第97話 嫌ですーーーーーーッ!!
村長のシャワンと皆に相談して、村おこしをすることに決まった。
去年サビーナ達が植えた昼咲き月見草が五月頃に咲く予定なので、手始めに『月見草祭り』と称して大々的に宣伝していくことになった。
その会議中に、セヴェリが提案をする。
「なんだぁ、そりゃ! いきなりキスしろって言われて、する奴なんかいねぇだろ?」
「そこを恋愛スポットにするんですよ。過去にそこでキスをした者達が結婚して幸せになったという噂を流すんです。そうすれば、それにあやかりたい男女は、祭りが終わった後も訪れてくれますよ」
「成程なぁ……でも、それって嘘なわけだろ? 何か良心が痛むな」
「あながち嘘というわけではありませんよ。この場所ではありませんが、私達夫婦は月見草の中で初めてキスをして、結婚まで至りましたから」
「ともかく、『クスタビ村の月見草の中でキスをしたカップルは、永遠に結ばれる』という事を強調して、売りにしていきます。しかし、いきなり『ここでキスをしていい』と言われても、中々出来ないのが実情だと思いますので、サクラを紛れ込ませたいと思います」
「ええ。最初に何組かキスをしてしまえば、後の人達もしやすくなるでしょう。ジェレイとラーシェにはその役を頼みたいのですが、よろしいですか?」
「夕暮れ時の麦畑で、人目も憚らず抱き合ってたのを見た事があるわよ、私……うふふ」
「うう……分かりましたっ! しますっ! すればいいんですねっ」
半ばヤケクソ気味にそう言うと、セヴェリは意地悪く笑っている。人をからかう時のそれだ。
かくして月見草祭りは開催された。
果実狩りや農業体験、村人が用意した屋台も大盛況である。
そんな中、サビーナたちの出番が近づいてきてしまった。
村長のシャワンが台に昇り、声を張り上げている。
「れでぃすあーんどじぇんとるめん!! こちらに注目してくだされ〜〜!!これから本日のメインイベント、『永遠の幸せを得るキス』を始めるぞい! このクスタビ村の月見草の中でキスをしたカップルは、永遠に結ばれるという言い伝えがあるのじゃ! 幸せになりたい恋人達! 一生添い遂げたい夫婦! さあ! その中央で、く・ち・づ・け・を!! するのじゃあああ!!」
シャワンはノリノリであった。
まずはジェレイとラーシェが先に行き、月見草畑の中でキスした。
恥ずかしすぎて足が動かなくなったサビーナをセヴェリは軽々と抱き上げ、月見草畑の中央に連れられてしまう。
そう言うと、セヴェリはサビーナの額にこつんと己の額を当てていた。
「あの時の私は、きっとあなたに恋していたのですね。でも、今は……」
セヴェリはそれ以上は何も言わず、ついばむような口付けをサビーナに施してくれた。
そう言われては、顔どころか耳まで異様に熱くなって顔を伏せた。観客の視線もそうだが、セヴェリからの視線が恥ずかしくて顔を上げられない。
セヴェリは幼いキスで腰砕けとなってしまったサビーナを再び抱き上げて、花畑の通路から戻って行く。
途中、「初々しい」だの「可愛らしい」だの聞こえて来て、余計に顔が熱くなったのだった。




