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たとえ貴方が地に落ちようと【簡易版】  作者: 長岡更紗


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第97話 嫌ですーーーーーーッ!!

 村長のシャワンと皆に相談して、村おこしをすることに決まった。

 去年サビーナ達が植えた昼咲き月見草が五月頃に咲く予定なので、手始めに『月見草祭り』と称して大々的に宣伝していくことになった。

 その会議中に、セヴェリが提案をする。


挿絵(By みてみん)「月見草の中でキスをするというイベントをしましょうか」

挿絵(By みてみん)「なんだぁ、そりゃ! いきなりキスしろって言われて、する奴なんかいねぇだろ?」

挿絵(By みてみん)「そこを恋愛スポットにするんですよ。過去にそこでキスをした者達が結婚して幸せになったという噂を流すんです。そうすれば、それにあやかりたい男女は、祭りが終わった後も訪れてくれますよ」

挿絵(By みてみん)「成程なぁ……でも、それって嘘なわけだろ? 何か良心が痛むな」

挿絵(By みてみん)「あながち嘘というわけではありませんよ。この場所ではありませんが、私達夫婦は月見草の中で初めてキスをして、結婚まで至りましたから」

挿絵(By みてみん)「ちょ、セヴェ……ッ」

挿絵(By みてみん)「サビーナ?」

挿絵(By みてみん)「うう、恥ずかしい……どうして言っちゃうんですか……」

挿絵(By みてみん)「すみません、皆に分かって貰うためには言うしかないかと」

挿絵(By みてみん)「ううーっ」

挿絵(By みてみん)「ともかく、『クスタビ村の月見草の中でキスをしたカップルは、永遠に結ばれる』という事を強調して、売りにしていきます。しかし、いきなり『ここでキスをしていい』と言われても、中々出来ないのが実情だと思いますので、サクラを紛れ込ませたいと思います」

挿絵(By みてみん)「サクラ?」

挿絵(By みてみん)「ええ。最初に何組かキスをしてしまえば、後の人達もしやすくなるでしょう。ジェレイとラーシェにはその役を頼みたいのですが、よろしいですか?」

挿絵(By みてみん)「おお、いいぜ!」

挿絵(By みてみん)「仕方ないわね、良いわよ」

挿絵(By みてみん)「サビーナ、もう一組は私達が」

挿絵(By みてみん)「嫌ですーーーーーーッ!!」

挿絵(By みてみん)「お願いします。若いカップルは少ないですし」

挿絵(By みてみん)「嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です嫌ですっ」

挿絵(By みてみん)「いつもしている事ではないですか」

挿絵(By みてみん)「人前ではしてないじゃないですかっ!!」

挿絵(By みてみん)「結婚式の時にしてただろうが! それと同じだろ?」

挿絵(By みてみん)「あううう……それは……」

挿絵(By みてみん)「夕暮れ時の麦畑で、人目も憚らず抱き合ってたのを見た事があるわよ、私……うふふ」

挿絵(By みてみん)「あ、あの時は……っ」

挿絵(By みてみん)「まぁ他にやれる奴はいねぇんだ。決まりだな!」

挿絵(By みてみん)「お願いします、サビーナ」

挿絵(By みてみん)「うう……分かりましたっ! しますっ! すればいいんですねっ」


 半ばヤケクソ気味にそう言うと、セヴェリは意地悪く笑っている。人をからかう時のそれだ。


 かくして月見草祭りは開催された。

 果実狩りや農業体験、村人が用意した屋台も大盛況である。

 そんな中、サビーナたちの出番が近づいてきてしまった。

 村長のシャワンが台に昇り、声を張り上げている。


挿絵(By みてみん)「れでぃすあーんどじぇんとるめん!! こちらに注目してくだされ〜〜!!これから本日のメインイベント、『永遠の幸せを得るキス』を始めるぞい! このクスタビ村の月見草の中でキスをしたカップルは、永遠に結ばれるという言い伝えがあるのじゃ! 幸せになりたい恋人達! 一生添い遂げたい夫婦! さあ! その中央で、く・ち・づ・け・を!! するのじゃあああ!!」


 シャワンはノリノリであった。

 まずはジェレイとラーシェが先に行き、月見草畑の中でキスした。

 恥ずかしすぎて足が動かなくなったサビーナをセヴェリは軽々と抱き上げ、月見草畑の中央に連れられてしまう。


挿絵(By みてみん)「サビーナ。昼咲き月見草の花言葉を知っていますか?」

挿絵(By みてみん)「え……? 『無言の恋』ではないんですか?」

挿絵(By みてみん)「昼咲きは、『無言の愛』というのが花言葉だそうですよ」


 そう言うと、セヴェリはサビーナの額にこつんと己の額を当てていた。


挿絵(By みてみん)「あの時の私は、きっとあなたに恋していたのですね。でも、今は……」


 セヴェリはそれ以上は何も言わず、ついばむような口付けをサビーナに施してくれた。


挿絵(By みてみん)「セヴェリ……」

挿絵(By みてみん)「物足りませんか? 続きは帰った後でしてあげますよ」


 そう言われては、顔どころか耳まで異様に熱くなって顔を伏せた。観客の視線もそうだが、セヴェリからの視線が恥ずかしくて顔を上げられない。

 セヴェリは幼いキスで腰砕けとなってしまったサビーナを再び抱き上げて、花畑の通路から戻って行く。

 途中、「初々しい」だの「可愛らしい」だの聞こえて来て、余計に顔が熱くなったのだった。

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