとの思いで出てきた言葉は、自分でも呆れてしまうほど間の抜けたものだった。
レーザー・ソード
魔王によって世界が滅ぼされるより昔、人間によって作られた武器。
身体に流れる魔力を、刀身として外部に放出する。その魔力がごくわずかであっても、十分な刀身を生成可能。
魔王がその技術を魔族側に持ち込み、複製された。




